結婚の知らせ
この邸の主ベルナール伯爵の書斎に向かう。
「失礼します」
「おお、来たか」
書斎にはベルナール伯爵、伯爵夫人、2人の愛娘アリーヌ嬢もいる。
「馬小屋で暮らしている下賤な者が来るなんて一体なにごとかしら」
「本当に汚らしい」
(もう、なんとでもいえばいい、事実だから。)
「まあまあ、家族なんだからそんなこと言うでない」
「家族?あの女の子供ですよ?」
「だまれ!」
伯爵の一言で部屋の空気が重くなる。
「お前に大事に話がある。」
大事な話と言われて一番最初に思うのは今以上に苦しくなる事だった。
「お前には嫁いでもらう。」
「え、」
(一体何で……)
「相手はジュール オベール公爵だ。」
私よりも早く2人が反応して
「公爵ですって!なぜ、アリーヌでははいのですか!」
「そうよ、私の方がふさわしいわよ!」
そんな2人を無視して公爵は
「式は3ヶ月後だ。」
「はい」
感情のない返事をして部屋を出る。
(どうせ、形だけの結婚。結婚の意味や理由を知ったところで私は何もできない。)
馬小屋に行こうとした時、
「お姉様!結婚おめでとうごさいます」
先程まで自分の方が相応しいと反対していたアリーヌが入り口で待ち構えていた。
「ありがとうございます。」
「結婚式とっても楽しみだわ!本当に」
アリーヌは不気味な笑顔をしている。
「失礼します」
何かされたら困るので早く行こうとするが、
足を引っ掛けられる。
そのせいで転んでしまう。
「本当に惨めで、式がうまくいくか心配だわ。でも私が結婚式を最高な式にしてあげるから」
フフフフと笑いながら上機嫌な様子で立ち去るアリーヌ。
(幸せなんて夢のよう…)
涙を落としながら馬小屋に向かう。
今自分にできることは馬小屋の隅で泣くことだけたった。
(私が本当にアリーヌと姉妹だったらこんなことにはならなかったのかな…)
私、イリス ベルナールは伯爵家の長女で、
ベルナール伯爵は私の実の父親で、私は前の妻、アナイス アンドレの娘だった。
毎日が幸せだったけど、お母様が亡くなり、幸せは壊れてしまった。
父は恋人のアリソンを妻にして、翌年アリーヌが生まれた。
アリーヌは美しい黄色の髪に美しい赤色の瞳で、愛想がありとても可愛らしかった。
私は邪魔者となり、使用人として生きることになった。
アリーヌとは腹違いの姉妹。だけど、お互い心から姉妹だと思ったことは一度もない。
アリーヌにとって私はお母様を悲しめた女の子供で最低な人。
私にとってアリーヌはお嬢様。
きっとこれからも変わらない。