73.謎の黒き者
神気が収まった後出てきたのは、謎の男。
一瞬警戒はしたけれど、シエロが放った神気で無事なら悪い人間ではないということだ。
だが、こんな男の人なんて見たことがない。間違いなくこの村の者ではない。
ということは!シエロが誰か連れてきた?
ややこしい身分の者をこれ以上増やさないでよ。
さてさて、誰なのか鑑定。
うっおおおおおお!
最近、訳の分からない叫び声ばかり。
だけど、マジで?ってやつだよ。
姿おかしくない?
あ、いや、これが正解なやつ?
でも、絶対におかしいよ。
ガチャ卵から生まれてきたんだよ?
確かにいいように使われているガチャ卵だけどさ。それにしても、酷い使われ方だ。
あたしにどうしろっていうのさ。
「ああ、我は・・・」
「一応、名乗るんだ」
「ああ、我が『鑑定』を持っているから、一応見えるのか」
「そう・・・だね」
この会話だけで誰だかおわかりでしょう。
あの黒助なんだけど、何故か人型になってる。
それはいい、いいんだけど、なんで魔性の者みたいになってるのか謎。
『禊』受けたんだよね?なんでどこぞの堕天使様みたいな風貌は何なの?
そう、まるでイメージはルシファー。
水も滴る良い男の映像。前世でこれを流すだけで黄色声援があちらこちらから飛び、おひねりまで貰えそう。なんて想像してしまうほどに、混乱している。
「マリー!大丈夫?!」
シエロが慌てたようにやってきた。
「あ、うん。それよりも、これ、なんなの?もはや別の者と言われたほうが、あたし的には落ち着くんだけど」
「ああ、こいつね。マリーに逆らおうとしていたから、『裁き』で縛り付けてたの」
「ん?どういうこと?契約が切れたってこと?」
「いや、逆に支配しようとしていたから、枷をつけておいたから大丈夫。マリーの命令なしで魔力使えないから」
え?支配?話が全く見えない。
「シエロさんや、自分だけで納得してないで説明して」
・・・。
・・・。
いやいや、シエロと見つめあっても答えはわからないから。
シエロが振り向いた先を見ると、フェンリルの長が黒助に対して鋭く目を光らせていた。
『マリー、この状況でも変わらぬとは、恐れ入った』
このセリフはどちらのものなのか。
ああ!もう!折角公園作って遊んで、ストレス発散してたのに、ここで更に苛立つことがある?
前世の業がここにまで侵食してるわけ?
声に出して話してよね!
念話のように頭に響いても、誰かわかんないし!!
フェンリルの長とは契約してるわけじゃないし、どうやら黒助とは一方通行の契約になってるし。
もういいよ。
で?
「どういうことか、説明して」
「この者は黒助であって、黒助ではない」
・・・。最後まで話を聞こう。
「水の精が禊を行ったことにより、内に残っていた邪気は払われた。だが、その負の感情の方が大きかったらしく、分裂をした。ここにいるのが、負の感情だった者だ。本体の精霊王は、本来の形を取り戻したが、ここにおる黒き者に負けそうになったため、空の精が別の空間に運んだ」
「今は無害化しておるが、一筋縄ではいかぬ困った奴だ」
「この村に普通に居られるということは、問題ないということでしょ?」
「まあ、この村に限れば、な」
纏めると、黒助を水の精が『禊』によって、浄化した。
それにより、黒助分裂➡『精霊王』と『黒き者』
その黒き者が契約で縛られているのをいいことに、マリーを逆に支配しようとしていたところを、シエロが『裁き』でその能力を封印。マリーからの命令でなければ、力が行使できない。
正統な精霊王は、空の精が保護中。
ということなんだろう。
長髪で真っ黒な髪の毛に、黒い瞳。肌は陶磁器のようにつるんとしていて、綺麗で。背が高い。堕天使様!と拝みたくなる風貌は、まさに二次元の人だ。
この村にいる限り、邪気が活性化することがないならば、この村の門番として頑張ってもらうのもいいかも。
無属性 『鑑定』『予知』『』『応援』だったスキルが
闇属性 『鑑定』『予知』『魅了』『眷属化』
あたしを魅了で堕として、眷属化しようとしてたってこと?
なんて、恐ろしいスキル構成だ。
この持っている力を利用されるなんて、絶対にダメだ。
「マリーあまり心配しないで。マリーには魅了とか眷属化とかそんなスキル通用しないから」
「なんで?また神様が何かくれたの?」
「くれたというより、ついた」
「何かに取り憑かれた?」
「違うよ。称号が付いたって意味だよ。マリーのステータス見てみたらいいよ」
称号が付いたって、聖女的な物かな?
『ステータス』
new 称号『精霊の愛し子』『世界の申し子』・・・すべての異常状態を無効にする。
――有難く、頂いておきます。
まだ会えてない精霊王、ありがとう!
世界の申し子はよくわからないけど、迷惑料だと思っておきます。
ありがとう!
「腹が減った。何か食わせてくれ」
よくわからない黒き者の「黒助」お腹が減るようです。
段々食い扶持が大きくなる。お金はかからないからいいけど、料理作るのが大変。作るのも嫌いじゃないけど、作ってもらったものを食べるほうが好きなんだよね。専属の料理人誰かなってくれないかな?
読んで頂き、ありがとうございました。
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