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放火魔の逆襲? -1-

はじめましてこんにちは

カクヨムで連載中の小説をこっちにも上げてみようということで

持ってこさせていただきました。

至らない点多いと思いますがよかったらよろしくお願いします。


「………わぁ。」

 オレの目の前で煌々と燃え盛る建物は、今朝方チェックインしたばかりの宿屋である。

 こりゃあ、荷物は諦めるしかないなぁ。大したものは入ってないからいーけど。

 ……それにしても、結構な燃え方だ。

 周りで消火を行おうとしている魔術師たちの魔法はほとんど効果が無いに等しく、もはや炎が建物を焼き尽くすまでそのままにするしかないだろう、と思うレベル。

 幸いなのは、隣接した建物がないから延焼しないってくらいか。

 ………近くで宿の経営者らしき男がすげー泣いてるよ………。

「……はぁ……これで何軒目かねぇ。」

「次は俺達の家じゃないのか? 早く犯人がつかまってくれねぇかなぁ。」

「おちおち仕事もできないよ、まったく……」

「…………ん?」

 オレは聞こえてきた声に耳を傾ける。

 野次馬のうちの後ろの方の、町の住人らしき人らが何かを話しているらしかったが、そのまま一言二言交わすとその場から離れてしまったらしかった。

 これで何軒目、とか言ってたな。

「ちょっと、お兄さん。」

 失礼して、隣に立っていた男の肩を叩いて。

「あ? どうしたよ」

「こういう火事って最近多いのか?」

「なんでぇ、兄さん知らないのかい? 最近ここだけじゃなくて、近くの街や村でもしょっちゅう火事が起こってるんだぜ。」

「はあ?」

「そういう反応になるのも無理ねぇわな。……まぁ、噂だと、あんまりにも立て続けに同じ街で起こるんで放火犯でもいるんじゃねぇかって話だが。」

「放火犯ねぇ……また物騒な。」

 未だ煌々と燃え盛る建物を見ながら、一つため息が出る。

 悲しいことにありえない話じゃないからだ。

 どういうわけか、そういう犯罪に目覚めて無茶苦茶やるやつ、というのは『この世界』では珍しいものではなく、しょっ引かれるのも捕まらなければどうということはない理論で気にしないような連中がいる。

 ………まぁ、捕まらなければ、というところに関してはその通りではあるし正直気持ちは分からなくもないが、それはそれ、これはこれ。

 この地域を治めているというか、どこかの国で管轄しているとかで、その国で放火が罪にならないなら話は別だが、生憎と蛮族上がりでろくな法律がない国とかでしかそんなものは聞いたこともないわけで。

 しかし、これじゃその内建物が何軒あっても足りなくなるんじゃないのか?

 イマイチ計画的な放火なのか、それとも捕まらないようにするところだけを無駄に気をつけていて、それ以外は無計画なのか……っていうのが分からないからなんとも言えないが。

 下手にこの近くの街に泊まったりしたら、明日には灰になってました、は勘弁したい。

「難しい顔してんなぁ、兄さん。まぁ、気持ちはわかるよ。火事に巻き込まれたくないならこの地方から離れたほうがいいぜ。」

「あー、うん。そうするよ。ありがとうね」

 そういって親切なお兄さんに手を振って、野次馬の一団から抜け出す。

 さて、これからどうしようか。

 お兄さんの言うとおりこの地方から抜けるほうがいいのはあるのだが、ここから歩きだと早くて五日は掛かるし、馬車を捕まえようにも、そもそもこの辺は馬車の通りが少ないという話を聞いている。

 まぁ、だから好奇心が向くままに、どんな街なんだか見てみたくて立ち寄ったわけだけど。

「───ちょーいと、そこの色男さーん? お話いいっすかねー。」

 ………元々、働きすぎだから休暇がてらに一人旅でもしてきたら? なんて言われて、なんとなくその気になったから出てきたようなもんだし、特に目的もないしでどこに行こうがあんまり変わらないっちゃ変わらないから───

