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放火魔の逆襲? -5-

5話目です。

なんだかんだまとまりそうでよかったって思った話。

 

「『生命齎す過ぎ征く水 我が声に応えよ』──────!」

 ………葉っぱの先が炎に包まれている。

 幹までに到達しているものは今のところ少ないが、どの道時間の問題だろう。

 細い枝を焼いた匂いが鼻を突くが、そんなことを気にする暇もなく、煙に当たらない、かつ地面から離れている高度を保って飛行────その間に、オレは可能な限り水の魔法をクリスに指示される方向に繰り出して、道の確保もする。

「……! イーハイ!! 前方一時方向に反応ッ! 回避!!」

「!」

 クリスの声に、とっさに身体を捻れば、炎の爆ぜる音の中から銃声が鳴り響く。

 速度を落とさないままに、体勢を立て直してスピードを上げて前進。

 ………これで立ち止まったり、速度を下げようものなら、恐らく──────。

「……クリス!」

「位置、移動中! 依然一時方向のまま!」

「進行方向に移動して、狙い撃とうってか。随分自信満々なことで!」

「これ! トラガードの野郎っすよね! どうするんすか!?」

「このままロータスの所に辿り着いても、ロータスが暴走状態なら相手をしてられない。………だったら、迎え撃つッ!!」

「迎え撃つって!?」

「『大地に集いし力強き精霊たちよ 我が声に耳を傾け給え 我が手に集いて暗夜を照らす光となれ』! ────《明かりよ(ライト)》!」

 オレの力ある言葉に呼応して、手の中に白い光の玉が形成される。

 眩い光を放つそれを、トラガードがいる方向へと勢いよく投げつける────!

 ……程なくして、炎の明るさを掻き消すほどの光が視界の右方向から溢れ出た。

 同時に────激しい爆発の後のような眩い光を利用するように、一つの大きな影が躍り出る!

