Warm lunchーホカホカ弁当ー
好きな人に渡したくて作ったお弁当。
それなのに――
いつも、いつも……渡せません。
ハンカチの中にだけ、想いが詰まっていきます。
「はぁ……」
「溜め息なんてつかないで」
「え?」
風呂敷を開けると彼がいた。
片思い中の彼……
私は戸惑いを隠せない。
「君が読んだ」
「私が?」
「お弁当(僕)に“想い”をたくさん詰め込んでくれたんだね」
「あ……」
上手くひっくり返せなかった、たまご焼きもも……
半生だったり、真っ黒だった唐揚げも……
お米のとぎ方だって知らなかった……
味加減だって……
どんな風に詰めよう……悩んだりもした。
好きな人だから――……
「僕の返事は――」
無かった。
そうだよね……
一方的な想い、彼にお弁当なんか必要無かったんだ。
「おはよう」
「……」
顔を合わせるのが気まずい……
「今日、お弁当は?」
「え?……無いです」
「良かった」
胸がチクンって痛くなる。
「今日はお弁当(返事)を持ってきたんだ」
その痛みは直ぐに愛に変わった――
END.