80.宝箱の中身
ギリギリ間に合った!
起きたら朝で、まあ・・・。母さん、父さんともに叱られ、エディには探検が出来なかったと拗ねられた。
正直昨日はあれだけテンションが高かったのかと思わないでもないが、ここで色々言い訳すると折角美味しく飲める甘酒が遠のくので、神妙に聞く。
社会人として培ったノウハウを活かし、目を伏せて、頷き、返事もちゃんとしているのに、何故彼らは溜息をつくのか。
「で、結局どうなったのだ」
「ちゃんと聞いてないけど、ダンジョンは制覇したと思う。だから父さんたちが見つけた洞窟は、何の問題もなくスムーズに進めたし、中に入れたよ」
言いながら、思った。
空の精が早くからこちら側に居たら、もっと簡単に事は進んだのだと。今更だけどね。でもそれは仕方ないことだと思っている。
それにリュックを貰う時にシエロが迷惑料と言ってたのも、今なら頷ける話だ。
「あとね、今日は火の精の証をサクレの下に埋める予定だよ・・・シンとリュビたちと午後に」
言いながら、大変なことに気が付いてしまった。火の精の証を埋めるのは、精霊王の近くじゃないほうがいいよね。多分・・・・。場所はシンに決めさせればいいや。
「あたしはね、公園を作るの。エディも一緒に作ろうね!後はトットの小屋をエディに作って欲しい」
「仕方ないな、作ってやるよ」
エディは誤魔化されて、機嫌を直してくれたみたいだ。
父さんと母さんは、微妙な顔をしている。
「父さんと、母さんには後で見てもらいたいものがあるから、エディは出来たら先にトットたちの小屋をお願い」
「そうね。サンたちが世話してくれるようだから、小屋も相談しながら作るといいわね」
「小屋か・・・。わかった。ミミと一緒に作ってみる」
あたしの提案に母さんが後押ししてくれたので、この後エディは小屋づくりとなった。
本当は宝さがしもしたかったエディだから、一緒に見せてあげたいんだけど、大量の金貨とか見せて大丈夫なのかあたしにはわからない。誰かにポロッと話して、それが犯罪を引き起こすとかしたくない。魔が差すなんていうキッカケなんて、無い方がいい。
ご飯を食べエディが居なくなった後、あたしはリュックからドドーンと金貨が入っている袋1つと宝箱を出してみた。
改めて日が当たる場所で見ると、迫力だね。
あたしとエディが入れるぐらいの大きさの宝箱なんて、映画の中でしか見たことない。
「これは・・・まさか!」
「中身は見たの?!」
「あ、中身は見ていない。後でもいいかなぁって」
「マリー、何でも一度は鑑定をする癖をつけた方がいい。ミミックみたいな罠がないとは言えないからな」
なるほど・・・。確かにそんなこと頭の隅にもなかった。風の上位精霊が管理しているから、問題ないと思ってたよ。
「まあ、罠だったら触れた途端に襲われるから、これがそうじゃないことは分かっている。それにしても、凄い入れ物だな」
「本当に。ダンジョンでもこんな大きな宝箱は出たことないわ。ダンジョンの宝箱は中身を取れば、箱ごとなくなるから見る時もあまりないし」
「へぇー。面白いね」
「マリー、わかっていると思うが、一人でダンジョンに入るとか、駄目だからな」
「大丈夫だよ。今あるダンジョンはクロが管理する予定だから」
「そういう問題じゃない!」
「分かってますぅー」
ちょっと拗ねたように、小声で返事をする。
仕方ないけれど、釘を刺されてしまった。凄い物が出なくても、宝探しって、本当にワクワクするんだけどね。暫くは公園作って遊ぶから、いいもんね。
「じゃあ、開けるね」
ちょっと、待ってなんて声なんて、聞こえない。
「オープン!」
ん?
小分けされた袋が一杯。
一番小さいのを1つ取って、中身を覗いてみた。
何か高価そうなお金ポイなにかだった。
鑑定してみると、聖令大金貨と書いてあるが全く価値が分からない。
「ねえ、父さんこれって・・・」
続きは興奮した父さんによって遮られた。
「聖令大金貨だとぉ―――――――!」
「ホセ、叫ばないで!」
母さんに叱られて、一瞬真顔になったもののすぐにまた顔が興奮してくる。
「リセ、あの聖令大金貨だぞ!」
興奮している父さんの言う事を纏めると。
聖令というのは世界樹があった時の暦らしく、戦争や内乱など大陸のあちらこちらで波乱が起きていた。その為、色んな国が消滅した時代で、その時の魔道具や貨幣、膨大な資料が失われている。その中でも聖令大金貨はミスリルで出来ているため、今の大金貨よりも何十倍も価値があるのだとか。今の大金貨が金の含有量が10%前後(噂)と言われているのだから、言うまでもない。
今までお金なんて使うことがなかったから、この際習っておく。
小銅貨 1円
大銅貨 10円
小銀貨 100円
大銀貨 1,000円
小金貨 10,000円
大金貨 100,000円
普段隣村でやり取りしているのは銅貨・銀貨が多いとのこと。
ちなみに今まで買っていた塩が100g小銀貨5枚(約500円)というのだから、何とも言えない。危険手当が含まれているために高いのか、足元を見られているのかはわからないけれど、それらが賄えるだけで食卓が豊かになるというのは、間違いない。
お金のことを聞くと、ここで作られた物どれをとっても大変になるということが、よくわかった。外への持ち出しは、色々と吟味が必要だね。
だけど、あったらいいな、というものを自重はしない。
オレアを絞って植物油を作れば、天ぷらや色んな肉を上げることもできるし、ドーナツとかできる!
それに落ち着いたらショウガやレンコン、ごぼう・人参も作るんだ。美味しい煮物やスープに必要なものは、大事なのだ。
話が逸れた。
取り敢えず、この宝箱はリュックの中で封印ということで決定。
普通に置かれていた袋に入った聖令小金貨もどうやら純度の高い金で作られているようで、普通に使えない金貨だった。小金貨で10倍近く価値が違うなら、大きな街や都市でなければ使えなさそうにない。
いざというときのタンス貯金になりそうだ。
この金貨袋は父さんに預けようとしたが、断られた。
家のどこにおいても落ち着かないし、持って歩くとかもってのほかだそうで、絶対に誰にも渡ることのない神特製リュックに仕舞われることになった。
シンが管理しているあそこにある宝物は、どれも永久保存物ばかりということだ。
うん、歴史的価値がある物として、美術館と思うことにする。
ただ、村の人たちにも手間をかけてもらった分、これがあったよ!って分配出来たら良かったのだけど、こればかりは仕方ない。一番の目的、火の精の証は救出出来たのだから、良しとしよう!
「リュビ、シン。午後お昼食べたら火の精の証を埋めたいから、良い場所を見つけておいて」
「じゃあ、父さん、母さん。公園作ってくる!テーレ、ソル行くよ!」
みんなで遊べる公園を作るのだ!
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ブックマークがポンと増えたので、今回の更新、気合で間に合いましたw