表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

皮肉集

水の残響

作者: 秋桜星華

風邪、ある程度復活しました。

あと諸事情でパソコンが変わり、慣れない状況なので誤字脱字&読みにくい部分ありましたら言ってください

「ミレナ、塔の周りの掃除、よろしくね」


「承知しました」


 私が発していい言葉は、これだけなのです。


 私はミレナ。王城にある塔の清掃係をしております。


 王城の下働きというのは非常に格差が激しく、私のような底辺の下働きは上の位の下働きに気軽に声をかけることすらできない、それほどです。


 同じような位の下働き同士でも上にあがろうと必死なので仲良くするなんてもってのほか、そんな風潮もあります。泥臭い職業、それが下働きなのです。


 まぁ、お貴族様のそばで仕えている側仕えの方の足の指先にも及ばないのになぜこんなところで競っているのかと馬鹿らしくなってくるのですが。


 そんな立場で過ごしているので話す相手などいないのです。別にいいじゃないですか、心の中でだけでもこんなフレンドリーに話したって。


 さて、私が毎日掃除している場所は「処刑塔」という塔の周りで、いわゆる「水の災厄」と呼ばれる場所です。


 この塔の掃除という役目は非常に不人気で、毎年新人が先輩に押し付けられています。


 そんな場所を、今は私が担当しています。――自ら、進んで。


 この塔は数年前に、国家に混沌をもたらした「水の魔法師」の処刑が行われた場所なのです。


 私は下っ端なのでそこまで詳しいことを知っているわけではありませんが、その魔法師さんはとっても強い実力をお持ちの方だったそうです。魔法師は国家を恨んでいたため、死んだ後も呪い続けているのではないか――そんな噂がまことしやかにささやかれています。


 しかし、その噂は本当だったのかもしれません。


 私がこの場所を掃除するようになって、1年が経ちました。


 毎日、耳に水の雫がぽたり……ぽたり……と落ちるような音が響くようになったのです。


 聞いた人に恐怖感を植え付けるような、不気味な音です。


 最初は、気のせいかと思いました。


 次に、どこかに溜まった雨水が落ちているのかと思いました。


 ――でも、違いました。


 次第に雫の音が聞こえる時間が長くなり、ついには寝る前まで聞こえるようになったのです。


 ほら、今日だって、今だって……。


 それでも、私は誰にも言いません。言えないのです。


 どうせ、何かあって困るのは”あちら側”の方々ですものね。


 見ると、今日は塔の窓に影が見えました。


 ――あの人はまだ、ここにいるのです。


 そう、私たちの立場に唯一寄り添ってくれたあの方が。


 私は知っています。この音は、彼の優しさで、魂の残響だと。



 これが、私がここを掃除する理由です。

「その微笑みは、剣よりも」からの皮肉シリーズ(?)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓皮肉作品(?)はこちら↓
その微笑みは、剣よりも
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