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放火魔の逆襲? -エピローグ-

放火魔編最終話。

なんかラストが気に食わないのはある



「おかえり、二人とも。………大分、長かったな」

「ただいま、イーハイ。……うん。……でも、全部話してきたよ。………どうやって話すべきか、かなり迷ったけど」

 オレは、クリスの言葉に苦笑するしかなかった。

 ……あれから、一日が過ぎた。

 ロータスという精霊術師……兼、精霊研究家の起こしていた放火事件は、あの時の奴の末路によって完全に終結した。

 ロータスの犯行動機から、その凶行に至るまでを魔眼の『真実暴き』で視てしまったクリスは今日の朝一番に、オレたちが泊まる宿に来た警備隊の人間から呼び出され、朝食が終わってすぐ、その詰所に行くことになってしまったのだ。

「すみません。本当は、ボクが説明しなきゃいけないところだったんですけど……」

 クリスと一緒に詰め所に行っていたリョウが、疲れたように言って頭を下げる。

「いえ、大丈夫ですよ。あんな事、リョウさんに聴かせてから話させるなんてこと、できないですし」

「……ありがとうございます。…………」

「一番いい報告としては、あの森にあった街の人たちは≪精霊≫のお陰で先に避難が完了してたことかな。被害者はいないって」

「そりゃ、よかった。……でも、あの森にはもう戻れないよな」

「うん。そこは、この地方の各町の人たちが手分けして保護をする方針みたい。森の状態はすぐには戻らないけど、《木の精霊》や《草の精霊》に明るい精霊術師の人を呼ぶ予定みたいだから、数年もすればまた森は元通りになるかもしれないって」

「そうか……。そこから復興か。それでも、目途が立つだけ、まだよかったな」

「うん……。僕も、そこは安心したよ」

「………………………それで………ロータスたちは、どうなったんだ?」

 ……あの後、ロータスを飲み込んだ炎は消えることもなくあの場に残り続けていた。

 それをどうにかする術もなく、関所の街まで戻って警備隊に事の顛末と、ロータスとトラガードのことを伝えることにした。

 そうして、オレが最後に見たのは、『ロータスだったもの』が回収されて行く現場だけだった。

 トラガードについては、見に行っていないのもあって、どうなったのか分からなかった。

 少なくとも、途中で警備隊に見つかって身柄を回収されたらしい、ということは聞かされたのだが。

「トラガードは、……生きてはいたっす」

 リョウがテーブルの向かいの椅子に座りながら、そう答える。

 クリスも同じように座って、オレが促した水を一口飲んだ。

「背部に深刻なダメージがあるとかで、頭部強打もあって……後遺症で腕も足も動かないと。今後は寝たきりの人生になるらしいっす。少なくとも、傭兵家業はもう無理っすね。……まあ、やりたくても……塀の中からは出られないっすけど。」

「………放火事件の幇助人として、刑罰はそうなるって……。処刑までされず、塀の中とは言え、そこで死ぬまでは……ってことで、話がついたんだ。……実際の扱いは、分からないけれど……」

 ………想像は、固くなかった。

 牢屋に入れられた後の扱い、というのは正直、その国や地域による。

 一生そこから出られなかったとして、少なくとも扱いだけは最低限人間としての生を終えられるようにしている場所もあれば、当然……そうでないところも存在する。

 この地方の法律やそういったところの決め事がどうなのかまでは正直、オレも詳しくない。

 どちらにせよ、事実としてトラガードは、自分の足ですら暗い場所からは出られなくなった、という話で終わりなのだろう。

「ロータスは─────」

 リョウが口を開いて続けようとしたが、そのまま口を閉じて、下を向いてしまった。

「僕が話しますよ。」

「でも、………………」

「………。ロータスは、……『魔導士協会』の方に《回収》されたよ。……そのまま、《保管》されるみたい。」

「………………………………そうか。」

「……ロータスの状態は、『魔導士協会』から見て……『生きている炎』になっている状態なんだって。」

「『生きている炎』?」

「正確には……『人間としての身体がずっと燃えている状態』で、『何かに変化する一歩手前で止まっている』……みたいな状態。……僕も、《魔眼》で探らされた。……炎の中で、ロータスがずっと、……悲鳴を上げて────」

