10. 仔猫は、王宮へ!
子守のエドさん、ご苦労さまですー。
さぁ。王宮へ入ろうと、大きな壁と、警備の兵士さんたちがいる王宮警備隊の詰所まで来ました。
検問のところでは、再び、エドさん懐に「入ってな」と言われておとなしくしていました。
ここさえ過ぎれば、また同じようにしていられるんだものね!
すると。
「じゃあ、ベルはここで待っていてくれな」
『ああ、その方がいいな』
と、エドさんと、ベルさんは、これが決まっていた事のように冷静です。
えー!なんでっ!?って、思うのはサラだけですか?
「王宮の敷地内に、ベルが入るには、イロイロと手続きがあるんだよ。
もし、入れたとしても、ベルには、引き綱を付けてもらわないとならないし、
面倒なんだよ、ベルにとっても」
王族の人の中には、エラソーにしてベルさんを自分のものにしようとする人もいるので、
隠れておいた方がいいんですって、貴族の人も王族の人も、我が儘!
そして、ベルさんは、西地区所属の警備犬なんですって。だから王宮に入るには申請が必要で、
更に、引き綱をしていないと、規則違反で捕まってしまうそうです。
でも、ベルさんみたいに、理性的な犬さんに引き綱は似合わない。
とはいえ、大型犬を王宮内で放し飼いにしたとなれば、それはそれで警備上の問題が。
…つまり、諸々の大人の事情から、ベルさん、隠れていましょう!となったんです。
オトナってっ!!
『後でちゃんと合流するから、エドの言う事を聞いて、いい子でな』
と、詰所に残るベルさんに言われましたが、サラはいい子ですよーだ。
エドさんに抱っこされた状態で、王宮の中でも人気の少ないところを通っています。
へえ、離宮の方って、本当に人がいないんだー。
となれば・・・・・・
『ねー、エドさーん』
「んー?」
『サラ、歩きたいっ!』
「だめー」
『サラ、歩けるもん! 歩くよう!』
「ダメだって、変な奴らに目を付けられたら困るだろ?」
『平気だもん! 人気のあるエルさんいないしー』
「だから、サラちゃんも目立つんだから、ダメってー」
『もぉっ!』
何でわかってくれないのっ! モヤモヤして、服の中でじたばたする。慌てたエドさんの隙を縫って無理やり王宮の庭に降り立った。
「こら、サラちゃん、戻って来なっ」
やー、ですもん! 聞こえないフリをして、どんどん歩いていく。
「サラちゃん!」
やだもん、サラは歩くんですよっ!
後ろから追いかけてきてくれる気配を感じて、ますますムキになる。
目の前の植え込みに飛び込み、小さい体を利用してすり抜けていく。
ほら、自分で歩いた方が、こんなに早いじゃないっ!っと、
自信満々になっているので、実はエドさんがわざと人の少ないところ、目立たないところを選んで歩いてくれていたなんて、この時はまるで気が付きませんでした。
そのうち、出たのは迷路のような生垣。
中庭自体の生垣を迷路のように作り、幾何学模様に見せているらしいんですが、仔猫サイズのサラには巨大迷路です。誰ー、こんなの作ったの!!
ぐるぐるぐるぐるぐる・・・
一体、サラは今、どこに居るんでしょう?
もしかして、迷子が好きなのか、サラちゃん!
エルさんと離れて、ちょっと拗ねてます。そんなことしていると、怖い人がくるよ!