92.高級肉とココア
目が覚めたら、夕方だった。
あたしが寝ていた理由として、ダンジョンの後始末で疲れたのだと、いいように父さんが受け取ってくれたので、笑っておいた。
まあ、大まかダンジョン関係のことなので、間違ってはいない。
うん。
そのおかげで夕ご飯が豪華だったので、とても嬉しかった。
メインは1人一枚のステーキ肉。父さんがいうには、シャンスがどこで狩って来たのか不明だが、この辺りでは見られない高級魔物の肉らしい。どれぐらい高級かといえば、この1枚を街で食べたなら、大金貨1~2枚(10万から20万)はいるらしい。しかも平民ではお金があっても口にすることが出来ない、というか廻って来ない類の肉らしい。オークションに出せばプレミアム価格でプライスらしい。
父さんがなんでそんなことを知っているのか謎だけれど、今はいいや。
何処かに売りに行くと言っても、売りに行くところがあるわけじゃないし、シャンスが食べたいから獲ってきたものだのだから、有難くいただくことにする。
一口食べたけれど、取引先との食事で出た高級和牛のお肉と遜色ない。あの時の値段が確か小さい一切れで1万円だった。納得の金額である。
父さんも本当に満足そうでなりより。
エディに至っては、シャンスと変わらないぐらい齧り付いている。
もっと味わって食べようよ。
まあ、無理だろうけど。
周りを見れば、我先にと齧り付いている。それを見れば、急いで食べたくなるのもわかるけれど、長やシャンスと同じように食べてどうする?!
クロは流石だね。意外にもナイフやフォークの使い方も綺麗で、優雅に食べている。
他の精霊たちもいつもならそこまでお肉に興味がないのに、今回だけはしっかりと食べているのだから、美味しさのランクが違うのが分かる。シンなんて、目の色変えてるし。
母さんはお代わりを連発する長やシャンスの為に必死に焼いている。自分の分は確実に確保しながらというのが、母さんらしくていい。
それにしても見ているだけで、お腹がいっぱいになるレベルで皆食べている。皆に食べてもらうのはいいのだけれど、手間が大変だと思う。これは大型コンロ、いや大型のオーブンが必要ではないだろうか。魔石が必要だと言えば狩ってきてくれる人材は、そこら辺中に居るのだ。
特に暇そうな長には活躍してもらいたい。
長以外のフェンリルは森へ帰ったけれど、長だけはダンジョンが落ち着き森が平穏になったというのに、帰る気配がない。どちらかといえば、平穏になったから、ここにいるのだと言いそうだ。
まあ、あたしとしてはシャンスも嬉しそうだし、狩りの仕方とか教えてもらっているみたいだから、有難いと思うのが正解だろう。
大事なことなので、もう一度言う。お肉を焼く手間さえなければ。
今日は母さんに頑張って貰って、明日にでもソルに相談だね。
あと美味しいお肉には美味しい調味料が欲しいところだ。胡椒や塩、焼き肉のたれだけでは、ちょっと物足りない。あの日本の調味料の素晴らしさよ。焼いて混ぜるだけで色々と嵩が増せれるし、美味しいのは正義だと思う。
ダンジョンが出来るまで、生姜やトウガラシ、ゴボウやレンコン、ハーブ類などテーレに作ってもらって、調味料作ろうかな。その前に香辛料揃えないと駄目だけどね。
ただ本格的に作ろうと思えば、足りないものだらけだ。豆板醤とか作る為に豆とか、にんにくは近いものがあったから、山椒とかも欲しいな。後はごまとごま油かな。
欲を言えば昆布も欲しいけど、海なんて近くにあるのかな?あるならシエロに飛んでもらって、買いに行くか、採ってきたいけれど・・・。
その前に、お金を作らないと駄目だね。
売る物は色々あるけれど、上質すぎるかな。
魔物の肉だったら、いけるかな?
子供のあたしがバッグから出したら、駄目だね。
使いにくいお金、金貨ならあるけれど、あんな大金を子供のあたしが持っていたら、襲って下さいと言っていようなものだから、そこは母さん、駄目だ、常識ある父さんに一緒に行って貰うべきだよね。
様子を窺いながら、タイミング見て話してみよう。
食事をしながらあれこれと意識を飛ばしながら考えていても、やっぱりこのお肉は美味しい。少しは英気を養えた気がするよ。
そう言えば・・・。寝る前に気になった。みんなと食事をしない、ダンジョンコア『ココア』はどうしてるのかな?
気配を探ってみれば、自分の真下に気配がある。思っていたより浅い位置にいるようで、感覚で10mぐらい下かな?
『ココア、居る?』
『あ、主』
嬉しそうな声に、なんだか和む。
『今どんな状態?』
『今ですか?一階に村と同じぐらいのフロアを造ったところです』
あの間に、この村の大きさの穴を掘ったと?素直で可愛らしいだけでなく、とっても優秀なのではないだろうか。
『そんなー。嬉しいです』
声に出さなくても、丸聞こえ。良いのか悪いのか、意思の疎通がバッチリだね。
『ですです』
ちょっとだけ、チャラさが入った?子供の可愛さと思っていた方がいいのだろうか?
『僕は生まれたばかりですよー』
まあ、確かにそうだ。
これって、誰の影響?
やっぱり個性的な子になりそうな予感に、こめかみを揉んでみた。
今日は早く寝て、明日考えよう。
『ココア、明日詳しく教えてね』
『わかりましたー』
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