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放火魔の逆襲? -4-

4話目。

作者のやる気が一番落ちてた時期の奴。

「………なるほど、事情は分かりました。」

 あの後、村の宿に移動したオレたちは宿に備え付けられている酒場で食事を取りながら、クリスに一通りの事情を話していた。

 今回受けた依頼の事、この地方で横行している『放火魔の事件』の事、それからこの村に来る前に『敵』となる人物に会った事。

 長くはなったが、クリスは飲み物を片手に真剣な顔のまま聞き終えた後、頷いた。

「……『クトゥグア』……聞いたことがない神様ですね」

「聞いたことあったら地味にドン引きするっすよ。メジャーではありませんが、立派に邪神っす。しかも、性質的には『破壊』の神の一派にも該当しかねないような、一部地域では口にするのもタブーらしいくらいのっすね。」

「そんなものの眷属を喚ぼうなんて……」

「相手は人間の命を文字通り何とも思ってない奴っす。『そんなもの』でも、奴には魅力的に映るんでしょうね」

「………なあ、リョウ。あいつは……『精霊協会』の人間で、イカれたことをしようとしてるのは分かってる。でも、君からまだ奴に対する情報の詳細を聞けていないから………。依頼のためにも話を改めて整理しておきたい」

「………分かりましたっす。どこかのタイミングで話さないといけないことではありましたんでちょうどいいっす。お話しますね。」

「頼む」

「奴の名前は『ロータス』。ご両親が悲しみでむせび泣きそうな名前なのはもうしょうがないっすけど。先刻もちらっと言いましたが、奴は東の精霊協会の支部の一つに所属していた人間です」

「東の精霊協会、『北倭国』が本部の……だな」

「はい。東とは言いますが、実際には『北倭国』から見て東にあるっていう意味ですね。」

「あっ、なるほど……勝手に『リューン』の東、って思ってたけど海だし……? って思ってたらそういう事ですか」

「精霊術師じゃないとピンと来ないところっすよね、そこは。」

「………え、でもちょっと待って下さい。北方大陸の人がこのルビー大陸にいるってことは……」

「このルビー大陸に逃げてきたってことっすね。」

「そうだろうな。最初の話からして」

「大陸を跨いでまで、人に危害を加えようなんて………」

「………恐らくやつにはそんなつもりは無い。自分の目的のために誰かを害してるなんて思っちゃいないタイプだよ」

「自覚がない……すごく厄介な相手なのは、さっきも聞いて、少し……。」

 クリスの言葉にオレとリョウは頷く。

「あと、さっきはすぐ逃げてきちゃいましたから、正直向こうの戦術にどんなものがあるかというのは把握しきれてないっす。……申し訳ないっすけど、あいつが研究者の一人で、あんなヤツだったとしか分かんないので……」

「なるほどね。……強いて言うなら、……そうだな、ロータスの傭兵? ……の、トラガードって呼ばれていたやつのほうが戦闘を担っているっぽかったけどな」

 言いながら、リョウに視線を向けてみる。

 ジュースに口をつけていた彼女はオレの視線に気がつくと、こくんと喉を鳴らして飲み込んだあとに口を開く。

「………トラガードについては知らないっす。少なくとも表の人間ではないでしょうし、おそらく精霊術師でもない、言っていたとおり傭兵なんじゃないっすかね。雇われ、なのかロータスの野郎の伝手……なのかは判別できませんが」

