M12[奇異な誘い]
煌炎:
「……!!
そ、そんな‥」
膝が崩れ落ちる。
そこには見るも無惨な
血にまみれた
総督の亡骸があった。
ひとり、暗闇の中で…
Ι
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M12[奇異な誘い]
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校内放送:
「えー…生徒諸君、
おはようございます。
今日のテレビ朝礼の前に
ひとつ話して起きたい
ことがあります‥」
ヴィラジ:
「お、何だ何だ〜!!」
テスラ:
「こらヴィラジ!
もし悪いニュース
だったらどうするのよ」
学園の生徒は
はしゃいでいた。
ここ数日間、
目新しい出来事が
なかったのだから。
レイソル:
「ま、おおかた
あのニュースだろう」
レイソルが
2人の近くまでいって
ぼそりと囁く。
ヴィラジ:
「え、レイソルは
知ってんのかよ?」
レイソル:
「もちろん。
朝はちゃんと
テレビ見てるからな」
テスラ:
「流石情報通〜!
ヴィラジとは大違い」
ヴィラジ:
「そりゃないぜ!」
日常の光景に
レイソルは安堵する。
久々の学校なんだ。
もっと騒がないとな。
校内放送:
「……内容です。
全校生徒はただちに
体育館の方まで
行ってください」
そこで放送は終了する。
直後クラスメートは
ざわめきだしはじめた。
ヴィラジ:
「あ、俺内容
聞いてなかった」
テスラ:
「……そんな!!」
テスラの顔色が
青ざめていく。
レイソル:
「………」
ヴィラジ:
「ん?」
Ι
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体育館
先生:
「…集まりの諸君。
放送のとおり、
昨日、クロイセン総督の
船が撃沈され、
総督の死亡が
確認されました‥」
「一体なんで?」
「テロリストか?」
「クロイセン様‥」
泣き出す生徒も
出てくるなか、
皆が思い思いに
しゃべりだす。
俺たちもまた……
レイソル:
「俺はあんまり
好きじゃなかったな」
それを聞いたテスラが
頬を膨らませて、
テスラ:
「…私結構
ファンだったのに‥」
なんて言い出す。
なんだ、俺はなにか
不味いことを言ったか?
ヴィラジ、
横腹をつつくな。痛い。
ヴィラジ:
「…でもよ、
これも例のあれか?」
テスラ:
「あれって?」
ヴィラジ:
「知らない?
ちょっとくらい
前なんだけどさ、
北拘留所が
爆破されたり、
軍のロボットを
盗んだ事件のこと」
テスラ:
「あー
知ってる知ってる。
でも犯人は誰か
わかってないんでしょ」
ヴィラジ:
「だから今回もさ、
そいつじゃないか?」
テスラ:
「んー…
私ね、思うんだけど。
犯人って
日本人じゃないのかな」
レイソル:
「クロケニア人の
偏見だろ?」
俺はその答えを
知っているし、
なにより俺は
日本人を特別視は
していない…はずだ。
テスラ:
「あ、ううん、
そうじゃなくて…
ただ、あれもこれも
全部日本人のために
やってるから。
そう思っただけ」
レイソルは考えた。
確かに俺は日本を
また独立させるために
こうやってきた。
でも《偏りすぎた》
のではないだろうかと。
ここでまた話が
始まったので
会話が途切れる。
先生:
「…では生徒諸君、
この学園の
創設者でもある
クロイセン=
S=クロケニアに
黙祷を‥」
テスラもヴィラジも
手を合わせて
祈りをささげる。
だが俺はしなかった。
なぜなら…
俺がやつを‥‥
Ι
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テスラ:
「…ソル、レイソル!
んー…起きろ、レイ!!」
レイソル:
「わっ!!
な、なんだ!?」
まわりが微笑してる。
立って目が覚めたから
わかったことがある。
…俺は寝ていた。
テスラ:
「もぅ…
レイが最後なんだから
早く決めてよ」
レイソル:
「決める、何を?」
目にやさしいとの
理由で今でも
使われている黒板には、
多数決がとられていた。
レイソル:
「模擬店18
演劇18…ってことは
全ては、世界は
俺に委ねられたと
いうことなのかぁ!!」
ヴィラジ:
「いやいや…
そんなスケール
広げなくていいから‥」
満場一致か!