「クリス! いい。言うな。思い出さなくていい」

「イーハイ……。ごめん。僕………」

「大丈夫。君に思い出させてまで言わせることじゃない。」

 ……クリスを見ながら、考える。

 『生きている炎』。オレが最後に見た状態のまま、ロータスは恐らく、『魔導士協会』のどこかに、クリスの言った通り『保管』されたのだろう。

 ……恐らくは、それこそ地下とか、そういう場所に、厳重に。

 片や、この地方を脅かした『凶悪な犯罪者』として。……片や、『得体のしれない存在が残した重要な痕跡』として。

 『人間としての身体がずっと燃えている状態』、『何かに変化する一歩手前で止まっている』……という状態なのは、……恐らくは。

 奴は、炎に巻かれて死ぬ一歩手前で、そして……奴の言う通り、あの時に出現したのが『クトゥグア』という存在なのだとしたら、その『クトゥグア』が、『何か別のもの』に奴を昇華させようとした───一歩手前で、何をするでもなく消えていったのだ。

 まるで、奴への慈悲のように、嫌がらせのように、……当てつけのように。

「……ロータスの言っていた、『秘密』っていうのは……『クトゥグアの従えている炎の精霊』の写真のことだったんだ。……ロータスの動機は、その精霊がもう一度見たかったから。それで写真を『美しい思い出』と言っていたんだ……だから、『クトゥグア』を求めた。……それが、発端だった……」

「──────本当に、何度聞いても……他人が死ぬにはくだらない理由だな」

 それが、『クトゥグア』らしき何者かから、或いはそれ以外の炎に纏わる存在からなのか、……どちらにせよ、恐らくそのような存在から拒絶されて『何物にもなれなくなった』のは、皮肉で孤独な話だ。