「って、無視すなーっ!!」

「うぉあ!?」

 えっ、何!? って思って大声のした方を見れば、俺の横にいつの間にか、………多分女の子? が一人、立っていた。

 歳は見た目上わからないが、少なくとも若いだろうな、とは思う。見た目上は。この世界は年齢と見た目がそぐわないこともあるから微妙だけど。

 丸いレンズの眼鏡が特徴の、背が低い女性(に見える)。

 橙色の髪の毛は手入れしているのかわからないほどにぼさぼさで、正直女性と断定するなら色気のかけらもなく、見た目に気を使っているようにはあまり見えない……というタイプ。

「あー、えっと……何? オレになんか用?」

「用があるから声をかけさせてもらったんすよ。貴方、王都リューンの宿屋『こもれび』のイーハイ=トーヴさんっすよね?」

「人違いでーす」

「あんた、自分の知名度知らないっすか? しかもそのくっそ目立つ格好でそれは無理があると思うんすけど」

「………え? なんか目立つ?」

「あ。やば。この人完全に自覚ない顔してる。」

「………まぁ、うん。そういうこともあるでしょ。じゃ、そういうことで。ご指摘ありがとね」

「あ、どもども………。って、ちっがーーーう! なんで話を雑に切り上げようとするんすか!?」

「だって……絶対面倒事だなー、って思ったし。仲間から『お前はお人好しがすぎるから自重しろ』って怒られてるし。」

「仲間から言われるレベルはちょっとどうかと思うっすよ………。」

「あ、やっぱり? じゃあそういうことだから……」

「面倒事なのは認めますからぁぁ!! 話だけでも聞いてもらえないっすかねせめてぇぇ!?」

「泣き落としはかっこ悪いぞー」

「雑ッ! この上ないくらいツッコミが雑! 股下冷えるレベルで心こもってないっす!」

「そこはまぁ………。君に砕くほどの心とか、今のところないから……」

「それもそうっすね………、分かった、分かりました、ご飯奢りますのでホント話だけでいいんです。お願いします。聞いていただけませんか……。」

「飯か……。うーん、それなら………まぁ、聴くだけなら………」

「ありがたいっす! ここの村の外れに良い店あるんすよ! そっちに行きましょうか!」

 ………聞きたくないんだけどなー。

 そう思いながら、オレは仕方なく意気揚々と前を歩き出した小さな背中を追いかけるようにして足を動かした。



      



「────で。『精霊協会』の人が、オレに何の用なワケ?」

「あれ? なんで分かったっすか?」

 案内されたレストランで席について、お互いの食事が運ばれてきたのを確認してから、オレは彼女(?)に(とっとと事情を聞くために)そう切り出した。

 彼女(?)が『精霊協会』の人間だと気がついて指摘してやれば、彼女(?)はあっさり認めて、首を傾げてみせた。

「腰布の留め具の飾り。それ、支給品だろ?」

「はー、目敏いっすね。流石、名の売れてる冒険者っす。おみそれしましたよ」

「そりゃどーも」

「まぁ、そういうことっす。『精霊協会』からの正式なっていうか、公的な依頼って考えてくださって結構ですよ」

 オレは彼女(?)の言葉を聞きながら、ステーキにナイフを通す。

 それを見て、彼女(?)も目の前で湯気を立たせるムニエルに手をつけ始めた。

「公的な依頼なら、わざわざオレのところに来なくても、直接うちの宿に出せばいいじゃないか?」

「えー、まぁ。出しに行きましたよ。貴方ご指名の依頼として。そしたらそこのマスターさんに、『イーハイへの依頼なら、あいつは休暇中だから。受けるかどうかは本人に決めさせろ』と言われましてね」

「親父さん………せめて止めてくれよ……。うちのチームの他の精霊術師には声はかけなかったの?」

「実力としては申し分ないですが、知名度が違うっす。ボクらの依頼には知名度も必要な要素でしてね」

「…………それ、オレのこと囮にしようとしてない?」

「ぶっちゃけ、そーっすね」

「その時点で考える余地ないと思うけどなー」

「金貨二枚ッ! 金貨二枚分もするステーキ奢らせといて話を最後まで聞かないとか無しっすよ! 無しッ! 銀貨にしたら千枚ッ! 駆け出し冒険者の受けるゴブリン退治の報酬より銀貨四百枚も高いモン食っといて!」

