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78.甘酒と精霊王

みんないい感じで酔っ払いだ。

いいなぁ。お酒飲みたい!

っと、今までなら指を銜えてみていたが見ていたが、今日のあたしは違う!

ふふふっ。

何故ならみんなが飲み始めた純米酒を見て、酒粕があることを思い出したのだ。

勿論水の精もこの純米酒の匂いにつられて、やって来ている。酔っ払いに交じって一緒に踊っている姿は中々シュールだ。


『一仕事の後の酒、酒が美味い』

なんて、それぞれが空を舞っている。

そこにグンミもルコもご機嫌に交じっている。


『禊』という大仕事の後だ。労っても、いいと、思う。思うのだけど、この分だとこれで多分なくなるね。

樽が今だけで10樽無くなっている。全部で15樽出来たと聞いてたけど、呑兵衛な水の精が自重してないからね。まあ、なくなればまた、畑に水が敷かれて田んぼになるだけの話だ。

酒を飲んだ大人たちで、頑張って貰いましょう。

そんな酒事情よりも!酒粕だよ、酒粕。甘酒作るんだ!


蔵に転移して、常備されている桝に酒粕を詰め込む。予備で3つほど詰め込んだらリュックへイン。

コップへ酒粕を入れて、砂糖を足す。水を注いで、温めながら混ぜれば出来上がり。


かなり絞り込んだ酒粕だから、酒の度数は殆どない。だけど気分だけは味わえて、美味しいというのは大事なのだ。

一口、口の中に入れる。

懐かしい香りが口いっぱいに広がって、昔の冬を思い出す。

うん。美味しい。

もうすぐ夏だから、生姜入りで冷たいのを作ったら、きっとみんな喜ぶと思う。


確か疲労にもお肌にも良かった・・・、から。きっと母さんたちが知ったら、フィーバーするかな?

石鹸とか、パックとか、そこは着手はしない。

しないんだからね!

今は、甘酒の風味を楽しむだ。


一杯飲んだらなんだか、ほっこりして温かくなった。

幸せだなぁ。なんて、どこの歌手だ。

―――なんだか楽しくなってきたよ。

それに何だか無敵な気がする!

何しよう!


楽しいことするなら、皆と一緒にしたいよね。

よし!ソルやリュビ、テーレに会いに行こう!

うん!それがいい!(それがいい!)

ん?ま、いいか。


『みんながいるところに転移』


目の前に現れたあたしにみんながパチクリと目が動く。

「会いに来たよ!」

「ちょっと、マリー一人で来たの?!」

「そうだよ。テーレ。なんだか楽しくなってきてね。みんなに会いたくなったの」

「ちょっと、どこの酔っ払いよ!マリーもしかして呑んだの?」

「うーん?酒粕にお砂糖入れて溶かしたのを飲んだだけ。美味しかったよ!みんなも飲む?」


コップを次々に出して、自分が飲んだと同じようにして渡した。

「さあ、みんなで飲もう!乾杯!!」


少し鬱蒼とした洞窟前の森。そんなのが全く気にならないぐらい、皆と居ると楽しかった。

ソルとリュビに抱きついてウリウリともふもふを楽しみ、テーレに頭を撫でれて、始終上機嫌だ。


「よーし、このまま洞窟探検だ!」(行こう!)

突然やってきて、そのままなんの準備もしないで中に入るというあたしをみんな止めた。


「ダメだって」

「そうだよ。ホセたちを待ったほうがいい」

「うーんとね。大丈夫!あたしの冴えわたる勘が行けと言っている!」(そうだそうだ!)


うんうん。頷く。

その言葉と態度に精霊たちは理解を示した。精霊王とクロがちゃんと『禊』により分離したことも知っているし、最悪な状況にはならないと、いうことは本能でわかっているからだ。


「仕方ないわね。リュビ何かあったらわかってるわよね?」

「ああ、勿論だ。俺はマリーの護衛だからな」


ああ、やっぱりあたしの精霊たちは、カッコいい!