 そんな風に思った。

「………あの、お二人とも。……本当に、ありがとうございましたっす。こんな大変な依頼を、頼んでしまって……本当に、すみませんでした」

「気にしないでいいよ。こういうことには慣れてる」

「……普通は、慣れるほどそういう目に合わないらしいんだけどなあ」

「そうかあ? 冒険なんて、そんなもんじゃないか? 常に死と隣り合わせ、怪我は当たり前っていうのが冒険だろ?」

「イーハイ! イーハイのはなんか違うの!」

「ええ?」

「……………ぷ、あはっ、あはははは! ……ああ、もう、そうっすね、イーハイさんは、そういう人っす!」

「りょ、リョウ~……? そこ、笑うとこ?」

「笑うとこっす。……なんていうか、……ボクが出会ったのが、イーハイさんで良かったっす。」

「……な、なんか釈然としない」

「いいじゃん。褒められてるよ、イーハイ」

「褒められてるのコレ!?」

 クリスには苦笑されて、リョウには腹を抱えて笑われた。

 ええ、俺なんか変なこと言ったかな……。

 ……まあ、二人が少しでも元気になったならいいか……。

 ひとしきり笑った後、リョウは「あー」と自分を落ち着かせるように声を出してから、水晶玉のようなものを取り出した。

「ああ、もう、イーハイさんのことを笑ってる場合じゃないっすね。今回の事、うちの『協会』のほうに報告しないとっす」

「それ、オレ達が同席して良いのか?」

「事件を解決してくれたら一言お礼がしたい、って事前に会長から言われてるっす。だから同席してほしいっす」

「ん、そういうことなら。」

「クリスさんの事もお話するっすね。今回協力してくださったので。」

「え、ああ、ありがとうございます」

「《マキシマ》ー。『協会』と繋いでほしいっす」

 リョウの呼びかけに、人間サイズのマキシマが、空中に浮かび上がった黒いゲートの中から現れて顔をひょこっと出す。

 ……ちょっとかわいい。っていうか……小さくなれたんだ、この子……。

 そのまま全身を現して、ちょこんとリョウの横の空いているスペースに座ると、手の平の部分を水晶玉にかざした。

 水晶玉が輝いたかと思うと、そこから一人の老人の姿が浮かび上がる。

『おお、リョウ。……聞いたぞい。……ロータスのことは解決したそうじゃな』

「はい、会長。イーハイさんと……そのお仲間のクリスさんと偶然お会いしまして、お二人にこの件を解決していただきました」

『銀眼のクリス殿までとは、それはそれは。……お初にお目にかかります。イーハイ=トーヴ殿、クリス=アイラーン殿。儂は『北倭国』の精霊協会の会長をしておりますアルデファードと申します。この度は、このような依頼を請けてくださりありがとうございました。さぞ、手を焼いたことでしょう』

「どうも。アルデファードさん。……ええ、まあ。人をダシにしてくれたらしいことは、忘れてませんよ」

『はて、なんのことじゃったか……。ちょっと、覚えがありませんなあ』

「ちょ、ちょ…会長、それはイーハイさんに失礼では……?」

 ……ちょっと皮肉を言ってみたが、やっぱりはぐらかされたか。

『それはともかくとして、イーハイ殿とクリス殿には報酬をお支払いしないといけませんな。……貴方方の宿、『こもれび』の方に直接貴方方当てにお送りします故、お受け取りいただければと思います。……銀貨千五百枚ほどで如何ですかな?』

「それでいいですよ」

「リーダーがそういうなら、僕もそれでかまいません。」

『分かりました。ではそのように。』

「あ! でも、ちょっと待って下さい。一応、依頼の中にありました、『本の回収』は出来ていなくて……」

『それについては、度外視致します。なので、安心なされよ、イーハイ殿。どのみち、『クトゥグア』を召喚できる本など人類が持つべきものではないのでしょう。此度の結果は、そういうことなのだと、儂は認識しております故。ですので、報酬の金額については、そのままお渡しいたします』

「……そうですか。分かりました。そのまま、受け取らせていただきます。あなたの心づけとして」

『結構。………それから、リョウ=ツクシ。』

「え、あ、はいっす」

『お前も、よく働いてくれた。本当に、よく頑張ったな………。それはそうとして……クビじゃ。』


 一瞬、世界が止まる。


「──────え、あの、……会長? すいませんっすけど、……今、何て仰いやがりました?」

『リョウ=ツクシ。本日をもってクビじゃ、と言ったんじゃが?』

「心底冷静に言い直した結果がそれっすか!? え!? なんで!? ボク何かしたっすか!? え? え!? なんでっすかぁ!?」

『お主、《真実暴き》の前に立ったじゃろ。……なので、クビじゃ』

「………………………………………あああああああああ!?」

「……えーと、ごめん、どういうこと?」

「あの、もしかして、それ、僕のせい……ですか……?」

「クリスが『真実暴き』をしたことと、彼女をクビにすることに何の関係があるんですか?」

『イーハイ殿、クリス殿。申し訳ありませんが、儂らの決め事なのです。………儂らは、これでもエルフの一族でしてな。その中でも、『人工精霊』を操れる一族は、《擬態魔法》で素性を隠して、人の社会に溶け込んでいるのです。……なので、《擬態魔法》が解かれかねないような状況にいること自体が、タブーに当たります。いかなる理由があってもです』

