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よろしくお願いします!
私は『黒』を持って生まれてきた。
この世界には魔法というものが存在する。
火・水・風・地・光・闇の六属性があり、人は生まれる際、力の弱い強いに関わらず必ず一つはこの属性に当てはまる魔法属性に適正を持つ。
一つは、といったのは基本皆一つだけ持つというだけで、それ以上二つ三つ…あるいは六つ全ての属性に適正を持つものもいるからだ。
とはいっても人数は少なく、魔力が高い貴族でも複数適正を持つ者は数十年に1度生まれる程度で六つ全て持つものなんて建国記に書かれる賢者だけしか知られていない。
そして、その六属性を私は持ってしまったのである。
属性の適正はその人物を見てすぐに分かる。
火の属性に適正を持つものなら赤、水の属性に適正を持つものなら青…というように髪色と瞳の色に適正属性の色が現れるのだ。
二属性持つものであれば第一属性…二つの内より適正が高い方が瞳に、残りが髪色にあらわれる。
三属性持ちで第一属性が風、第二属性が水、第三属性が火の者がいるとすれば、その者は緑色の瞳を持ち、青が多めの赤で合わさった…つまり青に寄った紫色の髪色を持つということだ。
話が長くなってしまったが、私が言う『黒』というのはつまり髪色のこと。
瞳は緑であるが、やはり頭を覆う髪の毛の方が面積が大きく目立つ。
そして、もうひとつこの世界には魔族という存在がいる。
それらは魔力を多く持った者の成れの果て、魔法の才能に恵まれ神に愛された者。
それゆえ年をとらず魔力の尽きぬ限り生き続ける。
魔族がいれば種族をまとめる長がいるもの…つまり魔王、彼は私と同じく『黒』を持っている。
ここまで言えば分かるはずだ、例え魔族が罪をおかしていなくても、人は自分より圧倒的に力を持つものを恐れ、迫害する。
魔族と人とは敵対状態にあり、人側に生まれた『黒』髪の私。
とりあえず私は大雨の夜、教会の傍に捨てられていたらしい。
いや、殺す気か。
…まぁ死んだ方が両親にとってはありがたかったのだろう、教会の傍で保護されるように差し向けただけ有難い、のか?
それとも六属性持ちを殺して呪われるのが怖かったのかもしれない、呪い方なんて知らんが。
教会の皆は優しかった。
黒髪を持つ私にも分け隔てなく…とまでは行かずとも食料をくれた、寝床をくれた。
だが、教会といえば魔を滅するお役目、いつまでも魔の象徴を匿っているわけにはいかない。
神に愛されているのは教会らが言う魔族
の方であり、魔族はもとから人である…いや今も人だというのに、皮肉なものだ。
そんなこんなで教会を追い出された私は、それはそれは必死になって生に縋った。
なぜ、ときかれると分からない。
でも、死んでたまるかと、その思いだけが私が行動する理由だった。
泥水を啜り、地べたに頭を擦り付け……自身の器量が素晴らしく良いと知ったのは七つくらいの時だった。
魔力の多いものほど、容姿に優れているとは言ったものだ。
魔族には酷く美しいものしかいない。
それから這いつくばるだけでなく、媚を売ることを覚えた。
まぁ大半は髪色を見て逃げていくのだが、関係なく容姿だけを見る馬鹿はいるものである。
馬鹿ほど差別意識が高かったりするのだが、私が捕まえたこの馬鹿は違った。
お人好し、というのだろうか。
自身が非難されるのも気にせず私に貢いだ、居場所を与えた。
そいつは貴族だったらしく、お陰で私は王立の魔法学校に通えるようになった。
そこで出会ったのが、スグリ=アスター…後に私の恋人となる人だった。
読んでくださりありがとうございました!