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93.ココアが造ったダンジョン

次の日、マリーの朝は唐突に始まった。

「主~。基礎が出来たから見て~」


マリーの周りでちょっと幼い声を意識したような、ぶった声を出す者は一人?しかいない。

「コ・コ・アぁ~」

「はーい!」

「今、何時だと思ってるの?!」

「え、だって日付変わったし、朝日上ったよ?」


ショボショボする目を擦りながら、カーテンを少し開けてみると、確かに朝日が木々の葉に差している。だからといって、これがマリーの言う朝かと言えば、絶対に違うと言える。

季節が夏だから日の出が4時ごろと早いと言っても、体感で朝の4時半とかあり得ない。

以前のこの村ならあり得たかもしれないが、夜灯をともすことになれたこの村では一部の村人だけになった。そう、パン屋とか朝食を担う母親たちぐらいだ。

本当に勘弁して欲しい。


「だって・・・。主ぃ、僕だけ置いてきぼり」

ああ、まあ、それを言われると、なんとも。流石にダンジョンコアがお肉食べるとは思えない。ただ確かその美味しいお肉、Sランクの魔物の魔石を食べたんじゃなかった?


「食べたよ。だから地下が出来たんだもん。だけど、僕だけ・・・」

ええーと。これ、どうしよう。流石に誰にもダンジョンコアだとか紹介できないし、食事の席でココアだけ魔石、しかも大金貨何百枚もする物を食べている姿は、心臓に悪くて見せられない。


「ココアは魔石以外でも食べられるのかな?」

「魔力は食べられるよ」

「それは、魔物のお肉から魔力だけを抜くって意味で?」

「・・・そうなるのかな?」


ココアが魔力を食べた後の残りは、ただの肉の塊・・・かぁ。

肥料ぐらいにはなるかしら?

唸りながら考える。

確かにボッチは嫌だと思う。だからといって、魔力を抜いたモノを捨てるのは間違っていると思う。何かに活用できるのであれば、問題ないと思う。

どうしようかな・・・。


魔力が抜かれたお肉を調理してみて、駄目だった時また考えるかな。ダンジョンコア、ココアの姿は一見黒助の子供みたいなものにしか見えないし、うちの家族なら新しく入った仲間と言えば済む気がするし。

ただお肉などの料理はあるのに、減らないのはね。

本当にどうしよう。


・・・。そうだ!

ココアとクロと一緒にしておいて、クロが魔石持ってたらいいんじゃない?この子は食事は要らないと言っておいて、魔石から魔力ぬけばいいんだ。ただの石になってしまえば、庭に転がしておいても問題ない。

魔石が足りなくなれば、長とシャンスが狩ってくればいいし。


「ココア、とりあえず魔石で食事することにして。その分はクロに渡しておくから」

「わかったぁー」

「くれぐれも自分がダンジョンコアなんて、名乗らないように!――消滅、したくないよね?」


この言葉であの時を思い出したのか、ブルブルと3回震えた後、コクコクと二度頷いた。

まあ、あれはトラウマになるよね。悉く自分が造った物を壊れていくし、魔力枯渇で消滅の危機に瀕したのだから。


ココアの可愛いわがままはこれで解決。

とりあえず、もう少しだけ眠りたい。

そのまま起こしていた体を後ろに倒して、布団を被った。


「あ、主ぃ!見てもらってないよ。誰かに見られたらダメじゃなかったの?」

ムッ。子供だと言い張るココアに正論を言われた。

あ、あたしも子供だし、問題なかった。


「もぅ!」

「はいはい」

そういう問題じゃないことぐらい分かってるよ。見に行けばいいんでしょ、見に行けば。


「じゃあ、案内するね」

ココアがそう言った後すぐに、景色が変わった。

ダンジョンコアだから、ダンジョンの中は自由に転移できるのはわかる。だけど、部屋から行けるって?

「この家ごとダンジョンだよ」


どうやらこの家ごとダンジョンと認識されているらしい。

え、なんで?

そう思ったのは一瞬。すぐに納得した。

そりゃそうだよね。入口が部屋の下にあるのだから、間違ってない。


そして気持ちが落ち着いたので周りを見渡すと、圧巻だった。

「これ、一日でしたの?」

「そうだよ。あの魔石は凄かった!」


何の魔物なのか聞かなかったけれど、今後のことも考えて聞いてたほうがいいかな?

でも、直感が聞かないほうがいいと言っている。

美味しいと食べておいてなんだけど、受け付けにくい見た目なら、これからそのお肉が食べられなくなるのが嫌だから、やっぱり聞かないでおこう。


それよりも、目の前の光景だよ!

今、立っているのは村の真ん中に広場。

ぐるっと見渡すだけでも、村と同じ風景が広がっている。それだけじゃない、ちゃんと風の匂いもある。

「凄いね」

「でしょ!僕、頑張ったんだよ」


優しい風が吹くとそれに合わせて木々が揺れ、地面に生えている花々からは優しい香りが漂う。

村の外の人がここが村だと言えば、完全に信じるだろう。ダンジョン内だなんて、誰が思うだろう。

決定的に違うと言えることがあるならば、人の気配が、精霊の気配が全く感じられない。立った一人この世界に取り残された、迷子の様な気分になることだけだ。


「生物はね、難しいの。もっと沢山のエネルギーが必要になるから」

「そうだね」


村の中をてくてくと歩く。

自分の家の前にまでくると、ここにも違いがあった。

サクレがない。

「ここにね。サクレの代わりに世界樹を植えたらどうかなーって」


確かにサクレの代わりに世界樹があるのはいいかもしれないけれど。

・・・。

アレらが家の近くにと考えると、ちょっと微妙。

リュックの中から、早く出せと言ってくるあれを出すのは、正直めげる。

やっぱりサクレの挿し木が、いいなぁ。癒されるし。


「そ、っか。じゃあ、まだまだ造るから、次にできた階がいい?」

「そうしてくれると嬉しい。世界樹が見えないほうが、良いと思うから」

「わかったー」


ということで、世界樹と煩いアリア卵はまだまだリュックに居てもらう。

世界樹が種から芽吹いた時、この世界に変化が起こりそうな気がするのは、多分決定事項だと思う。

だからね、やりたいことをやり切っておきたい。


「ああ、お腹空いた」

「僕も!」


読んで頂き、ありがとうございました。

評価&ブックマークも、めっちゃ嬉しいです。

とっても素敵な数になってた。

当初の目標が500だったを大きく上回り、嬉しさと不安とドキドキと一緒に書いてます。

読んで頂いている人が居る限り、頑張って書こうと思います。


誤字脱字報告も、ありがとうございました。


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