「そうか。どのみち、どちらにせよ金は積まれてるんだろう。倒すことにはなるだろうね」

「…………………。」

 急に黙り込んだクリスの顔を見れば、グラスを見つめたまま複雑そうな顔だった。

「………何か、他に気になることがあるのか? クリス」

「……え? あ、ええと……なんでそのロータスって奴はイーハイを狙ってるのかなって。純度の高い魂なら、イーハイ以外にも見つかると思うんだけど……」

「うぐ。そ、それはぁ………」

「あー、そのことか。それなら大体察しはつくよ。大方、『精霊協会』が意図的にオレの噂を流したんだろ?」

「……………………………………………そうっす。」

「だと思った。」

「え? っと……?」

「要するに、最初から『精霊協会』はオレにロータスのことを押し付ける気で、わざと大々的にオレの噂を流したんだよ」

「………それは………他に被害を出さないため、ですか?」

「………それもある……とは思いたいっす……」

「……それもある……って?」

「ま、残念だけど『魔導師協会』を含めてそういう魔法の研究職ってのは、そこまで善人な集団じゃないって事だな」

「………えっと………?」

「………正直な所、『精霊協会』は奴らの召喚自体には完全には反対してないんすよ。……成功すれば理論の確立はされるから問題ないくらいの気持ちの人もいるわけで。………成功してどうするのかは知りませんけど」

 オレは思わず、クリスの方を向いてしまった。

 同じことを思ったのか、さっきの複雑そうな顔のまま、クリスはオレの方を見ていた。

 リョウは初めて会った時に対処できるのはオレくらいしか、と口走っていたが、実のところ対処できる人にはかなり身近に心当たりがある。

 最悪、オレがどうにかなっても大丈夫………と、クリスにハンドサインで伝えてみたが、眉間に深めシワを寄せられて『ふざけないでください、無事で帰らないと私が怒られます』と返された。

 ………はい。

「ところで、ここまで勢いで来ちゃってたけど……実質彼らはどうしたらいいんだ? 捕まえるのか?」

「捕まえる方向性っすね。別に処分しろとは言われてないっすから。………ただ、犠牲者が出たらその限りじゃないっす。……それから、本も取り返さないとっすね……」

「了解。じゃあ、戦い方は考えないとな……」

「向こうはこっちを殺す気で来るわけだから、ちょっとやりにくいかもね……」

「そこで、クリスの力を借りたいんだけど」

「僕の『魔眼』だね……あとは、防御用の土魔法も役に立つなら……」

「ああ、頼む」

「クリスさん………その、えっと、ありがとうございます。………そこであの、一応確認なんですけど、クリスさんの『魔眼』の有効範囲とか対象ってどんなもんなんっすか? ………あー……そのー……」

「………もしかして、クリスにもあらぬ噂があるとか……?」

「え、何それ……?」

「……あー……あの。ボクが言ったんじゃないっすからね。あの、なんかそのー……目からビームが出て街一つを焼き尽くしたとか、魔眼で索敵してきてありえないスピードで追い回されたとかその。」

