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65.ジャムパンと異変

シエロのところへ行くと、ヘトヘトになって這いつくばっている大人たちと、小さな手で一生懸命魔石たちを拾っている子供たちが居た。

本当にあの大人たちは・・・。子供たちを見習えっつーの。子供達には美味しくて栄養があるものを出してあげたい。

ここはやっぱりジャムパンでしょ!


なんで先ほど村に帰ったのに、パンを貰ってくることを忘れたのか。

みんなに果実水ポーションを飲んでもらった後、村に一度戻ろう。


「みんな、魔石もってこっちに来て」


コップを人数分錬金して。

リュックから果実水ポーションをだして次々にいれて行く。

ポケットに入れた沢山の魔石を出しながら、子供たちはコップに出される甘い匂いの飲み物に視線が釘付けである。

1,2、3・・・・10人分。


魔石入れる袋はないけど、リュックに入れれば問題なく仕分けされるから、村に戻ってから袋を貰えばいい。

「ここに魔石を入れて。入れた子からこれ飲んでいいよ」


我先にリュックに魔石を入れ、コップを持ち上げるとみんな一気に飲み切った。

最後の一滴が残っていないか確かめるように、何度も振りながら。


「そんなに寂しそうな顔をしないで。お昼にはジャムタップリのパンをあげるよ」


「本当か!」

「一度パンを貰いに精霊村に戻るけど、すぐに戻ってくるから」


その言葉に嬉しそうに、何度も頷きながら笑顔がこぼれる。

ああ、癒される。

子供たちに囲まれて、ぽあぽあしているあたしを呆れたように見ているシエロ。

ぼくの鬣のもふもふの方がいいに決まってるとばかりに、無駄に風に靡かせている。

いいから、あんたはその大人たちを見張ってて。

夜にでもブラッシングしてあげるから。

機嫌を直したようで、働けとばかりにだらしない大人たちのお尻を軽く叩いている。

その大人たち、壊さないでよ。物理的に。


「じゃあ、もう少し頑張って。戻ってきたときにはお昼にしようね」

その言葉に子供たちはやる気を漲らせて、散っていった。

「なんか、体が動く」

「元気になった」


でしょ。精霊村の果実水ポーションは凄いんだよ。だからこの後のジャムパンも楽しみにしててね。



精霊村に戻るとすぐにパンを焼いてくれているおじさんに突進した。

「おじさん、ジャムパンをちょうだい」

「マリーちゃん、色々頑張ってるんだって?」

「そうなの、だからジャムパンあるだけちょうだい」


全部で30個ほどのジャムパンを受け取った。

「ありがとう。あとね、まだまだ欲しいからたくさん作っておいてね」

「わかったよ。また取りにおいで」

「うん。ありがとう。そうそうねおじさん。たくさん作ってもらうけど、火の魔石の補充大丈夫?」


村で重要な役割を持つパン屋さんとなったおじさんに為に、ソルと一緒に薪で温度調節をするのは大変だからと、魔石竈を作ったのだ。

いつもなら火の精が定期的に入れてくれていると思うけど、出払っているので要注意だ。


「大丈夫なら、お願いできるかい?」

すぐに予備の魔石にも魔力を補充する。これで少しは大丈夫かな?

「また、来ます」

おじさんの返事を待たずに、そのまま魔石拾いをしている子供たちのところへ戻った。


戻ると何故か、違和感を感じた。

「シエロ」

「呑気に拾ってもらっている場合じゃないみたい」

「わかった。魔石全部集める。その前に子供たちを村に避難させるね」


「みんな、魔石を急いでこの中に入れて!」

集まってきた子たちがリュックの中に魔石を入れるのを見ながら、人数を数えた。

9人しかいない。

「ねえ、一人いないけど、どこにいるの?」

みんなでキョロキョロ見渡して、ロンがいないと誰かが言った。

「みんなでロンに戻ってくるように、呼びかけて!」


それぞれに叫んでもらっている間にも、空気が揺れる。どこかに魔獣がいてこの魔石に引き寄せられているようだ。急がないと!

風魔法は使えないから、風で引き寄せることは出来ない。ならば、土魔法の応用で対応するしかない。

ソルが魔石や宝石を土の中で探しているように、魔力の波動を捉えて。

石を飛ばせることが出来のだから、引き寄せられるはず。


沢山ありすぎて、捉えるのがつらい。でも、やらないと。

わかる範囲で、こっちへこい!

そのままリュックの中に入るイメージで引き寄せると、見える範囲はなくなった。それでも森の中にそれなりにあるのがわかる。

どれだけいたのよ、あのビックマウス、ホント、大迷惑。

って、ロンらしき小さい波動。が森の中にいるじゃない。


シエロを呼ぶ前に、すでに飛んでいた。

すぐに泣いているロンの襟足を掴んで、こっちに飛んできた。

シエロの着地と同時に、9人の子供たちと一緒に精霊村へと転移されていた。


「みんな大丈夫ね?」

みんなは何が起こったのかわかっていないので、ただ頷く。

「ここが精霊村。約束の甘いパンを渡すから、みんなで食べよう」


泣いていたロンも、甘いパンの言葉にすぐに泣き止む。


すぐにおばちゃんたちがやってきたので、先に来ていた小さい子たちと一緒がいいだろうと集会場に連れて行った。

小さい子たちも含めて、手を洗う習慣をつけるために洗い方を教える。

初めての石鹸に驚く子もいる中で、子供たちの甲高い声が響く。前世の幼稚園みたいだ。

洗ってもすぐに汚れた服で拭こうとするのを必死で止め、清潔なタオルで拭かせる。タオルで拭いて綺麗になった子からジャムパンを渡すようにすれば、みんなそれに習い始めた。

やっぱり甘い物、最強!


子供たちと一緒にジャムパンを食べていると、シエロも欲しいというので1つあげる。

グンミにはポムを渡して、みんなでモグモグ。

って、戻らないと!

 

「おばちゃん、おじちゃん。カランキ村の近くにビックマウスが何百と出たの。それを退治したのはいいのだけど、魔石が広がっててね。拾っている途中だったんだけど、あたりの森がちょっとおかしくて。ここなら問題ないと思うけど、警戒だけお願い」

「わかったよ、マリー。あんたこそ気を付けてな。シエロとリセはいるだろうが、ホセとシャンスがいないのだから」


この村は問題ない。急いでカランキ村の周辺の状況を掴まないと。

転移で移動してもよかったが、どうせ向かうなら森がどうなっているのか調べたい。

安全第一にシエロに乗って、空から見ることにした。



次回「ゴーレム」


読んで頂き、ありがとうございました。

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