表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/193

81.閑話 ダンジョン

「おいっ。我にどうしろというのだ」

「そんなこと、僕に聞かれてもね。元魔王(笑)(クロ)がする仕事でしょ」

「そうだな。我は元魔王(笑)(クロ)を見張っているのが役目だ」


「お前ら、その呼び方止めろ!」

「こんな簡単なダンジョン、文句言う前にさっさと攻略したら?」

「そうだな。あくびをしながらでも、いける」


だったらお前らがしろよ。

恨めしそうに二人を見るが、どこ吹く風だ。


我は普通にダンジョンの主になって、呑気に暮らすつもりだった。周りが勝手に盛り上がっただけで、どうこうするつもりなどない。それなのに、勝手に祭り上げた奴らを粛正するとか、どんな罰ゲームだ。


今でも我の気配を感じただけで逃げてしまう。いや、我の気配だけでなく、どう考えても同行者に問題があるとしか思えない。神気を放つ天馬に聖気を放つフェンリル。魔の気を持つ魔物たちは、これだけで恐れをなすのは仕方ないことだ。

逃げ遅れた者は懇願するように、ただひれ伏すのだ。この状態で、ダンジョンを攻略して魔石を保存しろと?

逃げるばかりの者を追い回すとか、まるで弱い者いじめではないか。


完全にその考え自体が魔王のものではない。

そのことにクロは気づいていないが、全くやる気は出ないまま、ただダンジョンの中を歩いていた。


入口から一階までは本当に森の中でウロウロするぐらいしか出来ない、低俗な魔物ばかりなので放っておいても問題ない。そのまま二階へ降りたがすでに避難し終えたのか、闇に隠れることのできる蝙蝠だの、ネズミみたいな小動物が魔物化した者しかいない。そのまま放っておこうかと思ったが、疫病をまき散らす可能性のある者は、消滅させろと言ってたか。

仕方ない。

『闇の牢獄へ誘え』

ブラックホールに突っ込んでおけば、こちらには戻って来れまい。

二階はこれで終わりだ。


「おい、お主。それでは魔石がなくなるではないか」

チッ。

面倒な。気付きやがった。


三階に下りれば、一気に個体が大きくなった。外に居れば肉になるので役に立つが、ここではどんな感じになるのか、試しに逃げそびれた(オーク)に一振りしてみた。

おぉ?かなり少なくなるが、一応肉になるのか。


「やっぱり少ないのぉ」

フェンリルの爺さんは、残念そうに肉の塊を見ている。

そんな目で我を見ても、肉が増えるわけない。


「腹も減ってきたから、さっさと制覇するか」

フェンリルの爺さんがボソッと言った後、その場に残っているのは肉の塊と石ころのような魔石だけだった。

「ほら、お主、サッサと拾え。四階に行く」

いやいやいや、爺さん、見張りだと言ってなかったか?なんで気合が入ってるんだよ。


「えー、長がやるなら、僕もやるー!」

我らを置いて四階を降りた天馬(シエロ)。慌てて追いついてみれば、そこには足に踏み場もないほどの肉と魔石があった。


「ほぉ、やるのぉ」

「ここには(ミノケンタウロス)(オーク)しかいないから、簡単だったよ」

どうやら三階の魔物が四階に逃げた結果、すし詰め状態になってしまい、肉の塊となったようだ。

我がここに居る理由がいるのか?


「ほら、さっさと拾って」


我はなんでこの時代に目覚めたのか。

魔王と言われても、以前の記憶など殆どない。今あるのは枯渇している魔力を渇望し続けていることだけだ。

だからこの中(ダンジョン)でのんびりして要られたら、それだけで良かったはず、なのだが・・・。


「早くしないとマリーが突入する」

「はあぁぁぁああ?」

「だ・か・ら、マリーが本能のままに甘酒を口にした」

「あ、あぁ・・・」


予知がマリーが喜々として洞窟に入っていくのを映し出している。

きっとあのまま突入しても鼻歌交じりに浄化して、なんの問題なく回収するのはわかっているが、過保護なこの者たちが見逃すとは思えない。

それで気合が入っているのか。


「さっさとしろ。元魔王(笑)(クロ)。このままでは我の飯が少なくなるではないか」

爺さんは飯の心配かよ。

まぁ、マリーが魔力くれるつーなら、頑張ってもいいがな。


元魔王(笑)(クロ)の癖に、厚かましいこと思わないでよね」

本当に煩い神の腰巾着め。


へいへい。

我が魔王だったのは遥か昔。今はタダのクロ。

恐怖に陥れるのが仕事ではなく、この世を安寧にするとか、新しい主の考えていることはよくわからん。

魅了も、眷属化も使えないのなら仕方ない。マリーの命に従って、ダンジョン制覇してやるよ。


「爺さん、腰巾着、先に行く」


ダンジョンの中は闇ばかり。その中で我にわからないものはない。コアを見つけて乗っ取れば、ダンジョンは簡単に制圧できる。


まだ出来たばかりのダンジョンだ。コアは簡単に七階の最奥で見つかった。


「悪いな。我も仕事なのだ。仕方ないから、お前の主になってやろう」

少しだけ反発が来たが、すぐに従順になった。力の差が理解できて何よりだ。


「ダンジョンマスターとして命じる。このダンジョンを女が喜ぶものに作り替えよ」


ここに女が集まれば、質のいい魔力の供給が我にされる。

いいアイデアではないか。



そんなクロの目論見が崩れると知るのは、もう少し先。

冒険者やダンジョンに入るような力を持つのが、圧倒的に男が多いということを、クロは頭からすっぽりと抜けていた。

マリーが喜々として洞窟に入るので、基準がずれているのは仕方ないのかもしれない。

どこか抜けているクロであった。


読んで頂き、ありがとうございました。

ブックマーク&評価、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