「それホントに僕の話なんですか!?」

「噂っす! あくまで噂っすから!」

「び、ビームが出るのは否定はできないからなんか複雑なんですけど………」

「え、出るんすか……?」

「正確には、『魔法の矢』とかの魔力収束系の魔法を『魔眼』を起点に行ってるんです。それが傍から見ると目からビームが出てるように見えるみたいで……」

「あー……手とか指先から出るものが目の位置から出るからってことっすねー……」

「滅多に使わないんですけど……なんでそんな噂が……イーハイじゃあるまいし……」

「今日いつもよりオレへの当たり強くない………??」

「自分の行いを振り返ってから言ってよね。」

「…………はい。」

「この件何回目っすかイーハイさん……そろそろ自覚しないとお仲間の胃が爆発するっすよ」

「うう」

「それよりっす、ってことはクリスさんは『魔眼』を経由した魔術が中心の魔法が使えるってことっすね」

「そうですね。ただ、強力な魔法は使えません。初歩魔法の再現が限度ですね。あまり元素の収束効率も高くないので」

「なるほど。………他には何かあります? 噂だと『生命感知』と『魔力感知』は普通にできるとお聞きしましたっすけど」

「できますね。……あとはその、『真実暴き』までなら」

「う、結構強力な『魔眼』っすね………。能力としては魔族一歩手前な感じっすね」

「さすがに魔族ほど『魔眼』の発動時間は保たないですけど」

「いえ、相手にとってはあるだけ脅威でしょうし。使い所次第っすねぇ」

「…………今回はクリスの『生命感知』に頼ることになるかな。オレも流石に精霊たちに感知を任せながら戦うのは無理だし」

「精霊術とそれが併用出来たらいよいよあんたがバケモンっすよ。………で、問題は………普通に逃げてきちゃったんで、奴らを探さないといけないっすね」

「あー、それなら問題ないぞ」

「………へ? 問題ないってなんすか?」

光の精霊(ルキス)に奴らを追ってもらってる。まぁ、向こうも腐っても精霊術師。バレてはいるだろうけどね」

「マジすか…………?」

「もう一発くらい殴っておけばよかったと後悔してる」

「…………え!? あの時っすか!?」

「って言っても、光の精霊(ルキス)が勝手に引き受けてくれただけだけどな。あいつも頭に血が上ったとかなんとか」

「か…………、…………いや、いい加減イーハイさんに常識は通用しないっすね。」

「なーんか引っかかる言い方だけど、まぁそれはいいか。とりあえず、光の精霊(ルキス)のいる方に行けばあいつらには会えると思うぜ」

「………待ち伏せとか、誘き出しがある可能性は?」

「十分にあるっす、今なら、やろうと思えば村一個くらいなら燃やすんじゃないですか……。奴らのことっすからね、ありえない話じゃないっす」

「さっき言ったとおり、光の精霊(ルキス)のことがバレてれば、の話だけどな」

「それなら、急ごうよ。聞いてる限り、その人たちは本当に何するかわからない」

「そうだな。そろそろ行こうか。………リョウ、もう大丈夫か?」

「お伝えできることはしたっす。役に立つことは言えてないっすが。…………イーハイさんこそ、頭に血が上りすぎてムチャするのだけはやめてくださいね」

「はは、気をつけておくよ。その時は殴ってでも止めてくれ」

「了解っす、その綺麗な横っ面に立派な紅葉生やしてやるっす」

「頼りにしてる。それじゃ、光の精霊(ルキス)に連絡して───」

『………主人!』

 オレが席から立ち上がろうとした瞬間、頭の中に声が響いてきた。

「………光の精霊(ルキス)? どうした?」

『イーハイ、森が……燃えている………場所は──────』

「…………え……? ………わかった、すぐ行くから」

『主人、急いでくれ』

 その言葉と共に、光の精霊(ルキス)の声が聞こえなくなるが、変わりに光の精霊(ルキス)自身が今いる場所の位置のイメージを送ってくる。

 頭の中の光景に出てきたのは、オレたちが最初にいた街からそう遠くない場所に位置する森の中に存在する街で、名を『ランハ』というらしい。

 オレがそれを二人に伝えようと向き直ると、二人はそれぞれ警戒するような表情を浮かべていた。

「………何があったっすか」

「『ランハ』っていう街がある森が奴らに放火されたらしい」

「!? ───イーハイ、だったら急がないと!」

「ああ、行こう」

 オレたちは飲食の代金を「お釣りはいらないから!」と言いながら近くの店員のおばちゃんにほぼ叩きつけるように手渡して、酒場を飛び出すことになった。





 ────空から見た地上は赤かった。

 紅葉でも、夕暮れの陽の光に晒されているわけでもない森は、大きな煙の柱をいくつも立てながら、煌々と輝いていた。

 火だ。森を覆い尽くして、その身を輝かせるほど広がった、どうしようもないもの。

 偶然の火事では考えられない程の速度で、それはその触肢を伸ばしては木々を焼き尽くしていく。

「………元素暴走………!」

 オレの腕に抱えられたリョウが呆然とした状態から戻って漸く呟いたのはその一言だった。

 燃える森の上に火の粉とともに吹き上がる無数の朱い光の粒────『火の元素』。

 これが大量に発生しているということは、ここに無理やり『火』に纏わる精霊を何体も呼び出したか、或いは大量の火の元素を必要とする高等か上位の『火の魔法』か『火の魔術』を何度も使用したのか。

