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64.転移と母さん無双?

気が付いたら村の広場だ。


あたし、転移も出来るようになってたんだ。

びっくりしたよ。

だけど、それ以上にどこだこれ?!的なサンたちは、もっとびっくりだよね。

ため息をつく音が上から聞こえる。

やあ、母さん。

手間が省けてよかったね?


横目でチラリとみられはしたが、サンたちに向き合った。


「サン、ここが私たちの村・・・よ。あなたたちは今日からこの村で過ごすの」

かあさん、精霊村とか恥ずかしくて言えなかったのか。


「え、おばさん、僕たち精霊村に住んでいいの?」

「ええ、この村の子になればいいわ」


「かえらなくてもいい?」

「この村の子に、なっていい?」


「ええ、勿論!」


広場に突然現れたマリーたちに、今度は何だと村の人が集まってくるあたり、慣れたものだ。

母さんに抱きついて泣いている幼き子たちをみて悟ったのか、おばちゃんたちが集まってきた。


「リセ、マリー、この子たちのことは、私たちが責任もって介護するよ」

「ありがとう、おばちゃんたち。他にも何人か連れてくるかもしれないから、集会場で眠れるようにしておいてくれると嬉しい」

「任せておきな。後で色々教えてもらうからね」


ああ、えーと、おばちゃん。ここでサムズアップなんてしなくても。


「せいじょさま、かっこよかった」

「ほお、聖女様が」


おばちゃんが、面白そうにあたしを見てニヤリとする。

色々と先送りになるだけだけど、今はとにかく任せてさっさと逃げるとしよう。


「サン、みんなが不安にならないように、ここに残ってご飯食べて」

「え、でも」

「大丈夫。ここでも仕事はあるから。ご飯ちゃんと食べて。おばちゃん、お願いね!」


サンがあれこれ言う前に、そしてあの場での座り心地の悪さに、さっさとカランキ村へ向かった。



戻った場所は子供たちをご飯食べさせていた場所。

突如現れたあたしと母さんに、カランキ村の人はビクッと体を大きく揺らした。

なに?

・・・・・・。


いきなり静かになった村。あたしを驚いたように見ているだけで、誰も言葉を発さない。

あたしを怯えたように見ている人に聞いても要領が得ない。

子供に怯えるようなことをしてたってこと?突然現れるのが人間じゃないみたい?

どっちでもいいけど、じっと見られるのは好きじゃない。

「アマンダ、この人たちなに?」


アマンダを囲っているようにみえる人たちを指さして聞いた。

そう、見えるだけ。アマンダが持つ結界石が仕事してくれているので、アマンダの周り3mは近づけていない。近づけないということは、邪な気持ちがあったということだ。


食料の略奪?それとも脅し?

一歩あたしが踏み込めば、カランキ村の人の人は更に下がった。

もう一歩踏み込む。

更に後ろに下がる。

あ、あたしが怖いから逃げてるんじゃなくて、あたしの結界とアマンダの結界に弾かれてるんだ。


「ああ、この人たち?子供たちが拾いに行くなら、自分たちも拾いに行くっていうからさ、却下したの」

「へえ~」

「子供たちが集めた魔石を寄こせとか、ふざけたこと言う人が居てね。思わず手が出そうだったよ」

「ほおぉ。シエロとあたしがいなくなったから、アマンダに詰め寄ったんだ?ふーん・・・」


面倒くさいから、ここで決着つけちゃっていいかな。

しっかりと脅しをかけて効いていると思ったのだけど、子供だからどうにでもなると思ったのか、身勝手な解釈つけて、言いがかりをつけたいのか。

こういう人たちって、子供たちの手柄取り上げて自分の物だというのよね。今までのこの村ならそれが当たり前なのかもしれないけど、村の奥に追いやって、放置して、それで村の子って言われても腹が立つ。

母さん、いい?って意味でニコッと笑ってみた。

だけど、ニヒルな笑いをした母さんが、無双する。


「アマンダの言う通り、何故子供たちが拾った魔石を渡す必要が?子供たちの養育もしてないあなたたちに?養育どころか、捨て去るように放置したのに?食事も与えていないのに?」

「それでも、この村の・・・」

「では、食事代や医療費をこの村に請求します。どなたが払ってくださるの?」

「勝手に治療して、食事を出しておいて」

「では、今後あなたがたには一切食事も薬も出しません。それでいいですよね。言いたいことはそれだけですか?お引き取りを」


文句を言っていた人、絶句。


「悪魔か」

「あなたが要らないと言ったのでしょ。あたしたちの村はどこの国にも属さない精霊村。精霊が住み、神獣がいて、森の王フェンリルが懇意にしている村、いえ国と言ってもいい。取引をするのに代価が必要なのは当たり前。わたしたちの善意を踏みにじっておいて、その言い草は看過できない。これ以上の施しは一切行いません。先ほどのように身勝手に恨まれては、敵いませんから」


母さんの言葉に、いきり立っていたカランキ村の人は怯んだ。

そして更に善良なカランキ村の人達に囲まれた。


「あんたたち、私たちの救世主、聖女様一行になんて無礼なことを!」

「そうだ!そうだ!誰も助けてくれなかった親父も治してもらった」

「この村の者が見捨てた者まで、手を差し伸べてくれていたのに」

「お前たちみたいなのがいるから、俺たちは隣村からも見捨てられてた」

「どれだけ領主様にお願いしても、村には蓄えがあるはずだと言われて、援助はされない」

「それどころか、役人に残りを奪われた」

「ふざけんな!」


そういうことか。とても納得できた話だった。

1割の行いのせいで、9割が割を食う。

同情はするけど、自業自得。

それを今まで声を上げてこなかったのも、この人たちが助長した原因だと思う。これから頑張って改革出来れば、いい隣人になるかもしれない。あくまで、かもだ。


さて理由はわかったし、母さんが決着(ケリ)をつけてくれるなら、あたしは魔石を拾っている子供たちのところで、一緒に魔石拾いがしたい。

宝さがしみたいで、ちょっとワクワクする。

それに、あのキラキラとした目をする純粋な子供たちに癒されたい。

あたし、7歳なのに、働きすぎだと思うんだ。

(主に自分で背負い込んでいるせいだけど)


まあ、あとはシエロがやらかしていないかの心配もある。

(自分のことは棚に上げて)


言い訳完了。では、いざ。


次回「ジャムパンと異変」

読んで頂き、ありがとうございました。


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