71.ブランコと滑り台
どうせならここを公園と名付けて、遊び場にしてしまえばいい。サンたちがこの村にいる子供たちと仲良くなるのも大事だ。
きっと村にいるリリーたちもこれからつくる公園は、気に入るはず。
まずはオーソドックスなシーソーとか、鉄棒、砂場は作るのは決定。
それ以外で飽きない遊びが出来るものと言えば、やっぱり長い滑り台だと思う。
丘から滑るとか、アスレチックのような滑り台も人気があった。
この村で出来そうなのは、いい感じの木を育成して滑るとか、どうだろうか。あたし的には良い気がする。ちゃんとした上り台をつけたら、木登りした気分だって味わえるし、屋根をつけて秘密基地ぽくするのも、楽しそうな気がする。
だってね、空の精と契約したんだよ。使わないでどうするって感じじゃない?空間魔法。
子供3人も入ればぎゅうぎゅうな感じの見た目なのに、中に入れば大人10人は入れるとか。ロマンだと思うのよね。
しかも、いざという時の隠れ蓑とか、避難場所にするのもいい気がする。
他には、つり革みたいのはどうだろう。木から木へと移っていくのは、ターザンみたいで楽しいと思う。
うん。いいね!
方向性が決まれば、やるのは今!
まずブランコより少し離れた場所にある、なんでもない木を大木にする。真ん中に小屋のような家を置けるようにするために、包み込めるように枝を伸ばして。
いい感じじゃない?憧れのツリーハウスが作れそうだよ。
そこに上がるためのしっかりした階段を作って、落ちないように手摺もつけるよ。反対側にはくるくる回りながら滑り降りる滑り台。左側にはターザンが出来るつり革を作る予定。つり革はテーレが落ち着いてから、安全性ばっちりな葦で作ってもらう。
魔力はもう少し行けるかな。
つり革で渡って行けるぐらいの場所の木といえば、これかな。
これを同じように大木にして、同じように滑り台と階段を作った。
一先ず木の上に登ってみて、木の上を歩けるようにだけしておけば、階段から滑り台まで長さがあるけど、大丈夫だと思う。全体的に能力が上がっているこの村の子たちなら、ないぐらいの方が楽しめそうだけど、流石にカランキ村から子たちには、体力的にまだ厳しい。雨が降った後走って転んで落ちてもダメだしね。
ここまで順調、順調!
「おーい。マリーどこだ?」
どうやらブランコの板を作ってくれたおじちゃんがきたようだ。
「ここだよ!」
木の上から声を掛けて手を振った。
早速滑り台の状態を確かめる時だ。
あ、うん。一応滑った。これはソルが帰ってきたら、普通に滑るように表面を加工してもらおう。土がメインでしか作れてないから、滑るというよりもズレ落ちるに近い。間違いなくお尻の布が破けるね。
仕方ないから滑り台を歩いて下りた。
おじちゃんが、目を細めて楽し気な笑みを浮かべる。
「今度は何を作ったのだ?」
「一応滑り台。だけど先ほど見たみたいに、表面が土で滑らないから、ソル待ち」
「ああ、なるほどな」
おじちゃんは、滑り台を触って納得顔だ。
「頼まれていた物を持ってきた。どうするのだ」
「これはねー。シンここに来て!」
空の精、シンを召喚!
「なに?」
如何にも面倒くさいという感じの顔。これが通常運転の顔なのか、そういうポーズなのか、いまいち掴みづらい。
だからこそ、態々コミュニケーション取るために、作業をしてもらおう。
ブランコように大きくした木まで行き、ロープを渡す。
「これをあの木の枝に通して」
「なんで」なんて言わす前に、素早くシンを掴んで上に飛ばす。
ウム。羽の触った感じは悪くない。
下りてきたら、素早くもう1つの縄を渡す。
それを枝を変えながら、3回繰り返した。
今は1つの枝に2つのロープがぶら下がっている。
「おじちゃん、このロープをその板に通して、下で固く結んで」
ロープの長さを左右合わせながら結んで終わったら、出来上がりだ。
まず、1つ出来たから試し乗り。
板に腰かけてブラブラを揺れてみる。
いい感じではないだろうか。
身体を大きく揺らしながら、自分以上の高さまで揺らしてみるが、問題なさそうだ。
神様にバランス感覚貰ってて良かったよ。めっちゃ楽しい!
立ち漕ぎをしてみても、怖くないし高く上がるのがいい!
「これは面白そうだ」
おじちゃんまで童心に返ったのか、乗せろと顔に書いてある。
「おじちゃんも乗りたかったら、他の枝のも作って」
「おお、そうだな」
他の3つも仕上げたら、早速おじちゃんも乗っていた。
立ったまま漕ごうとするおじちゃんに、危ないよと言おうとしたが、流石この村の住人。体幹が優れているらしく、ぎこちないなりに漕げていた。
おじちゃんの様子を見ていると、大人も嵌るかもしれないと思った。
まあ、娯楽が少ないからね。みんなで楽しんでもらえるなら、嬉しいし。まあ一応、子供優先ということにしてもらおう。
この後村の樹が大きくなっていることが気になったテーレが戻ってきたので、一気に公園の規模は広がった。何故なら一番は精霊たちがはしゃいだのだ。
あらゆる枝にぶら下げられた葦をブランコに見立てて、ブラブラと揺れる姿を村のあちこちで見ることになる。
精霊村だし、仕方ないよね?