 …………がきん!! という音が耳を貫いた。

「………あ、あ………」

 オレの左腕の中のリョウが震えているのがわかる。

 ………〈明かり〉の魔法を放った直後に剣を引き抜いたはずの右の腕は、痺れでもあるかのように小刻みに震えていた。

 飛行中の速度を乗せたままに、その勢いで奴の攻撃を弾いたからだろう、結構、弾かれた瞬間は痛かった。

 だが、それは向こう……トラガードも同じだったのだろう。

 オレの前で、短剣を弾かれた時に取ったらしい受け身の動作のまま……足を広げてその場に立ち尽くしていた。

「イーハイ!! 大丈夫!?」

「………クリス、リョウを頼む」

「イーハイさん……、わっ!」

 リョウをクリスの方に手だけで誘導する。

 ふらりと自分を支える力を失ってつんのめりそうになった彼女を、クリスはすぐに支えてくれたようで、二人の足音は遠ざかっていく。

 オレは、顔にいくつもの傷を持つ男────トラガードの目を見ていた。

 向こうも、こちらから視線を逸らす気はないらしい。

「………一つ……聞いていいか。……答える気がないなら、黙ってていい」

「…………………」

 トラガードは動かない。

「………。ここまでする主に付いて、……何になる?」

「…………………」

 ……トラガードは動かない。

 変わりに────体重を乗せた、鋭い蹴りが繰り出される。

 それを後ろに飛んで避けながら、剣を構え直す。

「お金の為、にしては……随分と、リスキーだね」

「金ではない」

 左から拳。

 それを左腕で受け流す。

「………………」

 金ではない、なら。

 恐らく、この男は、………自分の意志で。

 ────繰り出される拳と、足技をいなしながら、思い出す。

 昔、世話になった人に言われた言葉を。

 『自分から見たらどんなにクズでも、そいつには生活がある』────。

 拳を受け止める。腕に衝撃が走って、震える。

 『生活があるってことは、そいつを支えている人間がいる。自分の意志でな。』────。

 周囲の熱風を巻き込むかのような、蹴りが飛んでくる。避ける。

 『一つ……目を変えりゃ、そいつと、笑い合ってる人がいるもんだ。』

 拳を振り抜く。避けられて、その勢いで向こうも拳を振り上げる。受け止める。

 『忘れるなよ、イーハイ。……お前も、誰かによっちゃ、そういう『クズ』かもしれねぇってな』────。

「…………はっ。」

 口から、思わず笑いが溢れた。

 僅かに、トラガードの眉が動いたのが見える。

 でも、オレの口元は歪んだままだった。

「君にとって……オレは、敵か?」

 おかしな質問だと思う。こんな状況で。

 事実、トラガードは警戒をそのままに、動きを止めた。

 いつでも、攻撃を仕掛けられるような、腰を低くした体勢で。

 オレに怪訝な目を向けていた。

「…………敵だ。お前は、『あいつ』に必要だが、必要ない」

「そう……。なら、良かったよ」

 オレの身体に、影が射す。

「────君が、敵で」

「────────《マキシマ》ぁぁッ!!」

 リョウの声が、響く。

 トラガードの顔が、驚愕に歪んでいく。

 オレの頭上に現れた、巨大な腕。

 ………リョウの喚んだ、マキシマの。

「な────────」

 トラガードの声は、鈍い音と共に掻き消えて、黒い塊が横に飛んでいって、………近くの木に激突する。

 ゆっくりと、顔を向ければ……木の根元に無慈悲に墜ちた、トラガードの姿がそこに在った。

 ………気絶でもしたのか、打ち所が悪くてどうにかなったのか。

 それきり、動かなくなった。

 聞こえてくるのは、相変わらずの炎の爆ぜる音と。

「………っ、はぁ、……はぁ……っ……!」

 リョウの、荒い息遣い。

「……マキシマ…」

 オレは、ゆっくりと、トラガードを吹き飛ばした巨大な腕の持ち主に話しかける。

 僅かに、腕が揺れたのが分かる。

 腕の先に目を向ければ、表情のない無機質な彼がそこにいる。

「………ありがとう。…………」

 オレの言葉に、マキシマは首を縦に振る。

 そして、未だに肩で息をする己の主の方を見た。

「………リョウ」

「………すみません……手を、出してしまいました。」

「良いよ。あれ以上は、どうしようもなかったから。………ありがとう」

「………………………」

 リョウの目が、トラガードの方に向けられる。

「………あの人は、どうして……」

「………リョウさん。……それは、考えないほうがいいです」

 クリスが静かな口調で言う。

「目の前のことに集中しないと、死ななくてもいい人が死にます」

「………………すみません」

「気にしないでください。僕のこの言葉も、仲間の受け売りですから」

 クリスは、リョウに笑いかけていた。

「急ごう、イーハイ。………もう、ロータスだけだから」

「ああ。………あと、すまないが、ここからは……歩きで行こう。………嫌な予感がするから」

「うん……。僕も、そんな気が、してる……」

「………分かりましたっす。お二人がそう言うなら」

「……よし。……クリス、方向は」

「………十一時の方向に、ヒト型の生体反応……それから……」

 クリスは、その方向を睨みつける。

「多数の『火の元素』と、それを生み出す生物反応──────」

 そのクリスの言葉に呼応するように、炎の爆ぜる音が大きく耳に聴こえた。


 

 




 

 ………燃えている。

 否応無く、全てが。

 鳥の歌の代わりに、森が炎の音を鳴らす。

 地面は昼間よりも明るく、影すらも存在を曖昧にするほどに照らされている。

 その中心を、歩く影が、一つ。

「──────アハッ、……アハハハハッ、アハハッ……! 燃えてる! ……燃えてる!! 全部、全部、こんな世界だったらなぁッ!? アハハハハハハ、アハハハハ──────!! なんで、なんでもっと早く、こうしなかったんだろう、俺って、バカ? バカかも! アッハハハハハァ!!」