「それはすまん」

 あ、このステーキ美味しい。

 値段が金貨二枚というだけあって、食べたことがないレベルで美味しい。身はしっかりしてるのに口の中で溶けるように崩れる肉なんてなかなか無い。

 メニューで見たが、この村から北東にある街の、この地方唯一の牧場で育つ牛の中に希少なタイプの脂質を持つ牛が生まれることがあるんだそうで、その牛の特別美味しい部位を調理したものなんだとか。

 そんな経緯故に殆ど出回ることのないものなんだが、たまたま運が良かったのかちょうどその肉が入った日に来れたらしくメニューの下の方に急遽貼り付けられたっぽい手書きの文字が書かれたメモ用紙を見てそのまんま頼んじゃったわけだけど。

 奢ってくれるって話だったし金額見ないで頼んだら値段が金貨二枚だったってだけだ。

 というわけで値段についてはオレは悪くない。うん。必要経費ってやつだ、きっと。

「────それはさておき、っす。そういえば名乗ってなかったっすね。ボクはご指摘の通り『精霊協会』から派遣された人間で、リョウ=ツクシ。ま、精霊研究家の一人っす。適当にリョウって呼んで頂ければ。」

「リョウ、ね。了解。それで?」

「最近ここら一帯を騒がせている『放火犯』の話はさっき街の人から聞いたっすね?」

「そこからいたのか、君。……いるかも? ってくらいの話だったけど?」

「『かも』、じゃなくて『いる』のは確定っす。」

 リョウ、と名乗った少女(?)は声を小さくした。

「………なるほどね」

 市民に過度な不安を与えないための情報操作だ。

 多少国や街を預かる警備兵の類の信用度は下がるが、『意図的に人様の家を無差別に燃やしている犯人が地方の何処にいるか分からない』と言われるよりは、『精霊が悪さをしてるかも』とか『何かの祟りかも』とか、或いは『何かの魔物の仕業かも』、くらいではっきりと分からないまま話が済んでいたほうが気分的にマシ………という感覚があるらしい。

 オレからするとどれが原因だろうと似たようなものに感じるし、どの道どこにいようと危ないものは危ない気がするが、『その程度の噂』で済んでいることは安心に繋がるようだ。

 明日は我が身、という感覚がそれで薄れる理由はやっぱりよくわからないけど。

「………で、それと精霊協会になんの関係があるの? 精霊を使って燃やしてるとか?」

「えーと。……その。イーハイさんも精霊の生じ方はもちろんご存知ですよね?」

「そりゃあ、一応。精霊術師の端くれだし。」

「端くれ……あ、いや、なんでもないっす。では、通常の生じ方と違う方法で現れる精霊のことは?」

「勿論。エネルギー召喚だろ?」

「その通りっす」

 精霊とは、本来は世界の至るところに───というか、どこにでもいる種族であって、そうではないという、ちょっと曖昧な存在だ。

 その本体自体は『精霊界』にあり、例えば火の精霊であれば、火がよく燃えているところや火山とか、自分の属性に近い要素が強い場所に自分から自然に現れることができる。

 精霊術師は本来そうして現れる存在と契約して、魔術的な繋がりを持ってその場に呼び出すことのできる職業のことをいう。

 端的に言うと、精霊との契約は『扉をノックしたら出てきてくれるような友人関係になる』みたいな感じらしい。

 その契約召喚とは別に、精霊をその場に生じさせる召喚方法───エネルギー召喚というものが存在する。

 これは自然的に生じにくい精霊を呼び出す為の召喚方法で、例えば天候の問題で一時的にしか自然に現れることができない『雷』の精霊などが該当し、何かしらの方法で電気を発生させてそこから呼び出すというものだ───が。

