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第4話『ストリートピアノ演奏』

 

 日曜日の午後、結愛ゆあ沙月さつきの誘いで一緒に出かけることになった。二人は普段通りに駅近くのカフェでお茶をしていた。学校の話でり上がっていた時だった。


「――まあ、この話しは置いといて。ねぇ、ねぇ」

 沙月が話題わだいを終わらせ。なんだか真剣しんけんな表情になった。

「ん?」

関内かんないに、ピアノがあるんだけど? 弾きにいかない?」

「う~ん……」

「嫌だ?」

「別にそういうわけじゃ……」

「わたしも弾くからさ。どう?」

「いいけど……」


 なんやかんや、促され。結愛達は関内に行く事になった。


♪♪♪♪♪

 

 関内駅の広場に設置されたそのストリートピアノは、時折通りすがりの人々が自由に弾いている場所で、落ち着いた空間が広がっていた。周りの人々がちらりと見守る中、沙月は早速さっそくピアノの前に座る。


「じゃあ、弾くよ!」

 

 沙月は楽しそうに言い、軽く鍵盤けんばんに指を置く。

 結愛も沙月の後ろで見守りながら、少しワクワクした気持ちが胸をよぎる。普段はいつも明るく元気な沙月だが、ピアノを弾いている姿はどこか落ち着いていて、表情にも真剣さが浮かんでいる。

 沙月が静かに演奏を始めたのは、人気アーティストの『砂糖さん』さんの『君へのラブソング』だった。その曲は、ピアノの旋律せんりつに込められた切ない思いと、優しさが同時に感じられる、美しいラブソングだった。結愛はいつの間にか心を打たれる。


「すごい……」


 結愛はうっとりとした表情で聞き入っていた。

 曲が進むにつれ、沙月の指先が鍵盤を軽やかに、時には力強く弾きながら、ピアノの音色ねいろが駅の広場ひろばひびわたる。周囲を歩いていた人々もその音色に引き寄せられるように足を止め、少しずつ観客が集まってきた。

 沙月は曲の最後に、少しだけ目を閉じて静かに演奏を終えた。


「ふぅ……終わった!」


 沙月は演奏を終えたことに満足まんぞくげな表情をかべ、鍵盤から手を離した。


 結愛は拍手を送りながら、


「沙月、本当に素敵だったよ! 私、感動しちゃった!」と笑顔で言った。


「ありがとう! じゃあ次は、結愛も弾いてよ!

 

 沙月はにっこりと微笑み、結愛にうながした。


「えっ、私?」結愛は驚いた顔をして一瞬戸惑う。

「でも、今日はちょっと自信がなくて……」

「大丈夫! あたしがいるから! それに、結愛の音楽には絶対に素敵な力があるって、わかってるから!」


 沙月は力強く言い、結愛をはげました。

 結愛は少し躊躇ちゅうちょしたが、沙月の後押しに背中を押されるように、意を決してピアノの前に座った。彼女は深呼吸をして、手を鍵盤に置く。


「じゃあ、私も……演奏してみるね」


 結愛はつぶやきながら、静かに指を動かし始めた。

 最初に浮かんだのは、人気アーティストの『青春ラビット』の『春、君に会い恋をする』だった。ポップミュージックだ。大丈夫だよね


『音楽の力、心を込めて』


 周囲の音が少しずつ遠くなり、結愛の世界はピアノの音だけで満たされる。彼女の指が鍵盤をすべり、かろやかなメロディーが広がった。

 それは、結愛が最近聴いたばかりの、人気アーティスト「青春ラビット」の『春、君に会い恋をする』という曲だった。ポップな旋律の中に、春の温かさと甘酸っぱいメロディーが心に響く。

 彼女はその曲を心を込めて弾きながら、音楽の力を感じ始めた。知らず知らずのうちに、彼女の気持ちはその曲と一体化し、純粋な想いが音に乗って流れ出す。

 すると奇跡のようなことがまた起きた。桜の花びらが、まるで音楽に引き寄せられたかのように舞い始めた。最初は少しだけだったが、次第にその量が増え、駅内がまるで春の桜並木さくらなみきのような風景ふうけいに変わっていった。


「わっ!  桜が!」


 沙月が驚きの声を上げ、周囲の人々もその美しい光景に目を見開いた。

 結愛は驚きながらも、演奏を続けた。すると、花びらが舞う中から、突然、金色の髪をした天使が現れた。


「えっ?!」


 結愛は驚き、演奏を一瞬止めた。1人の天使はその美しい羽を広げ、周囲を見渡しながら微笑んだ。


「あなたの音楽には力がある。心を込めて奏でたその音楽が、わたしを呼び寄せたの」

 1人の天使はそう言うと、舞台のように広がる駅の広場に降り立った。

 その瞬間、観客たちはスマートフォンを取り出してその光景を撮影し始め、駅内は一気に騒然そうぜんとした。


「結愛、もっと弾いて! 結愛の音楽を聴きたい!」


 沙月が急かすように、言われ、結愛は慌てる。


「え? 弾くの?」

「うん!」

「わかった……!」


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