82.公園づくり 1
エディのトットとコッコの小屋を作っているのをこっそり窺う。
サンとああでもない、こうでもないと話し合いしながら、土台を作っていた。
先に急ぐ、トットの小屋を作るらしい。
順調そうなので、取りあえず先にソルに滑り台を仕上げてもらうことにした。
「さあ、ソルやるよ。まずはね、この滑り台をスルーッと滑るようにしたい。表面を何かで加工すればいいのだけど、どうすればいい?」
ステンレスの作り方なんて知らないし、フッ素加工なんて言葉は知っていても、やり方とかどんなものだとか説明なんて出来ない。チートな精霊さんにお任せなのである。
「一番早いのは、全部ミスリルで作るのが早いが」
「いや、それはダメでしょ」
反射的に反対した。村の武器でさえミスリルじゃないのに、遊ぶ器具にミスリルで作ったなんて言ったら、どれだけ説教されるか。
「なんでや?」
ソルさんや、以前の言葉に戻っているよ。どれだけミスリル使いたいの。
「・・・手間がかかるが、しゃーない。ミスリルを車のボディを作るみたいに薄くのばして、焼きつけるか?大精霊になったリュビの火力ならいけるじゃろ」
「それでお願い」
「しゃーないな。久々に遊べるもん作れるから、我慢するわ」
なんだか職人さんモードになったソル。楽しそうで何より。
それにしても、伸ばされたミスリルが滑り台の上に乗るだけでも、見栄えがいいね。キラリと光って、高級スポーツクラブみたい。
ゴムみたいな素材が合ったら、トランポリンも欲しいな。
「ねー、テーレ。ゴム・・・うーんと、伸びる樹脂を出すような樹知らない?」
「大陸のどこかにはあるとは思うけど、この森にはないわよ」
「そっか。飛び跳ねて遊べるものが欲しかったんだけど」
「マリー、何で悩んでるの?ないなら作ればいいでしょ?」
おおっ。
確かに、そうでした。食べ物じゃないから、想像つかなかったよ。どうせ作るなら樹脂を取って、なんて面倒なことしないで、実を溶かしたらゴムになるとかの方が楽でいいかな。
「じゃあ、テーレお願い。樹に成った実を熱で温めたら、ゴム、びよーーーんと伸びる繊維になるのが欲しい」
「一度作ってみるから、イメージと違ってたら教えて」
「わかった」
綿や米・小麦を作る畑の裏だったらきっと問題ないはず。ゴムがいい感じで出来上がったなら、この村の戦力になるから果樹園とは反対の方に作ってもらうことにした。
布を色々とやってくれる人たちとも近いから、ゴムの入ったパンツとか、ズボンとか、髪の毛を結ぶシュシュとか、相性がいいからきっと気に入るはず。
流石に今はもう少しランクアップしているが、今まではパンツとか買うのが高かったから、襤褸切れで使い捨てに近かったからね。
・・・・・・。
これ口に出したら、最優先になりそう。パンツは欲しいけど、欲しいけど、今日の最優先は公園なのだ!
ソルは滑り台を楽しそうに見ていたから、公園をお願いしておこう。
てくてくとテーレと一緒に畑の裏に回って、強固な防壁の内側に1つ作ってもらった。あまり大きいと取るのが大変だから、果実樹と同じぐらいの大きさにしてもらう。
創造も育成もチートなテーレさんにお任せである。
森の精と共に祝福の歌と共にできた木は、あっと言う間に白い10cmぐらいの丸い実をつけた。
1つ取って触ってみると程々に弾力のある感触で、軟球のテニスボールのようだ。
ぷにぷにと気持ちがいい。
これだけでボールとして活躍できそう。
防壁に投げてみる。
割れることなく形が崩れることなく、ぽよん、と返ってきた。
これだけでも面白い。実験と称して何度か投げてみるけれど、形が崩れることなくちゃんと返ってくる。
「テーレ」
壁に向かって投げてポンと返ってきたのをテーレが受ける。
「マリー」
ボンという感じであたしより少し強く返って来たのを受ける。
「テーレ」
「マリー」
お互いの名前を呼びながら遊んでいると、エディが「ずりぃ」と割り込んできた。
あ、ごめん。忘れてた。
お詫びもかねて、ゴムボールを3つ渡して広場で遊んでもらうことにした。
「投げ合って遊んでみて。壊れないかどうかの実験お願い、エディ」
実験のお願いで気を取り直したエディは、鼻の下をさすりながら「実験かぁ。仕方ないなぁ」なんて言いながら、メッチャ笑顔で広場に行った。
これでエディのことは問題ない。
ちょっと遊んでしまったけれど、これからゴムボールを集めてちゃんとシートみたいにできるか実験だ!
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