高嶺の令息
「本日は父と母の葬儀に参列していただき、心より感謝しております」
墓地から移動してきた喪服姿の一団に、飲み物と軽食を自らの手で振るまいながら、ヒューバート様は愁いを帯びた榛色の瞳を伏せられました。
「突然の馬車の事故で、僕もまだ心の整理がついておりません」
こんな時ですが、わたくしは見とれてしまいました。おそらく、本日参列した女性のほとんどがそうだったと思います。
皆が悲しみに沈む彼を心配していた──わけではなく、若くして当主となった彼の妻の座を狙って、ギラギラと視線を送っていたのでございます。
わたくしは違いますわ。そのようなさもしい目で彼を見たりはいたしません。
だって、その必要がないのですからね。
ヘビントン侯爵家とは、王都での住まいが隣同士。わたくしはヒューバート様と幼なじみなのでございます。
亡くなった彼のご両親──前ヘビントン侯爵夫妻とわたくしの両親は、身分に差がありながら親友同士でした。
ヒューバート様とわたくしの兄クライヴ、さらに偶然にもヒューバート様の妹ミラベルとわたくしも同い年という、似たような家族構成だったこともあり、わたくしたちは家族ぐるみのお付きあいをしていたのです。
ですから、ヒューバート様と結婚するのはこのわたくしだという、確信がございました。
なぜなら彼は、いつもわたくしの部屋に遊びに来ては、こうおっしゃっていたのです。
「シンシア、僕は女性が苦手なんだ。でも君といる時だけは落ちつくんだよ」
そうして、わたくしの膝枕で安心したように眠ってしまうのです。これはもう絶対、わたくしのことが好きなのだと思います。
そんなわけで、黒いヴェールの陰からヒューバート様を食い入るように見つめる、鮫のようなご令嬢たちを見ても、わたくしはまったく焦らなかったのでございます。
葬儀が終わり、参列者たちは次々と引きあげていきました。
けれど、学院を卒業したばかりの若き当主を放ってはおけないのでしょう。
近しい親族の方々は皆、その場に残っておられました。
ヒューバート様は、王都から参列したわたくしたちステイプルトン一家を、前夜から領主館に泊めてくださっていたのです。
その日の晩餐も、親族の皆様と同席することになりましたが、どうにも空気が重たく、会話もはずみませんでした。
親族の方々は何か言いたげにヒューバート様を見ておられましたが、わたくしたちの存在を気にされたのか、結局口をつぐまれてしまったのです。
親族の集まりにお邪魔していることを、わたくしは申し訳なく感じました。
わたくしたち家族は今でこそ貴族と同じような生活をしておりますが、新興の身。起業して財を築いたとは言え、もとは平民あがりなのです。上流階級の中では下層にあたります。
ですから、親族の方々からあまり歓迎されていないような気がしたのでございます。




