第7話『初めての対面』
次の日の放課後。
結愛と奏斗は県内にある大きな病院に行った。
県立白羽病院。県内有数の大きな病院だ。
結愛と奏斗は病院の静かな廊下を歩いていた。結愛は奏斗の後を追いながら、彼の妹である長谷川陽菜に会うことへの緊張感が次第に増していった。消毒液や薬品の臭いが、彼女の鼻孔を刺激する。
「神識、あまり緊張しなくていいからな」
奏斗が後ろから軽く声をかける。
彼の表情はどこか優しく、少し気遣っているようだった。
「うん……」
結愛は少し深呼吸をして、歩みを進める。
病室に到着すると、奏斗はノックをしてから静かにドアを開けた。部屋の中には、柔らかな光が差し込んでいた。白いシーツに包まれた小柄な女の子が、ベッドに横たわっている。
「陽菜、おはよう」
奏斗は穏やかに言いながら、部屋に足を踏み入れる。
陽菜ちゃんは少し顔を上げ、弱々しい笑顔を結愛に向けた。その目はどこか儚げで、少しだけ涙を浮かべているようにも見えた。
「はじめまして、神識結愛です」
結愛は一歩踏み出して、優しく自己紹介をした。
陽菜ちゃんは小さく頷き、まるで力を振り絞るようにして言った。
「わたしは長谷川陽菜です。こんにちは……」
結愛はその自己紹介に胸が詰まった。陽菜がどこからどう見ても、衰弱している。
「私は、陽菜ちゃんの力になるために来たんだよ」
結愛はにっこりと笑って言った。
陽菜はその言葉を聞いて、目を細めて小さく笑った。
「ありがとう、結愛さん……」
彼女は弱々しく返事。
陽菜とこんなふうに向き合って、何か力になれることを少しでも見つけられたらいいなと思っていた。
その後、しばらくの間、結愛と陽菜ちゃんは静かな時間を共有した。奏斗は優しく横で見守りながら、妹の体調に配慮していた。結愛は陽菜に少しでも心安らげる時間を提供したくて、何か話題を見つけては彼女との会話を続けた。
「陽菜ちゃん、音楽は好き?」
結愛が話しかけると、陽菜ちゃんは目を輝かせて答えた。
「はい……音楽を聴くと……ちょっと元気になります」
「そっか~、私も音楽を聴くのが好きだよ――」
それから、しばらく彼女とお話をした。好きな音楽のアーティスとや、アニメや漫画の話まで。楽しそうに話す2人の姿に、奏斗は微笑んだ。