84.公園づくり 3
結局気が付けば夕方。遊び疲れるまで遊んだ結果だ。
やっと子供らしく、スローライフに近づいたんじゃない?
夕食の時もエディと一緒に公園の楽しさを散々語り、お風呂に入ってベッドで横になれば、あっという間に朝だった。
今日も公園づくりやるぞ!
朝ご飯を食べ精霊たちみんなと公園に向かう。途中ぴぃちゃんから魔力くれみたいな念話が入ったので、小屋を見ておこうと寄ってみた。
中々立派な小屋。一人暮らしの部屋以上に広いよ。そこはまあ、済んだことだからいいとして。うちの今の家より広くない?
「ぴぃ!(中々でしょ!)」
自慢された!
「そうだね」
エディとミミが頑張ったよ。二人を心の中で称賛する。
「ぴぃぴぃぴ(一週間もすれば、大人だからね)」
「早くない?」
「ぴぃ(こんなものよ)」
ひこちゃんにそうなの?って視線を投げたら、やたらと疲れてた。
「どうしちゃったの?!」
可愛さ全開のひよこのはずなのに、以前のアラフォーのあたしと同じような空気を感じるんだけど、なにがあった?!
急いで魔力を注ぎ込んで、しぼんだように見えた顔をふっくらさせる。
「ぴ、ぴ、ぴ(死ぬかと思った)」
「何があったの?」
「ぴ、ぴ、ぴ、ぴ、ぴ、ぴ(魔力を嫁に吸い取られてた)」
「よ、嫁。嫁かあ。間違いではないのだけど、なにこの敗北感」
「ぴ、ぴ(気にするな)」
何だか腹が立ってきた。ひよこの癖に、ひよこの癖に、何だっていうのよ!
あたしだって、あたしだって、この世界できっと・・・。多分、もしかしたら・・・。
癖のあるやつらを連れているあたしって、女としての需要あるのかな?
きっとあるよね?こんなにチートなんだし!(面倒にもまきこまれるけど)
くそっ!
甘酒飲んでから時々口出してくるやつ腹立つわ!こいつが出しゃばったら、碌なことがない気がする。
この話題はなし!
取り敢えず魔力渡して元気そうなのを見たから、気を取り直して公園に行こう!
公園はまだ子供たちの姿はあまりなかった。午前中の家のお手伝いがまだ終わってないのだろう。だったらソルに昨日の微妙なトランポリンを作り直してもらおう!
「ソル、お願い。こんな形で綺麗に作って」
「いいぞ」
「テーレ、ゴムの実何本か植えて欲しい」
「昨日のと同じでいいのね?」
「シン!小屋を作るから手伝って」
「俺は忙しいから「リュビが今はいるから大丈夫だよね?」」
「・・・そうですね」
「空間の拡張の仕方をしっかり習っておきたいのだから、よろしくね。師匠?」
「仕方ないな」
風の上位精霊、チョロすぎない? 昔騙されてひねくれものになったから、今があるのかな?
まあ、今は小屋が出来ればいい。小屋作って空間魔法ばっちりなら、みんなにもマジックバック作っちゃうもんね。
ツリーハウス予定の樹にシンと一緒に登る。
「ここに小屋を建てて、中を広げるの」
「小屋はテーレが作るのか?」
「え?」
「なんだ」
「そんな発想なかったよ」
「意味が分からない」
本当に意味が分からないね。そうだよね。あたしが真四角の壁みたいな小屋作るよりも、ツリーハウスなんだから、テーレに始めから作ってもらったら良かったんだ。あたし、思った以上に頭が固かった。チートな精霊がいるのに、ね。
「テーレ!俺がイジメたんじゃない」
どうやらあたしが落ち込んでしゃがんでいるのをみて、テーレがシンを睨んだらしい。
まあ、シンの言葉のせいであっても、あたしが勝手に落ち込んだだけだからなぁ。
いつも飄々としているシンが慌てるのを見るのは、新鮮でいい。
「ここにツリーハウスを作るというから、テーレに頼めばいいと言っただけだ!」
おお!珍しく、長文しゃべった。
テーレが本当?とあたしを見たので、頷いた。
「テーレに頼むって発想がない自分にショックを受けててたの」
「そうなんだ。それならいいわ。どんなのを作る?」
「えーとね。茸みたいな感じの可愛い小屋。茸の傘の部分に光が入るように、ガラスが入っているといいな。出入口は2つあって回転ドアがいい」
「それなら、難しくないわね。ここは広いから大きいのを1つ作るわね。他の所は小さいのを作って、樹と樹を梯子みたいな道を作って繋げればいい?」
「テーレ、天才!」
「サクレから生まれたドライアドなんて、この世界に一人しかいないからね!凄いのよ!」
テーレが声を高らかに笑う、悪役令嬢に見えるのはなんでだろうね。
それに何故かシンがテーレの従僕に見えてくるから不思議だ。
――気が付いたら、この目の前にキノコのようなツリーハウスが出来ていた。
ぐるりと周りをまわってみる。ドアと屋根はソルと合同でするらしく、穴が開いている状態だけど、公園にある休憩所と思えば、すぐにでも使える感じだ。
早速中に入ってみる。
「お邪魔します」
うわぁぁぁ。広ーい。
見た目6畳ぐらいしかないのに、中は30畳以上に見える。ちょっとした宴会とかできそうだ。一時的な避難所としても使えそうで、とても満足。
木の香りがとってもいいし、屋根が高いから屋根裏まではいかなくても、ロフトとかあってもいい。夢が広がるよ!
「テーレ、最高!天才!可愛い!」
「でしょ?」
「後で肉食わせろよな」
呟くシンの声は、残念ながらテンションが高いマリーには届かなかった。
読んで頂き、ありがとうございました。