 まるで、新しいおもちゃでも買ってもらった子どものように、ケタケタと笑いながら、進む、……歪んだ、影。

 ──────わざと。

 わざと、足音を立てて、進んでやれば。

 両手を広げた影が、軋むように振り返る。

 顔は、……影を形どる体躯よりも、歪んだままに。

「………ああ────」

 奴は……ロータスは、瞳孔を見開いたままに、オレを見る。

 射殺そうとしているのかと思うほどの、視線で。

「アンタ、かぁ。」

 笑みを無くした奴の口から、言葉が漏れる。

「────アンタ、もう要らない。用済み。使えると思ったけど、そうでもないや。アンタはゴミ。役立たず。俺にも要らない。誰にも要らない。お前なんか要らない。要らないって言ってんだから、視界から消えてよ。何で消えないの。俺が消えてって言ってるでしょ。なんでなんでなんで────」

 身体ごと、奴がオレのほうを向く。


「な ん で 、 消 え て く ん な い の ?」

 

 木の一つが、崩れ落ちる音が聞こえる。

「…………さぁね。なんでだと思う?」

「俺に質問しないで。ていうか質問で返さないで。気持ち悪い。お前、気持ち悪いよ。死ぬほど気持ち悪い。何なの。何で死んでないの? トラガードは────」

 奴は、そこで言葉を止めた。

 辺りを見回して、動作が止まる。

「トラガードは? トラガード、トラガード、いないのか、トラガード、なぁ、俺、呼んでるじゃん、トラガード、トラガード、トラガード……?」

 息を詰めながら、奴は頭を抱えて、振り乱す。

「トラガードが、いないのに、なんでお前が、いるの、何で、何で、なんでなんでなんで、お前が、要らないお前が、トラガードがいなくて、なんで、なんで、なんで、気持ち悪い────」

 ピタリ、と、影の振動が止まる。

「ああ、そっか────────」

 そうして、下を向いていた頭が、その顔を歪める笑みが、ゆっくりと浮上する。

「トラガードは、俺のために、いなくなったんだよね。」

 見開いた目。弧を描く唇。

 なんの変哲もないはずの、人の、浮かべた────笑顔であるもの。

「そうだよな、そうだよなぁ、トラガード、いつも、あんな天然のくせに堅物なやつで、意外に天真爛漫でかわいい子に好かれてて、そんなやつで、そのくせ、アハッ、そうそう、俺の為に、めっちゃ働いてくれちゃって、」

 アハハ、と弧を描いた口から、笑いが漏れ出る。

「だから、今回もそうだよなぁっ!? トラガードぉッ!! 俺のために、そのキレイな魂をこの美しい炎に、捧げてくれたんだよなぁッ!? アハハハ!! そんなところまで不器用じゃなくたって、いいのになぁッ!? そうだよなぁ、そうだよなぁ!? こんな、こんな、ウワサだけのゴミに、こんな価値のないガラクタに、命なんか掛けてないよなぁっ!?」

