69.4番目・5番目の卵の正体!
「正解だ。だから火の大精霊がこの世界から消える時、空の精が空間魔法により管理してきた。だからこそ、人間と距離を置いてきた精霊だ」
「そ、か。だからマジックバッグが普及されてないんだね」
「・・・、そうだ。が、気にするところはそこか?そこなのか?!」
「えー長、何をそんなに唸ってるの?」
「まあいい。・・・マリーだからな」
空間魔法があればマジックバックが作れるんでしょ?それ以外に何かある?
まあ、長の言いたいこともわかるよ?
エリクサーね。見たいとは思うよ。伝説でしか聞かないし、幻の宝石ならば。
だけどね・・・、欲しいとは思えない。今でもどこの王様(魔王)よ、ぐらい力が集まっているのに、これ以上は正直厄介なことになりかねない。
――もう、シエロが来た時点でなってるとは思っているけど、悪あがきしたい。
それにエリクサーと呼んで欲しがっているのは人間だけで、精霊にすれば火の大精霊の証というだけのことでしょ?それに世界樹も復活するのなら、そこまで需要がないと思うのはあたしだけ?
ああ、世界樹なんて思い出すから、忘れてたことを思い出しちゃった。昨日もチラッと思い出して、忘れてたんだよね。
テーレがいないと、影薄いし。
仕方ない。魔力を注入しておかないと。
世界樹の種とガチャ卵3つ目の「アリア」を出すと、早くとばかりに震えだす。
本当になんでこう主張の激しい卵ばかりなのか。
ハイハイ、魔力を上げますよ。
長には何故か微笑ましく見られている。
好々爺みたいな顔になってるよ?
この長も絶対に、曲者だよね。
あたしの相談相手として選ばれた感が半端ない。助かっているし、長のことモフモフ込みで好きだから、良いんだけどね。
幻獣なんて格は乗り越えて、絶対神獣の域に達していると思われる。ただの森の王に、精霊のことまで詳しいなんて、ね。
正解なんて知らなくてもいい。
長ににっこりと笑っておいた。
さて、4番目の黄色の縞模様と5番目ピンクの縞模様の卵にも・・・って、割れかけてるよ。なんで?!
籠を取り出してみると、籠の中には無数の魔石で埋め尽くされていた。
なんでこんなに魔石が籠に入っているの?仕分けされているから、籠に入れたわけじゃない。もしかして魔力を補うために、卵が魔石を引き寄せた?
そんなこと卵が出来るの?ガチャから産まれたのだから、普通の卵ではないけれど。
まもなく、待ってましたとばかりに割れ始めた。二つともシンクロしているかのように、ひび割れが入っていく。もしかして同じ種類の子が生まれる?
とりあえず、ピカッと光に包まれるとか、虹色になるとかなさそうで、安心して見守れる。
ワクワクしながら座り込んで見守っていると、長も面白うそうだと覗き込む。
さあ、待ってるよ!
時間にして10分程度。4番目の卵から黄色の嘴が出てきた。同時に5番目の卵からピンクの嘴。
鳥なのは確定した。さて、どんな種類なのか。
その答えはすぐに出た。
「「ぴよっ」」
デカいひよこ?!
本当にガチョウの卵だったのか。急いで鑑定をしてみる。
コッコ(オス)
魔石の魔力をふんだんに浴びた為、特異種に変化。
攻撃力が高く、騎獣として活躍が期待できる。
コッコ(メス)
魔石の魔力をふんだんに浴びた為、特異種に変化。
無精卵、有精卵の産み分け可能。
羽を硬化させることができ、防御力が高い。
うん。もふもふで可愛いのは、今だけ見たい。ガチャ卵だもんね。普通の子が生まれるわけないのは、知ってた。
だけどこれで村の防御力は上がるし、卵も確保できる。いいことずくめだよ!
ただどれぐらい大きくなるのか予想もつかないから、馬小屋みたいに大きい小屋が先には必要ってことだけはわかった。
「コッコか。久しぶりに見たが、変わったのが生まれたな」
「長知ってるの?」
「元はトットが魔素を浴びて、魔物化したものだ。遥か昔にはよく森で見かけた。卵は旨いし、肉も旨いからな。かなり狩られて数は減らされたはずだ。この森ですらいない」
お肉美味しいのか。鶏肉だったら、唐揚げが食べたい。
だけどこの子たちは、あたしのだから食べたらダメだからね!
その意味も含めて長を見たら、首を少し竦めた。
気持ちはわかる。
この子たちはダメだけど、カランキ村から迎える予定のトットを魔物化したらどうなのかな?なんて一瞬考えてしまった。なぜなら前世では鶏肉が一番の好物だったのだ。
ダメかな?ダメだよね?
命を弄ぶような行為だもんね。
「「ぴぃ」」
「あ、ごめんね。名前だよね」
すっかりお肉に支配されて忘れてた。
「黄色い嘴のオスの君は、ぴよひこ(ひこちゃん)」
「ピンクの嘴のメスの君は、ひよぴぃ(ぴぃちゃん)」
名付けた途端に、モフだったひよこの毛が、2倍に膨らみモフモフになった。
これは可愛い!めっちゃ可愛い。
見上げる姿は、あざとかわいい。
手に乗せて、もふもふと撫でる。
可愛く声を上げるのが、癒される。
それにしてもオスは騎獣になるというのは良かった。これから生まれてきても村のために働ける。
確か前世では普通のひよこはオスはそのまま、殺されると聞いた。仕方ないと思っても、微妙な気持ちになったのは確かだ。
そうだ。この子たちの世話をサンたちにお願いするのはどうだろう。可愛さに癒されながら、お仕事があった方が、気がまぎれる気がする。
母さんに相談しながら、小屋も作りたい。
取り敢えず皆の食事も落ち着いたようなので、このままだと邪魔になる鉄板を浄化で綺麗にして、リュックに入れた。
世界樹の種とアリア卵もリュックにしまうのも忘れない。
では、集会場にGOだ!
「あ、シン。後でちゃんと話しようね」
次回「精霊村と遊び道具」
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