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さいていな ふたり

「よっしゃあああ! 完成じゃ! 見ろ、正也。これぞ究極の護身用下着じゃ!」


 正也の目の前にフリルレースの可憐なブラとショーツ。いかにも少女向けだ。


「おおっ! 見た目まったくの下着だ。これ、ホントにあのジャージと同じ効果があるのか?」


「ふっふっふ。それだけではない。美奈穂の体力に合わせて負荷が改善してあるだけではなく、着用者の体重に合わせて動きの俊敏さを高めるように出来とる。美奈穂ならハイスピードで動けるはずじゃ」


「おおっ! 源じいが初めて使用者考えて物を作った!」


「美奈穂への愛じゃよ。愛。わしも人生七十年。発明生活五十年以上じゃ。そろそろ成長せんとな」


 絶対時間がかかり過ぎである。しかも孫に変態目線。


「では、早速それを試着してみろ!」


「ええ? 俺、それで呼ばれたんですか? しかも変態っぽい実験だし」


「当たり前じゃろう? いきなり美奈穂に着せるわけにはいかん。美奈穂が怪我でもしたらどーする」


「そんなに危険なんですか? 嫌です、断固拒否」


「わしは美奈穂の下着サイズやデザインを研究するために、美奈穂のタンスから下着を一組失敬した。わしの手元には美奈穂の下着がある」


「あんた、サイテーな祖父だな」


「孫の身を案じてのことじゃわい。試着してくれればその下着は特別にお前にやるぞ。美奈穂の使用済みじゃ。わしにとっても手放すには惜しい品なんじゃぞ」


「数々の変態発言だが、気持ちは分かります。協力しましょう」


 するんかい! 


 変態的欲望のために片思いの相手を売る、こいつも性根は腐っている。


 正也は伸縮する下着とはいえ、華奢な美奈穂のサイズの下着を窮屈な思いをして身につける。見た目は完ぺきな変態男子だ。だが、


「おお! 身体が軽い! 無重力体験って、こんな気分か?」


「ちょっと、身体を動かして見ろ」


「腕も脚も、すんげー速さで動かせる。これ、気分いいなあ。源じいの発明の中で、一番だ」


「ふーむ。重力や力のコントロールもまずまずだな。これなら安心じゃ。気に入ったならお前にも男用に作ってやろうか? スポーツなら下手なドーピングよりいいぞ」


「問題発言、いい加減にして下さい。やめときます。源じい、俺のだと手を抜きそうだから」


「いやいや、真面目に作るぞ。それでわしの先々の介護の面倒を見てくれれば」


「なおさら断ります。それだけは御免です」


 さすがに正也も将来の身の自由だけは確保したいようだ。このじーさん、長生きしそうだし。


「では、この下着を美奈穂にプレゼントせねばのう」


 性根の腐った二人は悪知恵をひねりだした。





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