 火の精霊や水の精霊などのポピュラーな精霊もこの方法で呼び出す事は可能である。

「…………って言っても、エネルギー召喚は……言い方悪いケド……家一個焼くくらいじゃ効率悪いし、何よりそもそも術師がいなきゃしょうがないじゃん」

「言うとおり。……とまぁ、そのへんはイーハイさんには説明するまでもないんですが……」

「…………いや、ちょっと待てっ!?」

「お、もしかして分かったっすか?」

「まさか、『人間の魂』を使うタイプの精霊召喚しようとしてるとかじゃないよな!?」

「残念ながら御名答です」

「………………うわぁ。嬉しくない。」

「そしてそんな貴方に朗報なんですが、その召喚について書かれた古代の魔導書がその放火魔に盗まれたんですよねー」

「しっかりきっかり大事じゃん………」

「だーから遠路はるばるあんたに依頼しに来たんじゃないですかー! あんたさっきから自分の知名度知らなすぎなんですってば!」

「えっ!? 逆ギレっ!?」

「とーにーかーくー、ですね。そう、所謂……生贄召喚ってやつですよ。それをやろうとしてるのが件の放火魔の実態っす」

「最悪じゃないか」

「最悪も最悪っすよ。しかも、召喚しようとしてるのはよりにもよってあの『クトゥグア』の眷属っす。だから人の魂が入り込んだ純度の高い炎が必要なんですよねー」

「それ、最悪通り越して災厄っていうんじゃ……」

「です。流石にただの火遊びや気の所為にできないんすよ……」

 火遊びで燃やされる家ってなんだよ……って思ったが、ツッコまないことにしておいた。

 しかし、思ったよりも大事なのはさっき言ったとおり確かで、エネルギー召喚で呼び出されるような精霊は基本的に精霊の中でも上位の存在に限られる。

 オレも詳しいことは知らないが、『クトゥグア』というのは所謂炎の神に該当するその一柱で、かつ、生物にとっては滅ぼす側の神なだけあってありがたくない存在だ。

 そのクトゥグアの眷属である炎の精霊の召喚というのは───人間からすると神族レベルのものを呼び出してることになる。

 当然のことながら、そんなものをマトモに相手にしようものなら、殆ど確実に灰すら帰ってこない最後を迎えかねない相手だと言えてしまう。

「………それで、さっきオレを囮にって話だったけど。何がどうしたらオレがその危ないヤツを召喚しようとしてる危ないヤツに追いかけられることになるんだ?」

「え? それはさっき言ったやつのためっすよ」

「………さっき言ったやつって?」

「さっきも言いましたけど、クトゥグアの召喚には純度の高い魂が炎の中に入り込んでないといけないっす。純度の高い魂というのは色んな形がありますが、中でも人々から『英雄』と称えられる魂は向こうの世界だと格好のエサなんすよ」

「………………………………………はい?」

「でーすーかーらー、精霊も誰もが認める魂のほうが寄り付きやすいってことっす。それだけ人の心を動かす精神力を兼ね備えた魂に惹かれるのは彼らも変わらないってことっすよ」

「……………これ、褒められてるんだよな、オレ」

「精霊協会を上げてのこの上ない貴方への称賛っすよ。依頼内容が『だからちょっとエサになって♡』ってだけで」

「そんな前後が繋がってない称賛と依頼あってたまるか、バカタレこの!?」

「やっぱダメっすか」

「ダメっていうか反応に困る!!」

「えー、でも有名なあんたの呼び名よりは反応に困らないと思うっすけど」

「え? 呼び名?」

「あんた、巷だと『うんこ』って呼ばれてるっすよ」

「罵倒じゃん!? なんかもうなぁーんにも考えてない罵倒じゃん!! 何それ!?」

「え………『運命をコークスクリューパンチで捻じ曲げる』……略して、うん───」

「ンな訳わかんねー認識で人の呼び名『うんこ』にするやつがあるかっ!? それ言いたいがためにどっかの誰かが考えた悪ふざけだろーが!?」

「ボクが広めたわけじゃないから知らないっすよ!?」

「ってわけでっ! この話は無かったことにしてくれっ!」

「どんなドサクサな断り方っすか!? ちょっと待って下さいよ、神と大差ない力を持った精霊なんてもう、この世界じゃイーハイさんくらいしか──────」

「──────誰かぁッ! 手を貸してくれ──────!!」

 ──────勢いよく開かれたドアの音と共に聞こえた焦りの声に、レストランの中が一瞬で静まり返った。



(続く)

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