というのはさておき、
テスラは俺に
目を輝かせてるし、
ヴィラジは俺に
ガッツを見せろなんて
意味不明なことを
言っている。
レイソル:
「はぁ……
わかりましたよ。
なら俺は…右だっ!!」
‖
テスラ:
「はい、じゃあ
みんな準備してねー」
女子が机を後ろにどかし
男子はみんな
木材やら工具やらを
かついでいる。
まあ俺はそんなの‥!!
座ってる姿勢から
後ろに飛び退く。
机には金鎚が
鈍く光っていた。
ヴィラジ:
「お前が
最終決定者なんだから
少しは手伝え!
てか普通に手伝え!」
レイソル:
「俺は傍観者だ。
あとは頼んだ」
ヴィラジ:
「断るぜ、レイ」
こんなやり取りが
何度も続けられる。
テスラ:
「ほらほら、
じゃあレイは
土台の設計図づくりと
買い出しね」
レイソル:
「…わかりましたよ」
そう、俺は右、つまり
[模擬店]を選んだ。
実は第3の選択肢で
[組み合わせる]とか
第4の選択肢で
[あえてしない]
っていうのが
あったんだが…
…気迫負けした。
テスラ:
「材料はね…
玉ねぎ、人参、白菜‥」
レイソル:
「あー、いい、いい。
一緒に来てくれ」
ざざざ!
ざざざざ!!、と
みんなが一斉に
振り返っては俺たちを
にやにやした眼で
見てくる‥
レイソル:
「……へ?」
テスラ:
「ぅぅ‥」
なんだ…
なんであいつらは
にやにやした眼で
見てくるし
テスラも
もじもじしている?
……わからない。
ヴィラジ:
「じゃあレイとテスラは
"2人で"買い出し
よろしく〜〜!」
レイソル:
「あ、ああ‥」
‖
巡る巡るはスーパーや
離れた八百屋など、
何が楽しいんだ‥
テスラ:
「ね、レイ!
次はワインのとこ行こ」
テスラもいやに
張り切ってるし…
まあ、
こんなのもいいか。
そんな2人歩く様子を
遠くの茂み(自作)から
誰かが見ていた。
ヴィラジ:
「んー?
何もしないなあいつら」
?:
「もっと
ババーン、ドバーン、
ドヒャブヒョン!!って
やっちゃえばいいのに」
ヴィラジ:
「委員長?
最後のなに?」
?:
「細かいとこ
気にしてたら
いつまでたっても
大きくなれないぞ?
ヴィラジ=ハルマー?」
ヴィラジ:
「俺はどうせ
これで十分っすよ!!
そういう
委員長だって!」
?:
「どこを指して?」
ヴィラジ:
「どこって…んー‥」
ヴィラジの視線が
おもむろに少し突起した
部分に移る。
ヴィラジ:
「ねー‥」
?:
「変態かっ!!」
腹に一発、くいこむ。
まあ普通だがな。
こんな感じにいつも2人は
じゃれあっているが‥
ヴィラジ:
「ん?
誰だよナレーション
入れて…んの?」
2人の目線が上を向く。
そこにはさっきまで
向こうにいたはずの
男と女。
レイソル:
「何やってるんです、
委員長?」
テスラ:
「もぅ、シオネったら」
シオネ委員長:
「あ、ごめんごめん!
アイスおごるからさ」
テスラ:
「二度と、二度と
やめてくださいね!」
かなり念をいれている。
よっぽど
嫌だったのか?
シオネ:
「怒るな怒るな、
あっはっは」
と、ここで紹介。
この人が俺たちの
クラスの委員長の、
《シオネ=
アシュタラク》
毎回こんな感じで
かなり陽気だ。
シオネ委員長:
「バレたら
しょうがないっか。
よぅし!
みんなで買い出しだー」