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やきにく食べたい

作者: 戯言士
掲載日:2026/07/05

 夏は来たりて日は灼熱。日中の気温は30℃を超える真夏日なり。

 こんな日にはやはり冷麺……と言いたいところだが、それは今後更なる暑さとなったときへと回すとして、辛うじて余力のある今はそれに備えて体力を養うべきであろう。というわけて今日は奮発して焼き肉だ。


 量販スーパーで特売の牛肉と焼き肉のタレ、そしてビールを購入。序でに買った棒アイスを咥えながら炎天下の中自宅へ。

 あ、あまりもの暑さに空から蝉が落ちてきた。どんだけだよ、ホント。



 自宅に到着。

 早速カセットコンロとボンベを押し入れから引っ張り出す。鉄板はフライパンでいいだろう。

 ……って、ヤバ、野菜を忘れた。


 ひとまずビールを冷蔵庫へ。

 そしてその流れで野菜室を探る。取り敢えずはこの前のカレーで余った玉ねぎとニンジン、あとは茄子ってところでよしとするか。


 野菜を適度な大きさに切り分ける。玉ねぎのばらけるのが困りもの。つま楊枝でも刺すかね。


 さあてそれではいよいよ。

 コンロにボンベをセット。

 フライパンに油をひき、点火。


 なんか肉野菜炒めっぽい感じがするけど気にしたら負け、こういうのは気分だ気分。

 皿にタレを用意しておけばその辺も気にならなくなる?

 おっと、ビールも出さなくちゃな。


 油がフライパンに馴染んできたところで肉の投入。そして野菜も。


 ジュー! ジュー! ジュー!


 肉の焼ける音が響く。


 うあっちっち!

 油が跳ねた。

 ちょっとばかりひき過ぎたかも……。


 けほっ、けほっ。

 すげえ煙。

 とはいえこれも焼き肉の醍醐味。食欲が(そそ)るというもの。


 ピーッ! ピーッ! ピーッ!


 電子音が鳴り響く。

 火災報知器が煙に反応したらしい。

 取り敢えず窓を開けて換気だ。


 ふ~、やれやれ。

 それにしてもこんなことで反応するとは。火災報知器も良し悪しだな。


 ……って、そろそろ肉も焼けてきたかな?

 安物の特売の肉だし、そんなに厚さがあるわけじゃないし火の通るのも早いもんなぁ……。


 はは、揚がってるよ、ホント。

 まあ、それも最初のうちだ。そのうち気化して油加減もいい具合になってくれるだろうしな。


 ややカリカリ状態の肉をタレに浸けて口へと運ぶ。


 う~ん、絶品!

 ほどほどに冷えた缶ビールを追っかけで一口。


 う~ん、旨い!


 どちらも安物のそれだが、口の肥えることのない庶民からすれば最高の贅沢といえるもの。至福を感じる瞬間だ。


『やきにく~』

『やきにくおいしそう~』


 いや、本当な。これがなんとも旨いんだ。


 ……って


「うあっ⁈」


 な、なにぃ⁈

 跳ねた油のせいなのか、傍に放置していたビニール袋が突如引火。慌てて叩いて消火する。


 ふぅ~、なんなんだよ全く。


 って、なにぃっ⁈

 な、な、な、なんだよこりゃ。

 なんか油が次々に跳ねて辺り一面が……。


 くっ、ヤバい。

 早く流しの消火器で──。


 ……って、無理、無理、無理!

 こんだけ火が早くっちゃ間に合わねぇ!


「か、火事だーーっ!」


 叫び飛び出す一階の窓。

 背後には紅蓮に包まれた我が家。


『やきにく~』

『やきにく、うまぁ~』


 気のせいか、炎の中に焼き肉を貪る黒い影が。そして幻聴。

 焼き肉への未練のせいだろうか。


 崩れゆく我が家。

 はは……。惨事だというのに俺っていったいなんなんだろうな……。 

 これ、ジャンルはホラーでいいんでしょうか……?

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― 新着の感想 ―
自ら調理した焼肉をお供にビールを頂く楽しい前半部から一転して、えらい事になっちゃいましたね。 炎の中に蠢く声の主は果たして何者なのか… せめてもの救いは命だけは助かったという事でしょうね。 もっとも家…
ありゃりゃ。 どっかから変なモノを連れてきてしまったのかなあ? 油の入れすぎがなければ何の事はなかったのかも知れない。というか、この惨事がなければ焼いた肉がすーっと消えてしまう様な光景が見られたんだろ…
ホラー……ですよね。いつの間にか 焼いていたのに焼かれる側になっているのはホラーですよね。 せめて肉を食べてから焼かれたいですね。自分の肉だけ焼かれては、何だか焼かれ損な…… そんな解釈をする作品で…
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