「そ、そんな……僕が、《真実暴き》を使わなければ……」

『クリス殿、それは結果論です。あなたのお陰で、ロータスには隙が出来て、解決できたと聞いています。なので……まあ、リョウが悪いんでしょう』

「クリスさんを庇いたいのかそうじゃないのか分からない微妙な返答しないでくださいっすよ長老!? 余計に傷つけるつもりですかっ!?」

『というわけでクビじゃ』

「困って流すなこのジジイッ! ………でも、ま、仕方ない事っす。今までボクも忘れてましたし。使えるってこと分かってたところで、ボクが制約を忘れていたんですから、止めようがないっすしね。」

「リョウさん……」

「だから、気にしないでくださいっす。ボクの自業自得っす。」

「………ていうか、君……エルフだったんだ……?」

「そうっすよ。……あー、こうなった以上、別に魔法で擬態する必要もないっすね」

 そう言いながら、彼女は目を瞑る。

 ふわり、と彼女の身体が光に包まれたかと思うと、すぐにそれは収まって、彼女の姿は──茶色の髪から黒髪に、耳はたれ耳で長い物に、眼鏡の奥の……開かれた目の中の瞳は黒から琥珀色に。

 少し黄色かった肌は、白く変化して。

 その変化が落ち着いた時には、紛れもない、エルフの特徴を持った姿をした彼女がそこにいた。

『……リョウ=ツクシ。我らが同胞よ。……こんな形での別れになるとは思わなんだが。一人の精霊術師としては、いつでも訪ねてくるが良いぞ。一族としては迎え入れられないが……待っておるからな。』

「はい。……会長。……お元気で。」

『それでは、イーハイ殿。クリス殿。……また、機会があれば。お会いしましょうぞ。改めて……感謝を。』

 水晶玉の向こうで、アルデファードさんがゆっくりとお辞儀をしたのを見届けると、水晶玉の光りが収まった。

 ……何とも言えない空気が流れる。

「あの……リョウさん。……これから、どうなさるんですか?」

「どうするっすかねえ……。まあ、そうっすね。しばらくは、どこか雇ってくれる別の精霊協会でも探そうかと思うっす。バイトとかできないわけじゃないでしょうし、擬態魔法もあるんでエルフとして暮らさなくてもなんとかやっていけるでしょうし……」

 んー、と、マキシマの方を見ながら考える彼女を見ながら───オレは、考えるよりも前に既に口を開いていた。

「それなら、……オレ達の宿に来ないか?」

「え?」

「……うん。そうだね……リョウさんさえ良ければ……僕たちと一緒に、『こもれび』に行きませんか?」

「クリスさん……え、ボクとマキシマが、イーハイさん達の……仲間に、っすか?」

「ああ。……ダメ、かな?」

「だ、ダメっていうか、その……」

 リョウがマキシマを困ったように見る。

 マキシマは凄い勢いで、こくこくと首を縦に振って、手を使った身振り手振りで何かを訴えている。

「……マキシマ、……もしかして、イーハイさんと冒険したいっすか」

 マキシマは首を縦に振る。

「……そう、そうっすね。……ボクも……イーハイさん達と……同じもの、見てみたいっす。……大変な思いは、させられそうっすけど!」

「あはは! それは、そうかもです」

「え、冒険って大変なものでは!?」

「そーいうことじゃないっす」

「どういうこと!?」

「ああ、もう前途多難が見えてるっす……」

「僕たちの宿に来たら、もっとこんな事ばっかりですよ」

「楽しそうで嬉しくて涙出そうっす」

「なんか皮肉に聞こえるんだけど!?」

「皮肉っすよ」

「なんでぇ!?」

「──────────イーハイさん、クリスさん」

「え、何!?」

「はい!」

「………マキシマともども、お世話になりますっす!」

 リョウと、マキシマが立ち上がって、オレ達に頭を下げる。

 オレとクリスは、一瞬目線を合わせて、笑い合う。




「ああ─────、よろしく、二人とも!」






【 放火魔の逆襲? ‐終‐ 】


ラストの描き方が下手くそってだけなんですけどね

お付き合いありがとうございました。

次のエピソードは見るか見ないかはお任せします

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