それに大丈夫だよ。夢の中で見た道は覚えているし、今だと何かが囁いている。

あたしは迷うことなく突き進み、此処だという場所で止まって、リュビを抱きしめ飛び込んだ。

そこにあったのは、たくさんの火の精の証と財宝。人間の欲の塊だった。


「ごめんね。たくさん待たせちゃったね。もうあなたたちは一人じゃないよ。サクレと一緒に沢山休眠したら、また生まれようね」


この空間には、夢で見た時のような淀みはない。

これは水の精たちが体を張って『禊』をし、空の精が仲間になって、精霊王が正しく眠りにつき、クロがダンジョンを制圧したからだと、ここに入った途端に確証に変わった。

それならば、やることは1つ。


「シン」

空の精の名を呼べば、待っていましたとばかりにやってきた。

洞窟の更に奥の隠された扉をシンの言霊で開かれた。


中は祭壇のような物があり、リュビと一歩入ると祭壇の蝋燭に火が灯る。

火が灯った中心には、火の大精霊の証が鎮座していた。

そこに何故だかわからないけれど、桝に入れていた酒粕を奉納した方がいい気がした。

「どうぞ、お納めください」


声と共に手を合わせると、眩しい中に温かさを感じる光が、洞窟内を照らした。

光が収まるとそこには酒粕の桝がすでになく、大精霊の証を囲んでいた灯が消えていた。

これで良かったのだと、迷うことなく大精霊の証を掴んだ。

それを見たシンとリュビは慌てている。

可笑しな二人だ。


「これでリュビが大精霊だね!」


本当であれば、ちゃんとした儀式の中次代がそれを受け取り引き継いでいく。それを鷲掴みしてリュビの額に吸い込ませるとか、前代未聞の火の大精霊の継承だった。


「あれ?ダメだった?」

「あ、いや、そうじゃなくて」

シンがものすごく動揺して、首がクルクルと回っている。あまりにも可愛いので、頭を撫でた。


それを見たリュビが大声で笑った。

「悩んでいた俺がバカだった」

「何か悩んでたの?リュビが大精霊で、精霊王の門番になったというだけでしょ?」

「そうだけどな・・・」


あたしはリュビがなんでそんなに悩んでいるのかわからなかった。何故なら祭壇が光に包まれた時、白銀の綺麗なふわふわな綿菓子のような姿がぼんやりと浮かび、とても慈悲深くて、優しい声が頭に響いたのだ。

『リュビは大精霊になっても、あなたの火の精であることに違いはありません』と。

だから迷わずリュビに大精霊の証を渡した。


「あ、もしかして、リュビは大精霊になったら精霊王の門番としての役割があるから、あたしと一緒に居られないと思ってる?」


リュビが頷いたのを見て、それでかぁと納得したが、そのままあたしが伝えてもわかってもらえるかな?

そんな時、洞窟内に声が響く。


『聖女と共に、皆に祝福を・・・リュビの願い、叶えましょう』


精霊たちの反応(歓喜極まって、震えている)を見て、確信した。

ああこの声の主は真の精霊王だと。

誰かを悲しませるようなことは、絶対にしない。

誰もが復活を望む、精霊王。


「ありがとうございます!誠心誠意お仕えいたします」


リュビの誓いの言葉に、笑みが返された気がした。


大丈夫!

お酒も出来た。

サクレも育ってるよ。

精霊達も揃った。

この世界は怖くない。

後は、貴方の傷が癒えるのを、みんなで待ってるよ!




【鑑定】

森の精の祝福を浴びた米と精霊の泉の水で作られた酒粕。

・・・更に精霊王の祝福により、幸福度Max。あらゆる幸運を引き寄せる。

第六感が働く



読んで頂き、ありがとうございました。


ブックマーク&評価&誤字脱字報告ありがとうございます(*'ω'*)


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― 新着の感想 ―
いつのころからかわからないですが 甘酒=米麹甘酒になってますよね。 子供のころの正月の神社で振舞われる甘酒は子供禁止とかの記憶があるけど 記憶があやふやですね
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