85.新しい植物の誕生と公園づくり4
ツリーハウスがお昼までに大小合わせて5つ作られた。正直この家に住みたいと思うほど、可愛い出来だ。そのうち言い出しそうな人が浮かぶが、とりあえずこの家は遊び用兼見張り台&避難所だ。流石に住まれると困るので、それは控えてもらうつもりだ。
お昼を食べたら早速続きを作る。
腹が減ったとうるさいシンは、仕方ないからお肉を母さんに焼いてもらったのであげた。
テーレたちには家にトットの卵が届けられていたので、おやつにパンケーキを焼くと約束している。卵があって、甘くて美味しいと言えば、思いつくのがそれだったから。
本当は果物が豊富だしクレープもいいんだけど、牛さんがいないから牛乳がない。すなわち!生クリームもないのだ。
牛さんかあ。どこかには、似たようなのがいるのだろうけど、いつになるかな。
最悪はテーレに植物で編み出してもらうかな。ここまでチート精霊や神の御使いだの、幻獣だのが周りにいるんだし、自重するのも馬鹿らしくなってきた。最終的には精霊が凄いので。でいいんじゃないかな?実際凄いし。
ああ、作りたくなってきた。
作ってもらっちゃお。
「テーレ、牛乳と生クリームが出来る植物作って」
あ、植物で作るならホイップクリームになるんだっけ?
ちょっと淡白になりそうだけど、牛乳が出来たらチーズやバターが出来るから代用できるしいいや。
「唐突ね」
「テーレに作ってあげるケーキにこれがあれば、もっと美味しくなるの!」
そういえば、何故か村全体がざわついた気がした。キョロキョロと辺りを見渡しても、誰かいる様子はない。気のせいだと思ってテーレにイメージを伝えた。
そして出来たのが、この植物。
家の裏に植えてもらったのだけど、牛乳が出来る植物は普通じゃなかった。元々創造のものだから普通じゃないのは当然なんだけど、ね。
棘のないサボテン?とでもいえばいいのか。その顔ぐらいのぷっくりと膨れている葉っぱをちぎって逆さに向けると白い液体が出てくるのだ。
コップを作って少し入れてみる。
クンクンと匂いを嗅いだが、濃厚な牛乳の匂いがする。植物で作ったせいか、液体はさらりとしている。
飲んでみる。
テイスティングするように、少しだけ口の中に入れ、全体に行き渡らせてみる。
「美味しい・・・」
今度はごくごくと飲めるぐらいに入れて、一気に飲んだ。
牛乳だ。それもめっちゃ高い高級牛乳。
「どう?」
「テーレが女神に見える!」
「大げさね!そしてこの実になっているのがクリームになるはず」
テーレのちょっと照れた顔が可愛い。
本当、どこかの樹の精霊とは大違い!
と思ったところで、リュックに仕舞いっぱなしにしていることを思い出した。
腐るわけじゃないし、ま、いいか。
今はクレープかケーキが出来るかどうかの瀬戸際なのだ。
流石にクリームを飲む勇気はない。リュックに仕舞って、後で泡立てるのだ。
「テーレこれで予定より美味しいのが出来るから、楽しみしていてね!」
「勿論よ!わたしの為にマリーが作ってくれるなんて、素敵ね!」
テーレ?
「さあ、公園づくりするんでしょ。行きましょ」
「あ、うん。午後からもお願いね」
午後からは公園内の樹という樹を吊り橋のように繋ぎ、そこを歩けるというアスレチックのようにしてみた。梯子のように登ったり、下りたりしながら高さの違う吊り橋を歩けるように。
疲れたら樹の上で休めるように、当然平面の休憩所も作る。そこからは滑り台で下りれるようにもしてみた。途中で飽きて下りれないのも困ると思うから。
そう思ったのはどうやらあたしだけで、珍しさ満点のアスレチックのようなものは、子供だけでなく時間を持て余していた大人にも人気だった。
あれ?もしかして後で作ろうと思ってた列車よりも人気?
結局これから外へ行こうとする者への訓練もかねて出来るというので、村中に作ることになったのは言うまでもない。
誰かがこれで遊んでたら、村の外の警戒もすぐに出来るし、良かったと思うことにした。
ちなみに訓練も兼ねるということだったから、ロッククライミングも作ったよ。
お昼過ぎ約15時ごろ。
楽しそうな声を聞きつけたのか、村中から公園に人が集まってきた。
「マリー、相変わらずやっとるな」
「マリー、これはどうやって遊ぶの?」
「あの樹の上の家は何?」
矢継ぎ早にくる質問に全部答えるのは大変。では、どうすればいいか。
「みんなー!大人たちにこの公園の遊び方教えてあげて!」
「「いいよー」」
こうすればいい。子供たちが大人に何かを教えることなんてあまりない。それが出来る今を逃すなんて勿体ない。
我先にとみんな大人たちを連れだしていく。
サンたちも一生懸命誰かの手を引いて、家に案内している。この村には家族を持たない一人暮らしの者もいる。だから丁度いいと思うんだ。縁って大事だから。
笑顔に囲まれるって、いいね。
「マリー・・・」
あ、そうだね。あたしもお腹空いたよ。訴えかけるようなテーレの顔に、約束したことを思い出す。
「家に戻って、パンケーキ作るね」
「そうよね。お腹空いたわよね。パンケーキ楽しみ」
テーレったら最近大人びちゃって。
いつだってテーレだったら、声に出して食べたいと言ってくれたら作るよ?
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