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第22話 おいでよ! 開拓の村


 王都から遥か北西、広大な自然に囲まれたその場所に人口百人程の小さな開拓村がある。

 今回は冒険者ギルドのクエストではなく、国王陛下からの直々の依頼を受けてその村へ向かっている。


「マール様、村人の様子がおかしいので調査をして欲しいとの事ですが、一体何が起きているんでしょうか。宰相のモヘーテ卿も実際に見てきてくれの一点張りで要領を得ません。まさか伝染病の類では?」


「ユフィーア、俺もモヘーテ卿と同意見だ。村へ行ってみれば分かると思うよ」


 俺は村で起きている現象どころか、その原因についても既に見当がついている。

 しかし口で説明するのは難しい。

 モヘーテ卿と同じく、実際に()()()()()()としか言えない。


 ことゲームにおいては、開拓村という存在は実に便利だ。


 未知の病原菌や、付近に発見された遺跡の探索、貴重な鉱物の採掘、遥か昔に封印された魔物の復活など、様々なイベントを無理なく組み込む事ができる。


 魔物の襲撃イベントはお約束で、見事撃退するものもあれば、逆に村が滅ぼされるパターンもある。


 そしてゲームが進むにつれて村が発展していく場合も多い。

 原作ファンタシー・オブ・ザ・ウィンドもそうで、一部のNPCに開拓村の事を紹介するとそこに引っ越してくる事がある。


 人口が増えるにつれて村が発展していき、住民によってその村の様子は大きく変わっていく。

 商人を多く集めれば商会が作られ、技術者を多く集めれば大きな工房が出来上がる。

 傭兵を集めれば傭兵ギルドが設立される事もある。

 どんな村を作るのかはプレイヤー次第だ。


 開拓村に引っ越してくるNPCは人間だけではない。

 世界中の動物達を集めて動物だけの村を作ったりしてもいい。


 村の中に自分の家を建てる事もできる。

 冒険をほったらかしにして、村の中でのんびりスローライフを送るプレイヤーも後を絶たない。


 ネットワーク通信を利用して他のプレイヤーの村へ遊びに行く事もできる。

 その村でしか売っていないアイテムを購入したり、株の売買で利益を出したり、住民をスカウトする事もできる。


 特に一部の住民は人気があり、それを巡ってリアルマネーが動く事もある。


 これだけで一本のゲームになりそうな作り込みだが、本編と関係のないところに無駄に力を入れているのがファンタシー・オブ・ザ・ウィンドの悪いところだ。

 こういった要素が多ければ多い程それに比例してバグが生まれる確率が上がる。

 このゲームがバグだらけなのは、デバッグ作業が追いつかなかったからに他ならない。


 そして村人達がおかしくなった原因は間違いなくそのバグだ。



 村に到着したのは昼過ぎだ。


 大人達は昼ごはんを終えて仕事に取り掛かる頃だ。

 広場を見ると子供達がで遊んでいる。


「うーん、特におかしなところはありませんね」


 ユフィーアは肩透かしを食らったようだが、このバグの本質は見た目ではない。

 俺は村の入り口に立っている男性に話しかける。


「こんにちは、いい天気ですね。俺達は王都からやってきました」


 男性はにこやかな笑顔で応える。


「げ……げへへ。魔王様に逆らう愚か者どもめ、貴様のはらわたを邪神復活の生贄とせん」


「なっ!?」


 ユフィーアは咄嗟に剣を抜こうとするが、俺はそれを手で制する。


「止めろユフィーア。彼は俺に挨拶を返しただけだ」


 通常、ゲームでは村の入り口にいる男性は挨拶をした後に村の名前を教えてくれるという大切な仕事を持っている。


 彼もその例に漏れず、自らの役割を全うしようとしたつもりなんだろう。


 ただ、ちょっとセリフがバグってるだけなんだ。


「げへげへ、魔王様の部下となるならお前に世界の半分を与えよう……」


 男性は笑顔のまま軽く会釈をして俺達と別れる。


 続いて村の広場で遊んでいる子供達が俺達に近付いてきて話しかける。


「この私が貴様なんぞに……うごごごぼぁー」

「だが覚えておくがいい、私を倒しても第二第三の魔王が……」

「わーい、でいりぐちらー」


 セリフがバグっているのは子供達も例外ではない。

 その異様な光景に顔を引きつらせているユフィーアを横目に、俺は笑顔で挨拶をする。


「こんにちは、皆仲良く遊ぶんだよ」


 子供達は頷くと広場の方へ走りだし、こちらに手を振りながら言う。


「くくく……奴は四天王最弱……」

「お前との婚約を破棄する! お前のような悪女は国外追放だ!」


 俺も子供達に手を振って見送る。


「あのくらいの子供って元気があって可愛いよな。ユフィーアは子供は好きかい? ……ユフィーア?」


 振り向くと、ユフィーアは茫然と突っ立っている。

 そして少し間をおいて正気に戻り、捲し立てる。


「な、何なんですかさっきから!? マール様、この村の人おかしいですよ!」


「知ってる。その調査に来たんだろう?」


「そうですけど……想像してるのと違ってました。どうしてそう平然としていられるんですか?」


 そりゃあ俺からしたら予想通りだからとしか言いようがない。


 ユフィーアにも実際に体験して貰った事だし、これで説明がし易くなる。


 この村で起きているのは、聞いての通り村人のセリフがおかしくなるバグだ。

 ちなみに本人達はそれに気付いていない。


 開拓村は進行によって異なった発展をしていき、その過程毎に別々のセリフが設定されている。

 しかし、村の発展模様はプレイヤーによって千差万別。


 そして村がゲームの開発スタッフの予期せぬ方向に発展した時、村人は何を話せばいいの分からなくなり、バグって他のキャラクターのセリフをしゃべってしまうのだ。


 村人が突然勇者と対峙した魔王のセリフを吐いてみたり、悪役令嬢との婚約を破棄した王太子のセリフを話してしまっているのはその為だ。


 でもまあ、このバグも便利な使い方があるのだが──


「マール様、早く何とかしましょう! これも呪術なんですよね?」


 ユフィーアがせっつくが、このバグを解決するのはかなり大変だ。


 俺はまずどの方法で解決しようかを考える。


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