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88.ダンジョン

次の日、村の有志でダンジョンへ向かう事になった。もちろんうちの家族は全員参加だ。あのチョコパンケーキを食べた結果なので、それは納得している。

だけどこのダンジョンツアー開催決定みたいな人数はどうよ。

食べたこともないチョコレートや蜂蜜に心躍るのもわかるけれど、安全な旅行じゃないんだからもう少し考えて欲しい。


「さあ、マリー行くわよ!」

一番張り切っているのは母さん。それはわかる。言いだしっぺだし。

次に張り切っているのは何故か隣の家の幼馴染リリー。

「いつも、いつも、わたしを置いて行くんだから。私だってもう8歳なんだからね!」


いや、まだリリーあんた8歳でしょ。でもマリーあんたは7歳じゃないと言われるのが分かってるから言わないけど、普通はエディぐらいの年から冒険デビューじゃないの?

隣のおばさんと一緒に張り切ってるみたいだから、そこは親に面倒を見てもらう予定なのはいいけれど、それでいいのかと心配になる。

この村の人たちだから後でイチャモンつけられるとかないからいいけど、参加者にも自己責任だということをしっかり周知させておいてほしい。

まあ、反則のような果実水ポーションがあるからね。即死でなければ、大丈夫だし、リリーは村で一番少ない火の精の契約者だから、多分問題ない。それに最悪怪我して覚えることもあるから、保護者が大丈夫ならいいのかもしれない。


それにしても7歳のあたしが心配するなんて、この村大丈夫なのだろうか。

――まあ、8割あたしのせいだね。

いざという時の為に、皆で訓練と行きましょうか。


さて、これから行くダンジョンの状況だけど。


一階はスライムが出て、鉱石。

二階は蟻やミミズなどで、シトリンや水晶。

三階は植物系モンスターで、蜂蜜と各種油オイル。

四階はトレント系でカカオやナッツなどの木の実やチョコレートの実。


毒などをもつ魔物はいないし、即死させるような破壊力を持った魔物もいない、要は駆け出しの冒険者に適したダンジョンということだ。

街に近かったら、このダンジョンはさぞかし人で賑わっただろう。

本当にダンジョンの仕組みは不思議だ。


―――と思っていました。

やっぱりシステムとして動かしてくのだから、代価が必要だよね。

先ほどまで搾り取られていた魔力を回復するために、胃もお腹もぎゅうぎゅうに果物と果実水ポーションで詰め込まれて、気持ちが悪い。考えなしで動くとこんな目に合うのだという教訓を得た日だった。

絶対にダンジョンに母さんたちを二度と連れてこない!

そう決意した。

その理由は・・・。


ダンジョンに向かう前の事。

どうやって行くのかと母さんに問えば、シエロに連れて行ってもらうことに決まっていたし(いつの間に・・・)

ダンジョンの案内をクロがすることになっていた。

契約者のあたしより人使いが荒い。そんなので冒険の訓練になるのかと問いたいが、皆からすればどうやら収穫に来たという感覚でしかなかった。

目に付く魔物という魔物を倒し、手あたり次第にドロップした物を拾う。

特に三階・四階は酷かった。

もう虐殺だとしか思えないほどの暴れっぷりだ。


途中クロが限界だと訴えても、ドロップ率が低いとクレームが上がる始末。あたしはそれを茫然として見ていた。

「マリー、ここで止めさせないと、ダンジョンは崩壊する」

そんなクロの声で覚醒したあたしは、シエロに全員を村へと強制転移してもらった。


「助かったです・・・」

消えそうな声が天井から聞こえてきた。

そこへ目を向けると小さな黒い毛玉がいた。

「え、クロ分裂したの?」

「違う!我の遺伝子が継承されただけの、ダンジョンコアだ」


姿かたちは似ていても、性格は全く似ていないようで、フラフラと寄って来ては手の上にポテッと降りてきた。

掌で転がる様子は、とても可愛い。黒助だったときもこんなに可愛かったら良かったのに。

可愛さに釣られて撫でていたら、指に吸い付かれた。

「な、な、なに!タコの吸盤に吸われてる感じがするんだけど!」


クラりと目が舞う。

あ、これ、魔力吸われてる。

「ダンジョンコア!吸い過ぎるな!魔力がなくなると人間は死ぬ!」

そんな焦ったクロの声を聴いた後、スポンと指から抜けた感じがあったが時遅し、クロの腕の中に倒れた。


「ちょっとどいて!」

テーレの声が聞こえた途端に、果実水ポーションを流し込まれた。

「ちょっと、もっとゴホッ・・・ゴボッ」


魔力不足じゃなくて、果実水ポーションで溺れ死にそうになった。

何が原因なんてわかんない。

頭がズキズキと痛む。


「次、これ食べて」

口の中に入れられた、ツルンとした柔ら中な物を咀嚼する。これなら舌でも潰せる柔らかさで、のどに詰まらせて・・・なんてことはない。

生まれたての鳥のように、ただ口を開けて咀嚼した。


不意に頭のズキズキがなくなり、脳の回路がつながったかのように今の現状が分かるようになってきた。

こればかりはダンジョンコアを責められないよね。あたしがこうなった原因が、母さんたちだから。

なんであんなに母さんたち女性がエキサイトしたのか謎だけど。

ん?

今回ダンジョンにやって来たのは、何故か女性が多かった。それに暴走したのも、女性ばかりの・・・ような?

まさか!

「クロ?」

「我はちょっと魔力を吸っただけだ!」


ごめんごめん。

日ごろの行いのせいで、濡れ衣を着せるところだったみたい。

ここで少し休んで村に戻ったら、母さんたちは説教しないと!


読んで頂き、ありがとうございました。

評価&ブックマークもとっても嬉しいです!

感謝!

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