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第7話 御前試合


 三時間後に広場で俺とバランドル将軍の御前試合が行われる事が正式に決まった。

 国王陛下が俺の実力を見定めたいと考えていた事もあり、俺の目論見通りすんなりと事が運んだ。


 その話を耳にしたユフィーアが血相を変えて俺の下へ駆けつける。


「マール様、バランドル将軍は性格に難がありますが剣の腕は確かです。マール様は剣での戦いはあまり得意ではないのでは?」


 ユフィーアの言う通り、俺は所詮レベル10の魔法戦士だ。

 一方のバランドル将軍は俺の見立てでは恐らくレベル70相当の腕はあるだろう。

 普通に戦えば俺が勝てる見込みは全くない。


 しかし御前試合ならば話は別だ。


 原作でも御前試合のイベントがあるが、その時は一対一の格闘アクションに切り替わる。

 レベルやステータス、装備している武器や防具の数値は一切考慮されない。


 そしてこのバランドル将軍は大剣特有の隙の大きい動きと単調な攻撃パターンの為に、攻略が容易なキャラなのだ。


「平気平気、負けるつもりなら手合わせなんて持ち掛けないよ。ユフィーアは俺が信じられないかい?」


「いえ、そう言う訳では……分かりました、私はマール様を信じます」


 俺の力強い言葉にユフィーアは先程までとは打って変わって落ち着きを取り戻し、引き継ぎ作業に戻って行った。


 バグのせいとはいえ、余程俺の事を信頼しているんだろうな。



◇◇◇◇



「それではこれより冒険者マール対バランドル将軍の御前試合を行う!」


 三時間後、王宮前の広場で御前試合の開催が宣言され、グーラー陛下が見守る中で俺とバランドル将軍が対峙をする。 

 その周りには王宮で働く者や、御前試合の噂を聞きつけた騎士達が集まってきた。

 ユフィーアの姿も見える。

 王宮御用達の商人はその後ろで屋台を開き、焼き鳥やアルコール飲料を売り出す始末だ。

 商魂逞しいな。


「始め!」


「おらああああああ! 死ねええええええええい!」


 審判の合図と同時にバランドル将軍が大剣で斬りかかる。

 その動きはゲームと同じく単調で、右、左と交互に剣を振り下ろすだけだ。

 それが分かっていれば目を瞑っていても避ける事ができる。


「何故だ、何故当たらぬ!?」


「おお、あのボウズなかなかやるじゃねえか」

「さすがあのユフィーアが認めただけの事はある」


 バランドル将軍の斬撃を危なげなくかわし続ける俺の姿に、この試合を見物している騎士達の俺を見る目も変わってきた。


 しかし避けているだけでは勝負はつかない。

 そろそろ攻撃に転じるとするか。

 俺はバランドル将軍が剣を振り下ろした瞬間に思いっきりジャンプをし、その頭上から剣を振り下ろす。


「甘いわ小僧!」


 バランドル将軍は大剣を振り上げ、俺の剣を受け止める。


 ──いや、受け止めたつもりだった。


「ぐあああっ!?」


 その瞬間、バランドル将軍の後頭部に衝撃が走る。


「な、なんだ!? 私は今確かに奴の剣を受け止めたはず」


 バランドル将軍は何が起こったのか理解できず、目を丸くしている。


 まあこの世界の人間には分からないだろうな。

 原作にはあるんだ、()()()が。


 めくりとは、相手をジャンプで飛び越えてガード方向が左右反対になる瞬間に攻撃を仕掛けるテクニックだ。

 バランドル将軍は対応できずに俺の一撃をまともに受けた。


「安心して下さい、みねうちです」


 バランドルはこれでも将軍だ。殺してしまうと後々問題となる。

 俺は殺してしまわないようにあえてみねうちしかしない。


 バランドル将軍が怯んだところで懐に潜り込み、下から剣を振り上げる。


 俺の剣はバランドル将軍の顎にヒットし、バランドル将軍の意識が一瞬飛びかける。


「くっ……きっ貴様ああああああ!」


 しかしバランドル将軍はその一撃に耐え、激高して大剣を振り下ろす。


 バランドル将軍の必殺剣、カタストロフブレードだ。

 その威力は鋼鉄の鎧や兜ごと相手を粉砕し、その衝撃波で触れずとも真下の地面が抉れる程だ。


「マール様、危ない!」


 ユフィーアの叫び声が聞こえる。

 今、俺の剣は振り上げた勢いのまま天を向いている。

 このタイミングでは俺はバランドル将軍の大剣を受け止める事もできず、もちろん避ける余裕もない。


 誰もがそう思っていた。


「ぐべっ!?」


 しかし次の瞬間、再度俺の剣がバランドル将軍の顎にヒットし、その衝撃でバランドル将軍は真上に吹き飛ぶ。

 俺は剣を振り上げた勢いで真上にジャンプをする。

 見物人達の目には、俺の身体を覆う昇竜の形をしたオーラがはっきりと見えただろう。


 これぞ原作でマールが使用する必殺技、ライジングドラゴンソードだ。


 しかし明らかに俺はカウンターを仕掛けられる体勢ではなかった。

 観客達は何が起きたのか分からないといった表情をしている。


 完全に不意を付かれたバランドル将軍は白目を剥いて伸びていた。

 俺は地面に横たわるバランドル将軍を見下ろしながら呟いた。


「覚えておくといいですよ。これが()()()()()ってやつです。まあ聞こえてないだろうけど」


「そ、そこまで!」


 審判の宣言で、俺の勝利が確定した。


「う、うおおおおおおおお」

「まさかあのバランドル将軍が一方的にやられるとは……」

「あのボウズ、すごいぞ!」


 一瞬の間をおいて、観客達の歓声がこだまする。

 俺が王宮の人達に認められた瞬間だ。


「マール、見事であったぞ」


 この勝利に俺はグーラー陛下からお褒めのお言葉を頂く。


 これ以降、バランドル将軍は俺の実力を認めざるを得ず、しぶしぶながら言う事に従うようになった。



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