M11[未聞の接続]
戦艦内部には
非常警戒音が響き渡り、
兵士たちの足音が
鳴り止まない。
彼らは総督の命を
最優先して
侵入者排除に
向かっていた。
安全確保のため、
クロイセン総督は
しばらくの間は
部屋で待機することに。
兵士:
「殿下には恐縮ですが、
最悪の場合は
非常救命ボートに
乗っていただきます」
クロイセン総督:
「君たちには
心配をかけるよ。
なに、構わないさ」
クロイセン総督は
にこやかに笑った。
その身に降りかかる
不遇も知らず‥
Ι
Ι
M11[未聞の接続]
Ι
Ι
ハイド:
「えいぃ!!
この戦艦は
最速く動けんのか!」
ルフェストと
ライトニクスは
陸戦用のため、
否応無しに戦艦の甲板に
待機しなければ
いけなかった。
ハイド:
「…だがあの戦艦には
新型が搭載されている。
パイロットの
1人や2人、
誰かが乗れるはずだ」
‖
アールゼロ:
「ふー…
まさかこんなのに
出会えるなんてな」
安心して仮面を外した
アールゼロがいたのは、
まぎれもなく、
戦艦に搭載されていた
新型機だった。
レイソル:
「あのパイロットには
悪いが、仕方ないんだ」
機体の足下には
倒れている人間が1人。
流血はしていないものの
気絶していた。
レイソル:
「《ルクタシー》。
強く願えば
叶ってしまう神の産物。
無くすと面倒だな。
懐にしまっておくか」
新型機を起動すると
ハイドラとは格段に
スペックが向上
していることがわかる。
モニター画面には
《フェムト》と
打ち出されている。
きっとこの新型機の
名称だろう。
ボディは白と青で
彩色され、
腕の一部が変形して
圧縮したエネルギーを
具体変化できる
ようになっている。
それ以外にも
使い道はあるようだ。
レイソル:
「さてと……ん。
これでOK」
仮面を被りなおすと、
機体は
クリアグリーンの光を
撒き散らしながら
戦艦内を移動していく。
狙うは、総督の命のみ‥
Ι
Ι
煌炎:
「…着艦確認!」
ハイド:
「先に行っていろ!
私はまだ時間がかかる」
煌炎:
「了解」
ルフェストは
甲板を飛び移りながら、
総督の待つ戦艦に
近づいていった。
Ι
Ι
兵士A&B:
「うぅ……バタッ」
紅い光が兵士の周りに
拡散して、次第に
見えなくなっていく。
アールゼロ:
「ここにおそらくは‥」
ガチャ、と
銃の安全ロックを外し、
ある部屋の扉を
ゆっくりと開ける。
中は微妙に薄暗かったが
人影は視認できた。
当たりだ。
クロイセン総督:
「…ん?
どうしたん……っ!?」
クロイセン総督は
振り向いた瞬間、
いるはずのない顔を
その眼で見ていた。
アールゼロ:
「こんばんは、
クロイセン総督」
クロイセン総督:
「(へ、兵士を‥)」
机の下に
備え付けられていた
緊急のスイッチを
手探りで探す。
が、見つからない。
バンッ!!
クロイセン総督:
「ひっ!」
威嚇射撃で
机の端を狙い撃つ。
アールゼロ:
「無用な真似は
してほしくないんですよ
クロイセン総督、
いや、我が‥」
言葉を切った。
そして仮面を外す。
クロイセン総督:
「お、お前はぁ!!」
アールゼロ:
「覚えててもらえて
光栄ですよ、総督。
あの日以来ですね、
こう、まじまじと
顔をあわすのは」
アールゼロ、いや、
レイソルは
思い返していた。
日本との戦時中、
日本にいた俺たちに
銃を構えながら
笑っていたこいつを。
あの日、
俺の弟と妹が
どこにいったのかは
誰も知る由がなかった。
それでも、
理由もないのに
俺たちを撃ったこいつを
俺は…殺したい。
クロイセン総督:
「や、やめてくれ…
か、金か?
地位か、名誉か?
欲しいなら
君にあげよう。
その代わり私のいの‥」
Жコロシタイ、シネЖ
紅い光が辺りをつつむ。
鳴り響く…音と…共に。
アールゼロ:
「さようなら、
クロイセン…総督」
Ι
Ι
暁:
「ここはぁ!!
通すかぁぁ!!」
煌炎:
「君にも君の
夢があるじゃないか!
それを、
こんなところで!」
2機の放つ衝撃で
戦艦内部への入り口は
崩落しかかっていた。
煌炎:
「どいてくれ!」
隙をついて
ルフェストが
斬り込みにかかる。
暁:
「(やばい…っ!!)」
コクピットへの
直撃コース、
やられるっ!!
?:
「諦めるな、暁!!」
暁:
「ア、アール?」
煌炎:
「!」
‖
煌炎:
「その…機体はっ!」
アールゼロ:
「貴様と対等に…
渡り合うためのものだ」
ルフェストの
エナジーサーベル、
フェムトの
エナジーシールド。
共が共の力を
打ち消しあっていた。
アールゼロ:
「どうした?
足取りが
いつもより遅いぞ?」
煌炎:
「くっ‥」
情勢はフェムトが有利。
ルフェストは完全に
押されきっていた。
その時海面が
大きく揺らぐ!
ハイド:
「私も援護に入るぞ!!」
目にも止まらぬ速さで
ライトニクスが
海面から浮上する。
暁:
「しまった!?」
アールゼロ:
「失策だな、軍人!」
アールゼロはモニターに
ライトニクスの影を
確認するや否、
緑色のスイッチを
力強く押す。
ハイド:
「これで……っ!?
なんだこれはぁ!!」
ライトニクスは
突如脚を折りたたみ、
フェムトの
腕に一体化する。
暁:「なっ!?」
煌炎:
「そんな馬鹿なっ!」
ハイド:
「…っ……っ!?
なんだこれはぁぁぁ!!」
Ι
Ι
アールゼロ:
「シドルグハドロン」
腕と一体化した
ライトニクスの口からは
エネルギーの発射口が
現れ、光が集中する。
ハイド:
「この、えいっ!!
何故操作できんのだ!!」
必死に操作するが
ライトニクスは
応じようとしなかった。
煌炎:
「っ……」
アールゼロ:
「…暁、発射後
すぐ海に飛び込め」
暁:
「ん、はい?」
アールゼロ:
「飛び込め!」
暁:
「あっ、はい!!」
次の瞬間、
甲板は光に包まれ、
ハイドラとフェムトは
海に飛び込んだ。
ハイド:
「ぐおおっ!!」
ライトニクスの
コクピット部分が開き、
ハイドが甲板に
投げ出される。
それをルフェストが
間一髪捕まえる、
が、ハイドは
気を失ってしまった。
そこにはもう
2機の姿はなかった。
煌炎:
「……はっ!
総督の無事は!?」
煌炎はコクピットから
素早く降りると、
荒れ果てた戦艦内部に
走っていった。