1.仔猫は、待っていられない
短編にしようかと悩みましたが、とりあえずヨロヨロ運転ではじめてみます。よろしくお願いします!!
私のお姉さまは、
氷を日に翳した時の綺羅をそのままにしたような銀の髪と、宝石のような紫の瞳を持つ、それはそれは、きれいな人なのです。
私のお兄様は、
春の日を溶かしたようなやわらかい金色の髪に、若葉のような優しい緑色の瞳を持つイケメンなのです。
イケメン、っていうとお兄様が嫌がるのだけど、多分、ほめ言葉なんだと思うの。
そして、三番目の私、サラは、
うすぼんやりとした茶色とも金ともつかない髪に、いまひとつ はっきりしない金茶色の目を持つ、
できそこない娘なんです。
春になって学校が始まり、お姉さまもお兄様もなかなかおうちに帰って来れません。
大好きなアレクお姉さまは、すごく優秀で「生徒会長」というものになられたそうです。 (執事さんが教えてくれました)
さすがは、お姉さまですねっ!
でも、生徒会のお仕事がすごく忙しいそうで、なかなかおうちに帰ってきてくれません。
今年の春からは、カールお兄様も学院に通っています。まだ10歳なのですがカールお兄様は、天才だから特例で、飛び級するんだそうです。よくわかりませんが、これもすごいことだそうです。
おうちの執事さんもメイドさんたちも喜んでいたので、いいことだと思います。
でも、でも、私はあんまりうれしくありません。だって、大好きなアレクお姉さまにもカールお兄様にもなかなか会えないんだもの。
これって、わがままかなぁ、と思って我慢しているのですが、もう一週間もお二人のお顔を見ていません。
こんなことは初めてなんです。お母様は私が1歳の時に亡くなって、お父様は「研究」でいつもお出かけですが、お姉さまとお兄様だけはいつも一緒にいてくれたのに。
アレクお姉さま、カールお兄様、早く帰ってきてくれないかなぁ。
表に面した窓に頬杖をついて、馬車が来ないかと、ずっと待ってしまいます。
「…無能。 さっさと去れ」
私の目の前でぷるぷると震えていた男子生徒は、私の言葉を聞くと同時に駆け去った。言葉を聞き取れるなら最低限の仕事位してくれ。時間の無駄だ。
「・・・姉上、これ以上 人を減らさないで下さい。それなりに使い様はあるんですからね。」
ため息をつきながら、私の投げ捨てた書類を拾い上げる我が弟カールは、なかなかにいい性格だと思う。この春に入学したばかりだが、使える奴は全て使う。
でないと、この鈍重な生徒会の仕事が終わらん。
今まで生徒会にいたメンバーが卒業し、新たなメンバーに代わる。 慣れた人は減るのに新学期のことで仕事の量はうなぎのぼりだ。 社会に出た時のシュミレーションだとほざくが、大人が楽したいだけ、ではないのか?と私は疑っている。
「…ミルクティが足りない。」
思わずつぶやきが漏れる。
「はいはい、 淹れましょうか? それとも我が家の?」
・・・本当に性格のいい弟だ。
わかっている癖に追い討ちをかけてくる。多分、自分も学校に留め置かれるのが不満なのだろう。将来の事を考え、さっさと学校を終わらせようとしていたのを、無理やり生徒会に引っ張り込み、コキ使っているのだから。
可哀相か、と思う反面、弟だけ早くに帰って妹に構うだなんて、許せない!
やはり、当分、コキ使おう。 弟とは、姉のパシリであるべきだ。
「・・・姉上、なんか、ろくでも無い事を考えていたでしょう?」
と聞かれたので、とぼけておいた。 察しのいい弟で嬉しいぞ、姉は。
我が家は三人兄弟だ。長女の私アレクサンドラから5歳離れて弟、カール。更に5歳離れて、妹のサラディナとなる。長女の私も、弟のカールも褒められた性格ではないが、どういう訳だか妹のサラは天使のように可愛い。生まれた時からの私の許嫁、ウォルフに言わせると、「シェンブルク家の奇跡」なんだそうだ。
褒められると同時に貶された気がしたので、軽く蹴り飛ばしておいた。
妹のサラは、5歳。 可愛い盛りだ。姿を見つけると走り寄ってくる姿に、姉や兄を好いてくれているのがよくわかる。
「お姉さま、大好き!」と言って抱きついてくると、ウチの妹は、マジ天使!と叫びたくなる。
(妹バカ上等だ!)
姉の私と違って、温かみのあるミルクティ色のふわふわした髪は、なでるととても気持ちいい。仔猫のような琥珀色の目は、とても表情豊かだ。柔らかいサラを抱っこしているだけで、癒される気がする。たまに弟と取り合いになるが、負ける気はない!
ただ、サラは可愛いすぎて、外に出せない。先日の姉、兄、義理兄による保護者会議の際も、「不逞の輩に絡まれる可能性が高い為、サラの単独外出は、絶対禁止!」と決めたばかりだ。
過保護だと? そんなことは、サラと外出したとき毎回複数のロリコンに絡まれたり、拐われそうになっている事実を考えてから言って欲しい。まあ、全部撃退したがな。
そんな事を考えていたら、どんどん妹に会いたくなってきた! さっさと仕事を仕上げて伯爵家へ帰り、妹を堪能するのだ!
さっき、執事さんが来て、
「多分今日も、アレク姉さまとカールお兄さまは、お戻りになれないとのことです。」
と残念そうに教えてくれました。
ちょっと泣きそうになったけれど、一生懸命「お仕事がんばってくださいって、言ってね」と言いました。
うん、本当は、さみしいんです。 すっごく、かなしいんです。
お気に入りのソファーのクッションに埋もれても、気分が落ち込みそうになります。
・・・そうです、お姉さま達が帰って来れないなら、私から会いに行ったらいいんですよね。
いえ、こっそり行って、物陰から、そおっと見るの!それで、帰って来たら、あの時観ていたんですよって驚かせるの!!
内緒で、お姉さまや、お兄さまを見に行くのは、すごく素敵な思いつきです!
ああ、なんだかワクワクします!
そして、内緒でお出かけする方法を、思いつきました!
待っていてくださいね、お姉さま、お兄さまっ!!
本日、二話投稿できるといいんですが。。。がんばります!