 笑いは止まらない。

 まるで、雄たけびを上げるかのような笑い声が、爆ぜる音ともに耳に響き渡る。

 自分の土を踏む音が、すごく静かに聞こえた。

 ────息を、吸う。

「…………御託は、終わったか?」

 笑い声が、止まる。

「…………、喋るな。」

「悪いけど、喋る生き物なんだよ。」

「喋るな」

「良いよ。喋らないであげても。………ただ、君の御託を聞き飽きた、とだけ感想は言わせてもらうけどね」

「………………何なの、お前。お前さぁ。……本当に、何なわけ。」

「オレは、お前にとって────最高で、最悪のクソ野郎だよ。」

 その時、奴の腕がだらり、と落ちた。

「……………………………。」

 炎の爆ぜる音、呼吸音、鼻を突く木々の焼けた後の煤の臭い────それだけが、静かに感じられた。

 だが、その中心に立つ影は、激しく、弾かれたように、顔を上げて。

「………あ…………あああああああああ、あああああああああああああああ────────!!!」

 喉から絞り出すような、捻れているが純粋な……耳障りな叫びを木霊させた。

 奴の腕が上がる。

 奴の周りに、辺りを包む炎と同じ色の光がいくつも出現したと思えば────そこから顔を出す、無数の《火の精霊》たち。

 しかし、その精霊たちは、………皆、目に光を灯していない。これほど明るい場所にいるというのに、映さない。

 暗い闇さえ思わせるほどの、黒に満ちている。

「………お前……ッ………」

 思わず、言葉が漏れた。

 奴の喚び出した精霊たちの声が聞こえない。

 それは────彼らの意志を術者が奪っているのと同義で………。

「うぁぁぁぁあああアアアアーーーーーッッ!!!」

 やけくそ気味の叫び声と共に、無数の《火の精霊》たちがオレたちに飛びかかってくる。

 オレは手を前に出して、魔力を展開する。

 向かってくる精霊たちに、精霊語の思念を送ってみるが、………無言。

 ……無言どころか、耳の中にザザ、ザザ……という音すら聞こえてくる始末で、精霊の意識に到達すらしていない。

 その間にも、圧で押し切ろうとするロータスの魔力の波動がオレの展開した魔力にぶつかってくる。

「──────《真実暴き》……!!」

 ………唐突に、クリスの声が聞こえたかと思うと、魔力の向こう側で、精霊たちの姿が震えた。

 クリスの《銀の魔眼》による《真実暴き》で、精霊たちに掛かっているロータスの術が揺らいだのだろう。

 ………簡単に言えば、『精霊の本来の精神を暴いた』ようなもので、精霊たちの精神が一瞬、表面化したのだ。

 それを受けた精霊たちの元の姿と、今の姿が重なる………。

「………な……っ……?」

「クリス……?」

 ──────なぜか。その時。

 驚きの声を上げたのは、クリスだった。

 何かあったのかと、オレは戦闘中にも関わらず、クリスの方へと顔を向けてしまった。

 光の中で、信じられないものを見るように、クリスは銀色の瞳をロータスに向けていた。

 

 そして………どうしてか。

 ………さっきより、炎の勢いが……増した、ような。

 



「視  た  な  ……」



 ロータスの声。

 それまで観せなかった憎悪の表情を浮かべた、奴の姿が浮かび上がる。

 奴の顔を覆う手が、爪が頬の肉に食い込んで、血を流す。

 そんなことを意にも介さず、奴は、弾かれるようにクリスに向かって──────!?

「クリスッ!!」

「やらせないっすッ!!」

 クリスに向かって突進したロータスを、オレはすんでの所で逃がしてしまったが、リョウの後ろから現れた《マキシマ》がリョウとクリスを包み込むように出現して、ロータスの振りかざす刃から硬い腕で守ってくれた。

 二人が無事なことに安堵する間も、ロータスはマキシマの腕に向かって何度も何度も自分の短剣を振りかざしては斬りつける。

「見たな見たな見たな見たな見たな見たな────────────!!」

「こいつ、何言ってるっすか!? 何を『視た』って言ってるんです…!?」

 ………ロータスは、もはやクリスを害することにしか興味を失くしたようだった。

 マキシマの腕ですら、今自分とクリスを隔てているからという理由で……単純に邪魔だから、そうしている。

 そうとしか思えないほど、奴の振りかざす短剣の軌道は出鱈目だった。

 肝心の標的になったクリスは、………わりと長い時間を共にしてもらったオレでも数回しか見たことがないほど、冷めた目をしていた。

 軽蔑とも、憐憫ともにつかない、銀色の魔の眼差しが、容赦なくロータスを見据える。

「見るなァァァァッ!! お前なんか! お前なんかが見ていい物じゃない!! お前が!! 見るな!! 俺の、俺の俺の俺の俺の!! 美しい記憶を!! あの美しい姿を!! 見たな!! 見たなァァァ!! 殺してやる!! 殺してやる!! あの『東の協会』のメガネ小僧のように石像にして!! バラバラにして!! 海に沈めてやる──────!!」

