75.ホセ、父として頑張る
何とか更新!
アンデットがいるということで、一旦洞窟の前に戻ることにした。
予想としては水の中に住んでいる生物なのだが、高位になるような生物は全く見当がつかない。
まずはルコに一度戻ってもらい、マリーに聖水を作ってもらうことになった。
それにしても、疲れたな。
冒険者していた時よりも、今の方が冒険者らしい気がする。
お陰で段々と落ちていた体力も上がり、勘も取り戻せてきた。
いや、あの時以上に全体的な戦力は上がっている。
まず、武器(今はミスリルの斧)が違う。
魔力量が増えた上に、契約精霊『ダン』がいる。
そのお陰で森の中の探索などは、一気に視野が広がった。
そして身に着けているアイテム。
あの時は身丈にあっていない気がしていたが、今なら必要だったのかも、と思い始めている。
確か、『結界』『浄化』『腕力増加』『物理防御』(浄化には危険察知が遅れる為、臭いは塞がない)
このアイテムを付けていたお陰であのゴーレムを倒せたと思っている。でなければ、いくらミスリルの斧であっても、マリーがある程度ダメージを入れていたといっても、一発で倒せるはずがない。あの時のゴーレムの核は、精霊の森の奥に匹敵する大きさだった。
簡単に状況は聞いたが、マリーもエディも初の討伐を慌てずに、よくやったと思う。エディがいうには、長達が狩ってくる魔物に比べてたら、数は多くても小さかったから、という。何とも言えない答えだった。
結界の凄さを知っているからこそ言えることなのだが、村の者以外との戦闘だと、他の者を危険にさらせてしまう可能性があることを、言い聞かせなければならない。
俺自身がそれに慣らされてきているというのもある。たまにはエディと共に、他の村に行き違いを感じるのもいいのかもしれないな。
思考の波から戻ってきたとき、空間の揺らめきを感じた。
この魔力はマリー?
どうやら当たりのようだ。
「父さん、エディ来たよ!」
転移してきたことを普通のことのように言うマリー。相変わらず、息をするかのように簡単に魔力を扱う。扱う魔力も、アイテムもこの世界にない概念から出来ており、改めて凄さを感じる。
だが、可愛い俺の子供なのは間違いない。今だって・・・。
「お腹空いたでしょ!ご飯持ってきたの」
「シャンスは?!」
この場にシャンスが居ないことにとても残念な声を出す。
大丈夫だ。シャンスに負けたわけじゃない。
マリーはもふもふが好きだからな、仕方ないのだ。
転移で俺の位置を目安に来てくれたことは間違いない、ああ、間違いなのだ!
「シャンスは村の者と一緒にいてもらっている。この村は、なにかと物騒だからな」
「ああ、確かにそうだね」
「シエロは一緒じゃないのか?」
「シエロは長とダンジョンに行ってもらってる。父さんが帰ってくる頃には、多分ダンジョンを掌握してるんじゃないかな」
少し遠い目をして一人事のように話すマリーは、ちょっと大人びて見えた。
「何かあったのか?」
「うん。あったといえばあった。なかったといえば、ない、のかな?この洞窟と関係があるのかどうかもわからないけれど、・・・。簡単に言えば魔王?らしき者を封印して、精霊王が保護された」
「はああああぁあ?!」
「父さんも、そう思うよね。あたしも理解が追いついてないの。だから長に押し付けてきた」
意味が分からん。
「だからね。まずご飯食べよ。色々あってご飯食べ損ねて、物凄くお腹空いた」
「賛成!」
ご飯というキーワードで洞窟を見ていたエディが飛んできた。
「そうだな。まず飯にしよう」
食べる物を食べて体力と胆を練っておかないと、マリーの言葉に慄きそうになる。それは父親としてのプライドが許さない。なにがあっても、理解が出来なくても、構えておける度量が大事だ。
マリーがリュックから出してきてくれたのは、おにぎりと串刺しにされたお肉だった。
「シャンスが持っている残りが何かわからなかったから、取りあえず好きそうなものを持ってきたよ」
「肉!タレが付いている、柔らかい肉だ!」
まあ、そうなるか。
ミミが使った魔力の分もお腹は空いただろう。しかもこの村の現状を考えると、カランキ村の者の前で肉は食べづらい。
俺も落ち着いて食べるのは久しぶりだ。
辛めのタレがしっかりついた肉にかぶり付き、それをおかずにおにぎりを食べる。
旨い!
思っていた以上に腹が減っていたようで、串肉10本とおにぎり4つといつも以上に食べていた。
「満腹」
エディの満足した顔に、ほっこりする。12歳の少年らしい顔だ。
マリーも同じようにお腹が一杯なのか、お腹をさすっている。ポッコリでたお腹が可愛い。
大事なことは、それを声に出さないことだ。
大事なことなので二度いう。デリカシーがないのは、嫌われるからポッコリお腹が可愛い等と声に出さない、ことだ。
ダンもそれに深く頷いている。
通じ合ったところで、マリーから渡されたポムを二人で分け合った。
分かち合った者同士で食べる果物は、格段に旨いということが立証された。
マリーに白目で見られている気もしないではないが、気にしたら負けだ。
腹が落ち着いたら、さっさと洞窟をどうにかしようではないか。
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二日後には更新できそうです。