表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/72

第55話 ヒロイン幼すぎ問題

 ユフィーアはいったいどこへ行ってしまったんだ。

 周囲を見回すがどこにもいない。


 もしかすると転移バグで遥か遠くの地へ飛ばされてしまったのかもしれない。

 だとしたら早く探し出さないと……。


 いや、まだ結論を出すには早すぎる。


 他にも思いつくバグはいくつもある。

 キャラクターが透明になってしまったり、見た目が別のキャラクターに変わってしまうバグもある。


 その場合はこちらからユフィーアを見つける事は困難だが、ユフィーアの方から俺に何らかのアクションを起こしてくれるはずだ。

 だからさほど深刻ではない。



「マールにぃに……」


「ん?」


 誰かが俺の服の袖を引っ張る。


「ユフィーアか?」


 俺は引っ張られた方を見るが誰もいない。

 これは透明化バグの方かな?


「マールにぃに。した……」


「下?」


 俺は視線を下に向けると、そこには可愛らしい女の子の姿があった。

 年齢は5歳ぐらいだろうか。

 こんなところにひとりでいるなんて、迷子かな?


 ……いや違う。


 この透き通るような蒼い髪と深緑の瞳には見覚えがある。

 そしてこの少女が身につけているまるでサイズが合っていない服もだ。


「まさか……ユフィーアなのか?」


 少女は涙目でこくりと頷く。


 これは予想外だ。

 バグによってユフィーアが子供になってしまったらしい。


 原作ファンタシー・オブ・ザ・ウィンドでは全てのキャラクターに年齢が設定されている。

 普通にプレイしていれば作中でクリアまでにかかる時間は2年程度なのであまり気にならないが、わざとシナリオを進めずにスローライフプレイを楽しんでいるとキャラクターは年を取り、徐々に体力が衰えていきやがて寿命を迎える。

 魔族の寿命は人間よりも遥かに長いので、主人公が死亡した時点で魔王軍の勝利となりバッドエンドとなる。


 あえて寿命ギリギリでラスボスに挑むチキンレースプレイを行う変人クラスタも存在している。


 ユフィーアの年齢が若返っているという事は、ステータスもその頃の状態まで戻っているはずだ。

 近い内に最後の四天王である屍術師アルパヌとの戦いが控えているが、ユフィーアがこんな状態ではとても戦えないだろう。

 早く元に戻さないといけないがその方法が分からない。


 「おーい、マールじゃないか。こんな道の真ん中で何やってんだ?」


 たまたま通りがかった同業者のパーティが、途方に暮れている俺に気付いて声をかけてきた。


「ん? 誰だその子は?」

「よく見るとどことなくユフィーアさんに似てないか?」

「本当だ。……て事はあれか。マール、お前の子供か?」


「そんな訳ないだろ。ユフィーア本人だよ。魔族の呪いで小さくされてしまったんだ」


「なんだって? それは一大事じゃねえか」


 俺は今では魔族の呪術研究の第一人者という事になっている。

 例えでたらめでも疑う者はいない。


「それで、元に戻せるのか?」


「分からない。これから調べてみる」


「そうか頑張れよ。俺達にも手伝える事があったら言ってくれ。有料だけどな!」


「しっかりしてんな。でも力を借りたい時はお願いするよ」


「おう。それじゃあな!」


 俺は同業者と別れると、ダイヤモンドゴーレムの破片の売却は後回しにして冒険者ギルドへ戻った。

 まずは現状の把握が優先だ。

 受付嬢に事情を説明し、ギルドの奥の部屋で現在のユフィーアのレベルの鑑定を行う。


「ええと、今のユフィーアちゃんのレベルは……30ですね」


「30……」


 5歳児として考えれば異常なほど高いが、冒険者としてはまだまだ駆け出しに毛が生えた程度のレベルだ。


 現在使う事ができる魔法やスキルも確認してみたが、大半のものを忘れてしまっているようだ。


 不幸中の幸いだったのが、ユフィーアは今までの記憶を完全には失っていないという事だった。

 俺の名前はもちろん、一緒に行動していた事も覚えていた。


 しかし精神年齢は5歳児のそれに戻っている。


「にぃに、にぃに。だっこ」


 ユフィーアが俺の服を引っ張って抱っこするように催促する。


 断ると泣き出したので、俺はユフィーアを抱きかかえてあやしてあげた。


「すぅ、すぅ……」


 やがてユフィーアは泣きやみ、そのまま俺の腕の中ですやすやと寝息を立て始めた。


「俺、何をやってるんだろう……まるで育成シミュレーションゲームだ」


 これではクエストを進める事などとてもできない。

 早くユフィーアを元に戻す方法を探さないと。


 俺の知る限り、キャラの年齢を意図的に変更するバグ技は存在しない。


 だとしたら戻す方法はただ一つだ。


 もう一度シンディア姫に会いに行こう。

 何かの拍子に元に戻るかもしれない。


 俺は原作ではシンディア姫との接触を避けていたが、裏を返せば普段はどの辺りに出没をするのかを把握しているという事である。


 王宮内の自室にいる事が一番多いが、勇者とはいえ平民の俺が王女の部屋に通して貰える筈がないので、ここはまず候補から消える。


 次に多いのは王都の裏路地だ。

 出現するのは主に夜。

 ここにはならず者達が(たむろ)しているので、レベルが低い者はうかつに近寄らない方が良い。

 レベル10の俺などもっての外だ。


 そんな危険地帯にシンディア姫がやってきても平気なのは、バグによるものだろう。


 原作では全てのキャラクターにHPというパラメータがある。

 攻撃されれば当然HPが減っていき、0になれば死ぬ。

 民衆だろうが王様だろうが死ぬ時は死ぬ。

 しかしどういう訳かシンディア姫にはHPという概念そのものがない。


 HPが表示されていないだけで実は倒せるんじゃないかと考えたプレイヤーもいた。

 そのプレイヤーはバグを含めてありとあらゆる手段でシンディア姫に挑んだが果たせず、最終的にはバグによってセーブデータが破壊されてしまったという。


 他のプレイヤー達はその出来事をシンディアの呪いと呼び、それ以降彼女に挑もうとするプレイヤーは現れなかった。




 その次の候補地となると王都の外になる。


 海の真ん中にある無人島だったり、とあるダンジョン内の一室だったり、崖の上だったり、墓地だったり、露天風呂の中だったり、42番目の裏ワールド内だったりと様々だ。

 まさしく神出鬼没としか言いようがない。


 今のユフィーアを連れて王都を離れるのは難しい。

 となるとやはり危険を承知で路地裏で彼女が現れるのを待っているしかなさそうだ。

 俺一人では心許ないので、冒険者ギルドで協力者を募る事にした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