97.森の一族
結局森の一族と会うことになった。
オーブンを作っていたはずなのに、ちょっと思考がずれてオーブンで食べたいものを作っていただけなのに、なんでなんだろうね?
どこかでフラフラしていたシエロが乗れとやって来たからには、これはどこかでこうなるように、仕組まれたとまでは言わないけれど、決まっていたことなのだろう。
定めと思って諦めた。問題を起こす一族でなければ、何も言うまい。
どんな一族なのかテーレに聞こうかと思ったけれど、出来れば先入観なしで会って欲しいと言われてた。それもそうかと、シエロの背に乗って森の奥へと向かっている。
――というか、このままだと山越えるよね? 飛んでいる理由がそれとか、何処へ連れていくの?!
「掴まってて」
「い、嫌やイヤイヤ・・・・」
マリーは星になりました。
少し遠くで話し声が聞こえる。
「ちょっと、バカ馬、うちのマリーに何してくれるの?!」
「ちょっとぐらい、アトラクションみたいにとか・・・」
「バッカじゃないの。マリーは元々高所恐怖症だったの、忘れたの?忘れたとは言わさないわよ?あんたが原因でわかったし?」
「・・・そう、だった。僕・・・」
「まあ、大精霊様、御使い様も悪気があったわけでは・・・」
「あったら、長と全精霊で今頃ミンチにしてやってるわよ」
「「・・・・・・・」」
「わかってるわよね?あんたに転移でなく、わざわざ上から行ったのは、森の様子も見て欲しかったから。そう説明したはずよね?」
なるほど。そういう訳があったのか。
そうだとしても、二度と上からなんて行きたくない。昔頻繁に崖から落ちる夢を見ていたことがあったけれど、あの時の気持ち悪さは今でも覚えている。あれで高いところが苦手になったのかは不明だけれど、魂が抜けるような感覚を味わうなど、無理だ。二度とシエロの上になど、乗らない。
何があっても、二度とだ。
取りあえず折角来たのだから、会って帰ろう。どれぐらい気を失っていたのかわからないけれど、流石に夕飯までに帰らないのはまずい。
「テーレ」
「マリー!大丈夫?」
「大丈夫。どれぐらい経った?」
「30分ぐらいかな?だからまだ少しは時間があるわよ」
あたしが突然起きたからか、空気がビクッと震えた。
そんなに怖がらなくても・・・って、子供?
だけど気配が人間じゃない。ドライアドのテーレが気にして、神の御使いのシエロが動くぐらいだから、森の一族は妖精なのかな?
「で、この方々は?」
「妖精族の中で森の一族の長と言われる、フェアリーよ。他にもドワーフやエルフもいるわ。少し離れたところに獣人族とも呼ばれている、ケット・シーやクー・シーもいるわ」
「この世界にもたくさんの種族がいるんだね。初めて会ったよ」
「えーと、あたしはマリー宜しくね」
「わしは、ヨルと申す」
「「・・・・・・・・」」
で?
お見合い状態だとなにも生産性を産まないのだけど?
「どういうこと?」
「お嬢さん、マリーはわしらを見て、驚かないのじゃな」
「えーまぁ。精霊たちが居て、天馬が居て、フェンリルが近くに居ますし、驚かないですね」
「確かにのぉ」
「ええ、ですから、この状況を教えてください。あたしにどうして欲しいですか?」
ヨルは目を真ん丸にして、不思議なものを見るようにあたしをは見た。
驚いた顔も可愛いのだけど、普通に見ることのない妖精に、そんな目でみられるあたしは珍獣?
あたしからすれば、子供の姿にしか見えないヨルに、わしとか言われるほうが、違和感ありまくりだけどね。
緑色の髪の毛に、翠色の瞳。来ている服もメイン色は緑色で、違っているのは木靴な為、茶色といいぐらい?
森の中で同化しながら天敵から身を守るための手段なのかもしれないけれど、正直他の妖精と区別がつかない気がするよ。
「わしが言うのもなんだが、大丈夫なのか?」
ちょっと、なんでテーレに聞くのよ!ヨルじい!
こう見えても中身はアラフォーよ?しっかりしているに決まってるじゃない!何を心配してるのさ。
ああぁ・・・・。
これが原因か。
先ほどから物凄い量の木が倒されている。
「詳しい話はダンジョンの中で聞いたほうがいいね。テーレ、ヨルじい、ついでにシエロ。みんなを早く連れてきて」
「そじゃが」
「つべこべ言わない!一族を死なせたいの?助けたいなら、サッサと動きなさい!」
「ハイ!」
気配を深く探ると沢山の人間らしき者たちが、あちらこちらにいる。しかも、小さき者たちを捕まえているようだ。
これは、まずいのではないだろうか。
武力で追い返そうと思えば出来るけれど、それをやると更に武力で押し返そうとするだろう。この森を血だらけにしたいわけじゃない。
人間にも言い分はあるのだと思うけれど、あたしはテーレを信頼している。そのテーレが保護したいと思っている森の一族の味方をするのは、当然だと思う。しかも、こんなに森を破壊するなんて、どうかしている。
さて・・・。見た目子供なあたしでは迫力不足。仕方ない。
腐っても御使いであるシエロに行かそう。
『シエロ、この者たちに本来のあんたの姿を見せて。そしてこの森から出るように言って。その間に救出するから』
『僕に任せて』
先ほどまでしょぼんとなっていたのに、ドヤ顔出来るなんて、本当にいい性格してるよ。
「ヨルじい、一先ずこの人数で動くよ」
僅かな時間しかなかった為に、目の前い入るのは十数名。皆不安そうな顔をしているが、テーレの菩薩のような笑顔で、騒ぐ者はいなかった。
「転移」
「ヨルじい。一先ずここで休んでて。また戻ってくるから」
「ココア!」
「はーい」
「ココア、このヨルじいよろしくね。どんな森にするか、聞いて作ってあげて。じゃあね」
ごめんね。勝手に頑張ってみたいな紹介で。でも、急ぐのだ。
手は多いほうがいい。それならば強力な助っ人がいる。
「長、シャンス、リュビ、ソル、グンミ、シン!森の一族を助けるわよ」
何が起こってもいいように、最高の布陣で行くべきじゃない?
読んで頂き、ありがとうございました。
明日も仕事。皆さんは今日から休みの人も多いのかな?
お正月休みに、一気に書けるといいのだけど。