「…………くだらない」

 クリスの冷たい声がした。

 ………静かに。

「くだら………ない………?」

「くだらないよ。………僕は、………どんなことがあっても、人ってそれ相応の理由があって人を殺すんだと思ってた」

「『視た』なら分かるだろうッ!? あのメガネはな!! 俺の崇高な秘密をあばい……!」

「──────クトゥグアの精霊の写真。」

 クリスが、真っ直ぐと奴を見据える。

「その写真を小箱に隠して、調子に乗って誰でも分かるようなヒントを出して、中身のことをその人に話したのはあなただよ!! それだけだろ!! 自業自得。それで、…………そんなくだらない理由で、人が死ななきゃいけなかったなんて………くだらない以外に言えるか!!」

「あんなやつが生きてる方がくだらないだろ!! 俺の、俺の秘密を暴いて、俺を傷つけたんだ!! 俺はただ、だからやり返してやっただけだ!! それの、何が悪い──────!!」

 ………こんなに、熱いのに。

 急速に、身体が冷えていく感覚を覚えた。

 ロータスの声を聞いて。



「………『我、星辰の御許 我が剣に願い奉る』──────」 

 剣を、掲げる。



「………あ…………」

 誰かの声が聞こえるが、誰のものかわからない。

 ただ、自分の内側にあるものが暴れだしそうで、………ただただ静かになりたかった。

「『大いなる業の戒めたる者よ 我が声に耳を傾け給え』」

 自分の口から、流れるように《祈り》の句が出てくる。

「………『我らが星の名の下に』!!」

 風が巻き起こって、身体が、浮かび上がる。

 オレは、最後の『力ある言葉』を、口にする。



「──────《スペリオール》!!」



 オレの掲げた剣から、白い光が迸った瞬間、………オレも、何が起こったのか、理解できなかった。

 上空から見た、森を包んでいたはずの膨大な火が。炎が。

 ──────一瞬にして、跡形もなく消えた。

 視界の下で、リョウとクリス、マキシマが辺りを戸惑うように見回している。

 オレも辺りを見回しかけて、やめた。

 オレの後ろに……背筋の凍るような、威圧を感じたからだった。

 あまりにも、冷たい何かの視線を感じて、ゆっくりと振り向いてみれば。

 そこに、無数の炎の────塊がいた。

 人を模っているような、そうでないような。

 それでいて、不定形の化け物のような、何か。

 ………恐らく、本来なら見てはいけない、………何か。

「………………………、な、んで」

 地上から、小さく。

 ロータスの声が聞こえた。

「何で、何で、何で、お前が、……それを、喚べる……? なんで、なんで、なんで、なんで………なんで、…………『クトゥグア』を……? 俺の、神を………」 

 『それ』はロータスの言葉に応えない。

 徐に、オレの肩越しに、炎の腕のようなものを伸ばしたかと思うと。

「──────ぎ……ギャアアァアアアァア──────!!」

 ………ロータスが、突然炎に包まれた。

 まずは足から、腕から、腹部から。

 順番に、炎は辿るようにロータスを飲み込んでいく。

 地上で、マキシマがリョウとクリスを咄嗟に巨大な身体と腕で包みこんだのが見えた。

 ………オレも、見ていられなかったのかもしれない。

 オレの後ろに現れた、得体のしれない『炎』は、腕を引っ込めると。

 ──────そのまま、火の粉を散らして、虚空に消えていった。

 地上で未だ、怨嗟のようで慟哭のような悲鳴を上げ続ける、人だった炎の塊を残して。


 あまりにも静かな、放火魔の事件の幕引きだった。


(エピローグへ)


描き終わってなんだこの話って思った話。

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