 それとも、どちらもか。

「………う……!」

 隣でクリスが呻いたのが聞こえた。

 そっちに目をやれば、クリスは『銀色の魔眼』を発動させたままに、その目の周りを指で抑えている状態だった。

「クリス、無茶するな。こんな量の元素を一度に視たら………」

「大丈夫……! 『視る』対象を生命に絞って集中すれば、ある程度は………早くロータスを見つけないと……!」

「………………クリスは限界になったらすぐ『魔眼』を解除して、そうなったらリョウは自分で飛行魔法を使ってくれ。クリスはオレが地上まで下ろすから」

 オレは提案しながら、彼の顔色を注意深く見る。

 というのも、クリスは既に一つ無茶をしていた。

 彼は自分の瞳に宿る『銀色の魔眼』を発動しながら、飛行用の魔法を維持している状態。

 どちらも魔力を込めたり、元素に魔力を流し込むことで発動するもので、本来であれば……というより、基本的に魔力の分散を避けるために2つの魔法を同時に発動することは推奨されていない。

 正確に言えばできなくは無いのだが、どちらかは必然的に魔力の流し込みが疎かになるとして、魔法自体の発動が不安定になり、無害な魔法ですら暴発による未知の危険もあるからやらないことだ。

 端的に言えば、力の配分が崩れてしまえばクリスの『魔眼』が強制的に解除され、クリスの飛行魔法も維持できなくなる。

 そうなれば────と、同じことを想定していたんだろうリョウはオレの指示に頷いた。

「…………了解っす」

「ごめん、クリス。本当は地上に降りてやるところだが」

「大丈夫。ロータスにすぐ追い付くにはこの方が良いから」

「ああ。ありがとう…………それじゃあ……《水の精霊(ウンディーネ)》!!」

『はい、イーハイ』

 オレの呼び声に応えて、すぐ隣で水の柱が巻き起こる。

 そこから、美しい青い髪の女性が顔を出す。

 水の精霊(ウンディーネ)はオレに向かって一つ頷いて見せると、出来うる限り広範囲に青い光を撒き散らした。

 『水の元素』だ。

 『水』は『火』に強いが、ここまでの範囲で高密度に撒き散らされた元素の量に勝てるものではなく、『現象』として負けてしまう。

 だから……………。

「………『生命齎す過ぎ征く水 我が声に応えよ 汝、その身を揺り籠の褥より現わし 蒼き魂となりて 嵐の幕開けとなれ』!」

 オレの『力ある言葉』に、水の精霊(ウンディーネ)によって齎された周囲の『水の元素』が増殖し、その一つ一つが輝き始める。

「────《蒼の揺籃(クナラ・エル)》!!」

 オレの手から放たれた一筋の蒼い光が真っ直ぐに燃える森に向かって奔る。

 やがてそれは一つの炎に包まれた木の一本に当たると────蒼い光から、膨大な水の爆発が巻き起こってその周囲を『吹き飛ばした』。

「わ……っ!」

「ひょえ!」

「………………」

 爆発からかなり遠いにも関わらず、余波の風が体を叩いてオレ達の後ろへ駆け抜けていく。

「────クリス! どうだ?」

「…………う、ん。………さっきよりは、よく視える……!」

「………あ、荒っぽい『対消滅現象』の使い方っすねぇ……」

「『火の元素』を減らすにはこの方が早いだろ」

「まぁ、そうっすね……。火を消すだけなら『土の元素』が手っ取り早いっすが、それだと『火の元素』のほうは消えないっすからね……」

「とりあえずこの方法で『火の元素』をなるべく減らして進もう。」

「────────イーハイ! 10時の方向に生命反応!」

「了解! 行くぞ!」

 オレ達は頷き合って、まだ火の手の上がる森の中へと身を躍らせる。


(続く)

確か描くのに1年くらいサボってた。

どんだけやる気ないんだよと。

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