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62.魔石と子供たち

誰も説明してくれそうにないので、シエロ召喚!

『マリー、どうしたの?仕事終わった?』


呑気な声が頭に響いてきた。

何で、念話。村の中にいないこと、決定!

気配を探ってみると、ん?

・・・。

後で確かめないと。


シエロは村の外にいた。しかも何人か人もそこにいる。

あの辺りは確か、ビックマウスを叩きのめした場所だよね?

 

『終わった?じゃないの。そこで何してるの?』

『うん?魔石拾ってる』


ああ、なるほど。あたしはソルがいつも用意してくれているから忘れていたけど、魔石も色々使い道があるんだよね。明かりの魔道具とか、火をつける魔道具とか、色々。

シャンスや長が倒してきた魔物の石も、父さんが管理してるって言ってた。あの時、父さん何て言ってたっけ?


魔石も見つけたら拾っておくほうがいい。

小さい魔石は1つ、2つならそのうち魔力が抜けるから問題ないが、小さいとはいえ数がある、大きい魔石は周囲に魔力を放出するから、魔石を保存する袋で管理しなければならない。何故なら、魔力を帯びた草や動物が魔を帯びてしまうからだ。


忘れてた。確かに魔石を拾っておいたほうがいい。折角退治したのに、またネズミがビックマウスに変化したら大変だ。

シエロに感動していたら、違う答えが返ってきた。


『この村に居づらい不届き者たちがね、ボランティアで拾ってくれてるの』

そういうこと。


目を覚ますと、一緒に言っていた村の人に悪事をばらされ、居づらくなった時に魔石のことを思い出したのか。あの数の魔石が用意できたとなれば、名誉挽回になるもんね。

そうは問屋が卸さない。とばかりにシエロが頭を押さえて、拾わせてるってわけか。


実害はないし、もっともな行動なので、良いんじゃないかな。


『シエロ、偉いね。かなり大変だと思うけど、人足りる?』

『うーん、足りないね。魔法でかき集めるとかしないと難しいかな。でも僕が集めると壊れるし』


――さいですか。

・・・となれば、この村に仕事として依頼するのはどうかな?魔石20個拾ったら、果実1個とか。

30個でジャムとか、生きていくための物ではなく、嗜好品的な物で交換。

勿論動けない人は、滋養食事として食べてもらうから、不公平にはならないでしょ。

魔石がそのまま欲しいという人には、1,2割渡すとか?


全くお金を使わないから、価値が分からない。お金がどんな形で単位をしてるかさえ知らないことに、今更気が付いた。

この際母さんに教えてもらっておいた方がいいね。


「母さん、後でお金の単位教えて」

「どうしたの、突然」

「あ、そうだよね。シエロが小悪党さん使って魔石を拾ってもらってるじゃない?どうやら手が足りないみたい。魔法を使えば一瞬だけど、この際だからこの村の人に働いてもらったらと思って」


「・・・そうね。うちの村にはそんなに需要が大きくなくても、この村では需要あるわね。マリーとシエロが頑張った報酬は貰うべきでしょう。冒険者になってギルドに売れば、間違いなくそれなりにはなるから(シャンスが狩ってきた魔物の魔石1つには、届かなくても)」


あ、やっぱり大きさとか魔物のレベル?で違うんだね。この辺りは異世界あるあるか。

「ちなみにどれぐらいになるの?」

「そうね。ビックマウスならなら、10個で街で夕ご飯が食べられるぐらい。金額にすると、小銀貨5枚」


雰囲気的に500円ぐらい?安!あれで500円って、怪我したらそれ以上治療代掛かりそうだよ。本当にこっちの労働環境って、最悪。

今回はただ拾うだけの簡単なお仕事。だったら、思っていた感じでいい気がする。うちの果物はそんじょそこらの物と違うからね!滋養強壮にピッタリだし、何よりも美味しい!


・・・それに安く見積もっていたほうが、頼む子たちがこの村の人たちに恨まれなくていいと思う。


考えていたことを言えば、いいんじゃないかと村の人は賛成してくれた。

ということで、拾うだけの簡単お仕事を、子供たちに依頼することにした。

うちのシエロさんいれば、絶対に襲われないからね。


「子供たち!集合!!美味しいご飯を食べたい子、こっちおいでぇ―――――!」


そんな声を聞きつけて、気配がこちらに向いた。

周りを窺っている子、大人を見てやりたいって言っていいのか迷ってる子、こちらを睨んでる子、そして、迷わず出てきて「何をやればいい?」と声を上げる子。

どの子も痩せ細り、世話されていないとわかる汚さだった。


「ここから少し離れたところに、先ほどまでたくさんいたビックマウスの魔石が沢山落ちてるの。それを拾うだけだよ。たくさん拾った子には、お腹いっぱいのご飯に、甘い果物やジャムを上げれるよ」


「俺が頑張れば、弟にも食べさせてもらえるのか?」

「勿論、小さい子はここで食事の面倒を見るよ」

「わかった。俺は行く」

それまでしり込みしていた子たちも次々に声を上げた。


そう、村の人たちみんなに食事を振舞ったはずなのに、何故ここで食事なのか。


シエロの気配を探った時に、小さな気配が固まってあった。

子供たち?

そして幾つかの小さい気配が、こちらを窺っていたことに気が付いた。

まさか?

一か八かで声を掛けてみた。


ああ、本当になんで気が付かなかったのだろう。村の中にまさかスラムみたいなものがあるなんて想像もしてなかった。どの世界であっても虐げられるのは、子供たちだと知っていたはずなのに。

一番に声を上げた子は多分、そこのリーダー格の子だ。


「ねえ、名前何て言うの?」

「・・・サン」

「サン、それじゃあ、動けない子がいるなら、そこに案内してくれる?その子たちの治療をしたい」

「かね、ない」

「サンがこれから、頑張ってくれるでしょ?」

黙ってうなずいた。


目には涙を一杯にためて、泣くものかと歯を食いしばっている。

ずっと誰も頼れず、頑張ってきたのだろう。

まだ完全に信じてくれてはいない。子供たちの後ろで怪訝な顔をしている大人たちを黙らすためにも、聖女パフォーマンスと行きましょうか。


「シエロ、召喚!」



次回「63.聖女(魔王)降臨と子供たち」

読んで頂き、ありがとうございました。

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