M2[手に入れた力]
レイソル:
「…………」
ヴィラジ:
「レイソル!レイソル!
…本当は聞こえてん
じゃないかな〜ったく」
テスラ:
「まぁぁた〜!
レイ!聞こえてる!?
レイッ!」
レイソル:
「え、ああ…
聞こえてたさ」
無理に笑顔を作る。
テスラ:
「じゃあ、先生の
言ってた宿題は?」
レイソル:
「P50〜73までの
クロケニアの歴史を
覚えるんだろう?」
ヴィラジ:
「お〜、流石先生に
愛想尽かされた生徒は
凄いね〜」
テスラ:
「誉められたこと
じゃないけどね」
頬を膨らませ、
ブーブー言っている。
ヴィラジ:
「そうだレイソル。
前のさ、
森の火事のやつ
聞いたか?
だっせ〜よな〜
軍人が2人もハイドラを
使ってたっていうのに
焼死したんだってよ」
テスラ:
「ヴィラジ!
人の死を笑ったら
駄目じゃない!」
ヴィラジ:
「だってさ、
ハイドラ使ってたのに
焼死って。
俺でも逃げれるよ、
お前もそう思うだろ?」
レイソル:
「あ、ああ‥‥」
テスラ:
「レイまで〜
もう〜」
レイソル:
「(焼死、か‥)」
M2[手に入れた力]
ボォーーー
森が燃えている。
すでに視界が
うっすらとしてきた。
このままじゃ逃げても
焼け死んでしまう‥
ハイド:
「神へ祈る時間くらい
あげよう。
私のせめてもの
救いだよ」
レイソル:
「今から殺す相手に
救いか……
変わっているな」
ハイド:
「道理だよ、
名も知らぬ少年」
レイソル:
「……(嫌だ。
こんなことで死ねるか!
まだ何か策は
あるはずだ‥)」
パイロット:
「ハイド様、
そろそろお時間です」
ハイド:
「ん、そうか。
では、そろそ‥」
レイソル:
「(今だ!)
うおぉぉぉ!」
我ながら失敗か…
拳銃を持っている兵士に
体当たりなど‥
ハイド:
「むっ!無謀だな君は」
あっけなく足をとられ、
地面に倒されて
しまった。
そして銃を
頭に突きつけられて‥
ハイド:
「チェックメイ‥」
頭の中に
閃光がよぎった‥
‖
?:
「おい」
視界は暗闇だった。
だ…れだ
?:
「いいのか?
こんなので」
こんなの……
ああそうか、
俺は殺されて、ここは
地獄か何かか‥
?:
「まだ死にたくは
ないだろ?」
それは生きてる時に言う
セリフだな‥
?:
「お前はまだ
死んでないさ」
な…に?
?:
「生きたいか?」
他に選択肢が
あるとでも言うのか?
?:
「私の手をとれ」
人にすがるなど‥
?:
「とれ」
だからすが‥
?:
「とれ」
……この状況で強要
されるなんて
思ってもみなかったぞ。
?:
「人じゃなかったら
いいんだろ?」
やっぱり死神とかか‥
?:
「変な方向に
持っていくな。
…お前が《向こう》に
戻ってから残された
時間は3秒だ」
チャンスはまだ
あるのか……
?:
「願え、いや、刻め。
お前の‥力を‥‥」
手に紅い石が
のせられる。
そして視界が徐々に
明るくなっていく。
…眩しいな。
時間は3秒か…
…誰かは知らないが、
この紅い石、
死ぬ前に刻んでみるか
‖
ハイド:
「…ェックメイ‥」
レイソル:
「はっ!
(夢!?…違う、
手には石がある。
時間がない‥‥!)」
引き金に
指がかけられる。
レイソル:
「刻まれろ…
俺の願いは、
《止まれ》ぇぇ!」
ハイド:
「………」
レイソル:
「…ほ、本当に
止まったのか。
この石は‥‥」
?:
「やっと信じたか」
っ!!
いつからいたんだ。
それにあの声は‥
紫がかった長髪…
若い、男勝りの女‥
?:
「どうだ、
刻んだ感想は?」
レイソル:
「…お前は誰だ」
?:
「質問に
質問で返すなよ。
先に答えろ」
レイソル:
「信じられないな」
?:
「正直でよろしい」
何様だ、この女‥
?:
「私の名前だったな。
……《c-ta》」
レイソル:
「c-ta?
随分人離れした
名前だな。
c-ta……
《シータ》でいいか?」
シータ:
「分かれば何と呼んでも
構わないさ」
……殺気じゃない。
しかし何だ、
この威圧感は‥
レイソル:
「シータ、
この男はいつまで
止まっている?」
シータ:
「制限時間はないさ」
レイソル:
「じゃあどうやって
解くんだ?」
シータ:
「解いた瞬間
殺されるぞ?」
レイソル:
「そんなことは
わかっている。
他の場合だ」
シータ:
「《解けろ》
と強く思って
目をつぶればいい」
レイソル:
「そうか…」
再び男を見る。
このまま放っておいて
よいものだろうか…
目に2機のハイドラが
ふと映った。
レイソル:
「おい、あのハイドラの
パイロットも
止まっているのか?」
シータ:
「やつらは自殺したよ」
レイソル:
「自殺!?何故だ」
シータ:
「ん」
近くの岩に座っていた
シータがアクセサリー型
をした紅い石を見せた。
レイソル:
「そうか…
その石は
何て言うんだ?」
シータ:
「《ルクタシー》」
まだゆっくり話したい
ことがあったが、
もうあまり時間に
猶予はないみたいだ‥
レイソル:
「もうここも
危ないな。逃げるぞ」
シータ:
「どうやってだ?」
レイソル:「ハイドラを
使わせてもらう」
シータ:
「私は操縦できんぞ」
レイソル:
「俺もだ」
シータ:
「は?」
レイソル:
「学生が使えるはず
ないだろ?」
シータ:
「結局無理なん
じゃないか」
レイソル:
「しかし、あんなの
ゲームと一緒だ。
説明書を見なくたって
クリアできる」
シータ:
「自信はあるのか?」
レイソル:
「俺は計算高いからな」
そして俺たちは
ハイドラを1機奪取し、
乗り込んだ。
レイソル:
「セキュリティは
かかってない‥
起動……
センサー調整OK
視界クリア」
ガチャ、ガチャ‥‥
レイソル:
「簡単だな」
シータ:
「おい、操縦しながらで
いいから答えろ。
お前は
何て言うんだ?」
レイソル:
「今頃か……
レイソル、
レイソル・フォストリル」
シータ:
「普通だな」
レイソル:
「偽名さ」
シータ:
「何?…いや、
聞かないでおこう」
レイソル:
「助かる」
シータ:
「これからどこに
向かうんだ?」
レイソル:
「家だ」
シータ:
「こんな景品
持って帰ったら
さぞ驚くだろうな」
レイソル:
「そんなわけないだろ。
ふもとの
使われなくなった炭鉱に
棄てるさ」
シータ:
「とまるぞ」
レイソル:
「こんなところで
止まるのか?」
シータ:
「違う。
レイソル、お前の家に
《泊まる》んだ」
テスラ・パージ
レイソルたちの
クラスメート。
常識などに対する
正しい認識を
唯一(?)持っている。
c-ta
メカと一緒に死んだと
思われてた少女。
《ルクタシー》と
言われる紅い石を
レイソルに渡す。
ルクタシー
謎の紅い石。
この石に願いを《刻む》
と、叶ってしまう。
加工が可能で、
アクセサリー型も
存在する。