89.ダンジョンコア
自分の魔力が安定したのでみんなでダンジョンのことを話し合う。その上でこのダンジョンの魔力が不安定で、暴走する可能性があるために、暫く休眠に入ることにした。勿論原因は、あの母さんたちの無双というより暴走のせいである。
それにしてもあの暴れっぷりは何だったのだろうか。
「あのー、いいですか?」
恐る恐るといった態であたしに声を掛ける者なんていたかな?
「ここです、ここ」
声のする方向に目を向ければ、あの黒い毛玉ことダンジョンのコアがいた。
「そう、僕が呼びました」
「コア?」
「そうです。今回の暴走はクロ様のフェロモンが原因かと思います」
「クロのフェロモン?!」
「その直接的なスキルは封印されていますが、元々の資質といいますか、その・・・」
「・・・ようは誑しってことだよね」
「まあ、そのようなものです。魔王も精霊王も真逆とはいえ元々慕われる要素はお持ちです。それがちょっと顕著に表れたと言いますか」
「クロの魔力を吸いたいという欲望が充満して、人間の本能が前に出たと?」
「・・・はい」
結局、疑ってた通りだったと。
だけど、これはクロを責められないね。ダンジョンに対して放置だったわけだし、結局は母さんたちの欲望が前に出ただけだもの。クロの資質を否定することはしたくない。
まあ、対策が練れるから、理由が解って良かったよ。
ただそうなると、ダンジョンを資源として活用するのが難しい。ダンジョンとして成り立たせるには魔力がいる。だけど魔力を貯めすぎると、スタンピードがおきるし、線引きが難しいね。
「コア君がここを離れたら、ここはただの洞窟になるってことだよね?」
「ええ、一階を除き全て崩れるかと思います」
「そっか。でもまあ、ダンジョンでとれるものは他に代用できるものはあるし、大丈夫かな」
「ただ、僕はどうすればいいのでしょう?」
「そうだね・・・」
「ねえ、テーレ。サクレの下で精霊王は眠ってるのでしょ」
「ええ、そうね。あそこ以上に安全な場所なんてどこにもないから」
「だったら、そこをダンジョンにしてしまったらダメかな?」
「どういうことだ?」
クロが訝しげにあたしを見た。まあ、普通ならダンジョンのコアは闇属性。聖属性とは真逆と言っていい。普通は存在できないと思うけれど、クロが掌握しているダンジョンコアなら行けると思うんだよね。
テーレもそう思うよね?
「まあ、大丈夫じゃないかしら。強固な村の結界にシンとリュビが守ってて、ダンジョンコアが地形を変えられるなんて、誰も辿り着くことなんてできないわ」
「でしょ!だから、良い感じで層が出来たらそこに世界樹も埋めたらいいかなって」
「地下帝国でも作るの?!」
「そこまで大げさじゃないけれど、それに近いかもしれない。これからの世界で世界樹で争いがおきないように、本当に必要としている者だけが辿り着く場所にしたら、どうかなと思って。悪しき者は入れず、魔物もいないから安心して入れるし、精霊とかそれに近い者達が逃げ込める場所があったらいいかなって。今はこの村が聖域として大丈夫だとしても、何百年もそれが続くという保証はないから」
「それは、まあ、達観した考え方だな」
「クロはそれを一番知っていると思うけど?」
あたしだって実体験したわけじゃないから何とも言えないけれど、歴史が物語っている。平和が何百年と続いた時代なんて、どこにもない。生きていた前世だって、どこか他人事のように映像で見ていたけれど、どこかでいつも内乱や戦争は起こっていた。
それに世界樹や精霊がいるのがこの世界の理ならば、それを守れるようにすることが大事だしね。
「そうだな。・・・ダンジョンならどんな作りも思いのまま、か」
「そう、だからコア君。君の属性サクッと変えちゃおう」
え、僕?って顔している気がするコア君が可愛い。
そう、君だよ。
ツンツンとふさふさの毛を突いた。
「シエロ、いる?」
「いるよ。封印を解くの?」
「あたり!クロのスキル一瞬だけ解除して。あたしがコア君を眷属にするから」
僕どうなるの?!と手のひらでおろおろしているコア君を大丈夫だからと撫でる。
本当は物騒な子なんだろうけれど、それ以上に壊れた性能の者が多すぎて、ペットのようにみえてくるから不思議だ。
生まれ変わって、大事にされる存在になろうね!
「マリーよ。クロの封印を解くことに不安はないのか」
どこからか現れた長が目を細め、見定めるようにあたしを見る。
ニヒルに口元を上げて長を見る。
「なにを今更。これだけのメンバーがいて、クロが勝てるとは思えないし、クロがそんな馬鹿だとは思わないよ。ねー、クロ?」
「ああ、我は消えたくはない」
だよね。跡形もなく消せる存在に逆らうなんてね。きっと魂ごと浄化されて消えることでしょう。
あーくわばらくわばら。
「じゃあ、シエロよろしくね!」
物わかりの悪そうな子を見るようにシエロはあたしを見た。
なによ。
「・・・長もテーレも一応頼んだよ」
「「仕方ない(ね)」」
何でよ!
「まあ、最終的には悪くない案だ。弱き者を育てるのにも適しているダンジョンならば、子らを育てるにもいい」
「そうね。サクレの挿し木もすれば、地下で街を作ることもできるでしょう」
もっと大きい話にしてるのは、みんなじゃないの。あたしのせいばかりにして、もう!
いいもん、いいもんね!
自重なんて全くなしの、あたしの好きに改造しちゃうもんね!
読んで頂きありがとうございました。
ブックマーク、ありがとうございます。
ちょっと頭の中がとっ散らかっているので、ちょっと脳内で纏めます。
絵はあるのだけど文章が出ないので、出来れば上げるという不定期で頑張ります。
書きたいところまで行くのに、先が長い・・・。