77.村への帰還=宴会
アンデッドが祈りにより天へと還った後、湖の中で音がするので覗いてみた。元々居たのか先ほどの子供なのかわからないけれど、沢山のドジョウらしきものが沢山いた。
「ああ、やっぱりテンポだな」
「「テンポ?」」
エディと一緒に名前を聞きなおす。
「そうだ。きれいな川に泳いでいる魚だ。特別美味しくはないが、栄養満点な魚だ」
「うえぇ、あれか・・・」
エディは覚えがあったのか、それだけで興味を失ったようで獲ろうとしたのを止めた。
どうやら近くの川にもいるらしい。
貴重なたんぱく源としてあたしも食べたことがあるようだ。
川の魚は元々どれも泥臭いと思っていたから、どれかわからないね。
見た目も味も前世で言うドジョウに似ている。
確かにあれは普通に食べたら、あまり美味しいと思えるものではなかった。
だけど柳川風と甘露煮だけは美味しかった記憶がある。
ふふふっ。
これは調味料の出番ですよ!
卵はまだコッコがひよこだから難しいけれど、先には食べられるのでないだろうか。
試しに少しだけ作ってみよう。
「マリー、獲るのか?」
「あ、うん。思っていた奴と同じだったら、甘露煮にすれば酒のつまみにも、保存食にもなるよ」
「そうなのか?!」
酒のつまみと聞いて、ちょっとやる気が出た父さんが獲ろうとし始めたので、生簀とばかりに入れ物を錬成した。
ただどうやって獲るのだろうか。ざるみたいなものはないけれど。
「そりゃ!」
え、そんな原始的・画期的なやり方?
父さんがしたのは浅瀬に居るテンポに向かって斧を振る。
飛び出してきたテンポを風魔法で、あたしが作った生け簀に投げていく。
それを3度繰り返したら、生け簀の中が満タンになった。
えーと?
「父さん凄い!」
エディの声で、正解を知る。
「本当父さん凄いね!」
子供二人の称賛に、父さんはご満悦だ。
これでこの村の水問題は解決かな?
「グンミ・ルコ周辺の水の淀みはどう?」
「大丈夫になったと思う。後はダンジョンかな」
「まあ、あのメンバーならすぐでしょ。新しくスタンビートが起きなければ、魔物もこの村には来ないだろうし」
「それは大丈夫だと思うよ」
グンミのお墨付きももらったし、この洞窟はこれで終わりかな?
「宝物はなかったなぁ」
残念そうに言うエディ。
気持ちは分かる。何かに困っているわけでも、欲しいわけでもないけれど、宝物というだけでドキドキする。それが普通にポーションだったとしても、見つけたというワクワクがあるのは、素直に嬉しい。
「宝はなかったが、魔石は大きかった。これを売ればそこそこにはなるだろう」
売るかぁ。考えたことなかったけれど、外貨って確かにこれからいるよね。ソルたちが持っているものや、長達が捕ってきた大きすぎる魔石もあるけど、外に持ち出しにくい。それなりの魔石なら、売りやすいという利点がある。
ということは、クロがダンジョン治める前に出た魔石、どれぐらいの量や格付けになるかわからないけれど、後で見せてもらおう。
洞窟を出ながら、そんなことを考えていた。
それから・・・。
忙しかった。
カランキ村にいる精霊村から来た人たちのところに、父さんと一緒に行った。
始めの約束通り野菜やお肉を渡したし、水は元に戻ったし、病人は癒せた。最低限のことは出来たのだから、この後トットを貰って帰ろうかと話していたという。
それがいいだろうと、父さんも同意し戻る準備を始めた。
野菜などの管理は、一緒に旅したカランキ村のおじさんがやるといっているので、任せる。後はこの村の人たちがどう選んでいくかだ。
何か言いたげな顔をしているカランキ村の人たちは放置し、選んで貰ったトットを10羽。
籠に入れ、荷馬車に乗せれば準備万端だ。
忘れずに荷馬車にテンポも入れた。
村を出る前におじさんには、村の外れには洞窟があり、その中にはテンポがいるので食料になること。
水が浄化されたこと。そしてその洞窟の中に果物を置いてきたことを話した。病み上がりの人に食べさせて欲しいと。きっとおじさんのお父さんのことがあるから、ちゃんと食べさせてくれると思う。
さあ、面倒なことになる前に、村に帰ろう!
「シャンス!行こう!」
嬉しそうに駆け寄ってくるシャンスに抱きつき、そのままじゃれたいのをグッと我慢して、荷馬車に繋ぐ。
村を出てカランキ村の人が見えなくなった時、さっさと転移で帰ることにした。
「みんな荷馬車に乗って!」
何が起こるのかとワクワクしてみる人たち。ホント、順応性あるよね。アマンダなんて、何が起こるかわかっているから、みんなに自慢できるなんて笑ってるし。
流石に大人数になると無詠唱で、イメージだけでは厳しい。
「精霊村広場に、荷馬車に居る者全て転移」
ごっそりと魔力を奪われたが、倒れる程ではなかった。
魔力が上がったのか、距離が近かったのか、わからないけれど帰って来れたなら問題なし!
一瞬で帰って来れたことに感動している村人たちが騒いでいると、帰ってきたことを知った人たちが集まってきた。
集まってきたということは・・・。
「「宴会だ!」」
ですよね!
リュックからドドーンと鉄板を出して、勝手に焼いてもらうシステムにした。
もちろん始めの鉄板を熱くまで焼くのは、あたしの役目だけどね。
サンたちも巻き込んで、みんなで仲良く囲んで食べる。
そんなご飯が美味しいよね!
あたし?
疲れた時に食べたくなる、あれをこっそり作っている。
植物の油を作ることをすっかり忘れていたので、今回は仕方なく余っていた魔物たちからとった脂で作っている。
まず表面の汚れを洗い落として、ナイフで適当に切り、簡単に水気をとる。
錬金で作った鍋に脂を入れて、下に火をつける。油が出来たら、切った物を投入だ!
カラッと出来上がって塩を掛けたら、出来上がり。
ああ、久しぶりのフライドポテト。
ちょっと脂っこいけれど、元々この世界にある芋があっさりしているので、丁度いい。それにこの加護が沢山付いている体に、胃もたれなんてまずないからね!
まあ、食べ始めて失敗したことを知るのはいつもの事。
油が贅沢品だということを忘れていたよ。子供が好きなのは間違いなく、更にしかも酔っ払いにフライドポテトは、合いすぎた。
もっと作れという要求は自分たちでどうにかしてもらう。
作り方なんて簡単。作り方だけ教えたら、みんな自分で揚げ始めた。
あ、サンたちのは作ってあげるからね。
もふもふと可愛いものに、あたしは優しいのだ!
読んで頂き、ありがとうございました。
評価&ブックマーク、ありがとうございます!
励みになって、唸りながらも書けてますw