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次で本編はいります、よろしくお願いします~!
スグリは私と同じく『黒』と紫紺の瞳を持つ美しい人だった。
同じ苦しみを味わってきた私達はすぐに意気投合し、黒髪差別を無くしたいという志の元必死で努力した。
同じく王立学園に通う王侯貴族たちの目は冷たく、時には心無い言葉を投げかけられたり、典型的ないじめをうけることもあった。
それでも私は耐えられた。
私の横にはスグが居るのだから。
程なくして私達は恋人になり、それからまたすぐ、2人揃って王命によって王城に呼び出された。
王国の魔道士に囲まれ、身動きの取れない状態でこの国の王に告げられたのは魔王討伐の命令だった。
「王子殿下達も一緒だってね。」
「うん。緊張するけど、武功をたてればもしかしたらほら、私とスグの扱いだってちょっとはよくなるかもしれないし!それにこれからで黒髪で生まれてくる子達の処遇も良くなるかも。」
「…そうだね。大丈夫、僕とリアなら倒せる。」
魔王も魔族も人間である、という事実は見て見ぬふりをした。
魔王討伐の旅に参加するのは、
私…リナリア=チグリジアとスグ、騎士団長の息子、そしてこの国の第二王子殿下、最後に聖女と呼ばれる女だった。
基本的には私とスグのペア、そしてあとの3人と別れて行動することになった。
騎士団長の息子も、聖女様も、魔族に近い…いや、魔族にしか見えない私とスグが怖いらしい。
唯一王子殿下だけは責任感かなにかで私たちによく話しかけてきたが、すぐ騎士団長の息子と聖女様に連れられてどこかへ行ってしまうことが多かった。
道中、魔族を倒したのはほとんどが私とスグだった。
魔力の多さにより単純な身体能力でも王子たちより私たちの方が上だったのだ。
ほとんど活躍しなかった騎士団長の息子と聖女様は酷く恐ろしい目付きで私たちを睨んでいた。
彼らはプライドが高く、迫害されている黒髪の私たちより活躍できないのがよっぽど気に食わないらしい。
私たちを怖がっているのか見下しているのかよく分からなかった。
…恐らくどちらもなのだろう。
王子殿下はずっとなだめ役にまわっていた。
この中で1番身分が高いというのにご苦労なことだ。
だが私たちも活躍しないわけにはいかない。
騎士団長の息子、聖女様、そして王子殿下、皆身分の高いものばかりで彼らを戦闘の最前線に立たせるなど出来るわけがないのだから。
魔族はみな、嬉しそうに笑みを浮かべて死んで言った。
魔力が高いものは自死できない。
圧倒的に、それよりも魔力が多いものから力技で潰されないと、死ねないのだ。
長い生に飽き、絶望し、神に愛されたものたちは喜んで死んでいった。
アレが私たちの成れの果てだ。
死にたくない死にたくない死にたくない
私は本当に死にたくないのだろうか。
けれど、スグが隣にいる限り、私は死のうとは思ってない。
死のうとは思っていないけど死にたくない訳では無い?もうよく分からない、考えるのをやめた。
ついに魔王のもとへたどり着いた。
魔王はなんの抵抗もしなかった。
金の瞳を輝かせる魔王は建国記で見た賢者の特徴にそっくりだった。
だからといって、何も無いのだが。
王子たちは喜んだ、ついに悪を滅したと。
トドメをさしたのはスグだし、途中もずっと何もしていなかったくせに、都合のいいものだ。
魔族の生き残りはまだまだいるだろうが、魔王を殺した今、怖いものなどないと。
魔族はまだまだいるのだから滅したという表現はおかしいんじゃないか、そんな揚げ足取りじみた考えが頭に浮かんだ時、私の胸を貫いていたのは聖女様の持つ短剣だった。
「かぱっ」
マヌケな音をだして私の口から血が溢れ出
る。
「やった…やったわ!!この!このッ!殿下を惑わす売女がッッ!さぁ!ヘンルーダ様、トドメを刺して!!」
どうやら騎士団長の息子はヘンルーダという名前らしい。
痛い、熱い、私が少し腕をあげれば魔法が発動し、聖女様も、騎士団長の息子も跡形もなく消え去るというのに、それなのに何故か抵抗する気は起きなかった。
もしかしたら私は生きたかった訳では無いのかもしれない。
だってどうせ生き続けでもあの魔族たちのように…魔王のように…
「何をしているんだッ!!?」
王子殿下の焦った声が聞こえる。
王子殿下が追いつくのがはやいか、騎士団長の息子の剣が私の首に届くのがはやいか。
「殿下!!ダメです、コイツらは、魔族と同じ!!!生かしておくわけにはいかない!」
「そうです、殿下!!コイツらは魔王を倒した。魔王より力を持っているんです、今殺しておくべきだ!!」
「お前たちは何を言っているんだ!!そんなことはお前たちが決めることではないし、彼らは魔王討伐に協力してくれた、れっきとした人間だろう!?」
本当に何を言っているんだろう、抵抗もしない魔王に何も出来なかったお前たちが、なぜ魔王を倒した私達に勝てると思ってるのかはなはだ疑問だ。
じわじわと流れ出る血が聖女の真っ白な服を汚していく。
魔王と戦ったなどといって汚れてもいない服はどういうことなのか。
「…は」
笑い声がきこえた。
ききなれた声、いつも隣で聞いていた声。
「…え?」
この状況でどうしたら笑えるというのか、そういう意味の疑問符だろう。
「ははははははははははははははははっ!!!見ろ!!!見てよリア!これが!僕たちが同族を殺してまで守った人間たちの本性だ!!愚鈍で醜く自分たちの行動の意味にも気づかない畜生どもさ!!あぁ、リア君は優しすぎたよコイツらを自分と同族だなんて
殺してしまおう死んでしまえばいいみんな、ねぇリア?僕と一緒にずっと暮らそうここであの魔王みたいに馬鹿なマネはしないよ君が隣にいてくれるなら僕は」
周りが黒い魔力によりどんどん包まれていく。
「な、なに!?」
「おい、どういう事だよアスター!!」
「どういうこと?それは僕のセリフだよ逆になんで僕の可愛いリアに手を出して無事で居られるとでも?最初はリアがそのメスの殺気に気づかない訳もないし、わざと攻撃させて正当防衛ってことで殺すのかなって思ってたんだけどリアったら刺されちゃうし刺された後もぼーっとしてるし……ね、リア。僕を置いて、勝手に死ぬなんて許さない」
真後ろでぷちゅん、と音がして振り返ると、それは聖女様の目が潰れた音だったらしく、目元を赤く染めた聖女様が泣き叫んでいる。
「ぁあぁ”ァア゛ァァァァァァぁあ!!!!!!!いだぃッッ!!!!!!!!!!ぁあ!わだ、わだしのめがっッッ!!」
同時に私の胸元を貫いていた短剣が崩れ 、傷が塞がり始める。
「ね、リア。疲れているだろう、今はお休み。」
突然急激な睡魔に襲われ、スグに抱きとめられたところで私は意識を失った。
読んでくださりありがとうございました!
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