60.カランキ村の現状
台風は大丈夫でしたか?
ニュースを見るたびに、大丈夫かな?と心配になりました。
無理をせず、ご自愛ください。
案内された場所に行くと、かなりの異臭がしてる。
これはかなりヤバいことになっているかも。
感染症などがないとは言えない。
結界石は身に見つけている者を害するもの全て撥ねつける。だけど念のためもう一度細菌など全てブロックするイメージを固めた。
本当は臭いもブロックしたいけど、その臭いの元がなんなのかを知るために、ブロックをしない。
その代わり布の端切れをつなぎ合わせ、口と鼻の周りを覆うことにした。
あたしがこうしていれば、他の人も真似してくれることを狙ってもいる。
病人がいるドアを開けた途端に、虫が飛び出してくる。
うっ、ヤバい。これは原因を探るのは後だ。
「グンミ!」
「任せて!」
その建物自体を膜で包み込むようにイメージする。
「「浄化」」
パンッと膜が弾けると浄化、完了。
そのまま建物の中にいる人全員に、エリアヒールを掛ける。
イメージは爽やかな森の空気で、満遍なく傷口が塞ぐように。
森の中で葉と葉が擦れたときに匂う、ハーブっぽい香りがしたかと思うと、中で聞こえていた呻き声が小さくなった。
「おじちゃんたち、中に入って体力だけ消耗している人と、個別に癒しを与えなければならない人に分けて」
「ああ、奇跡だ。聖女様の奇跡を見た」
「おじちゃん!!」
涙を流して、拝むおじちゃんたち。
いやいやいや、働いて。
重症な人には個別で癒しを与えるプラス、果実水与えないと駄目だから。
「感動は後にして、急ぐの!」
右足でドンドンと地面をたたくと、我に返った人たちが動き始める。
「あ、はい!」
「重症な人はそのままにして。意識があり体力の低下だけと思われる人は、食事をしてもらうから担架でも人でもいいから運んで」
カランキ村の人たちが中に入って確認を始めたのを見て、ちょっと座り込んで休憩する。
思った以上に魔力を奪われた。
ファイアストリーム3発分ぐらい。
リュックからフェイクの水筒を出し、果実水をゴクゴクと飲む。
ふうぅ。魔力は戻ったけれど、削られた精神力が戻ってこない。
あんな虫なんて、森で死んだ動物にいたのしか見たことがない。
もしかして、もうダメな人が中にいたのだろうか。膿んでいたところにだけに虫がいたのだったら、まだ可能性はある。
前世も含めて人のむごい死をまだ見たことがない。
あたしに耐えられるだろうか。
思考がマイナスになっていくのを必死に止めながら、カランキ村の人たちの動きを見ていた。
頭をポンポンとされる。
ん?グンミ。
「マリー、大丈夫」
「そうだね」
頭にいるグンミを膝に抱えて、ひんやりした感覚に癒される。
建物の中に何人病人がいたのかわからないが、外にはそれなりの人が運び出されていた。
10人ぐらい?
もうちょっといるかな?
問題は残っている人が何人いるかだよね。
「マリー」
「母さん」
母さんを見た途端にものすごく安心した。
足元に抱きついて、頭を撫でてもらう。
「あのね。外に運び出されている人には、少しだけ果実水飲んでもらって、後は薄味の『おかゆ』を食べて欲しいの。中にいる人は、これから個別に治癒することになると思う」
「そう。だったらアマンダに食事を作ってもらって、私はマリーと一緒に回りましょう。向こうにも怪我をした人がいるようだから」
「・・・いいの?」
「あなたは7歳。保護者同伴が基本よ?」
「そう、でした」
それからすぐにアマンダを呼び、おかゆの作り方を伝えた。
出しは干ししいたけと塩だけの薄味。しかも形がわからないぐらい水分の多い重湯に近いものにしてもらう。飲み物は果実水を更に水で薄めたもの。
「ところで、何処で作るの?そこに荷物出すけど」
「それらはここに入れてくれ」
荷馬車で荷物宜しくとばかりに運ばれたカランキ村の人の村長一派を転がし、荷馬車をおじさんがあけた。
流石に目を覚ましているようだが、バツが悪いのか黙って転がされている。
邪魔にならなければ、どうでもいいけど。
端の方により、米と干ししいたけ、塩、米を出す。
乗せたのを確認してから、鍋を出した。
「ルコ、悪いんだけどアマンダに付いて行って。水がいる場面になったら、出して欲しいの」
正直ここの水は信用できない。
そのことを肯定するようにグンミがいう。
「それがいいよ。水も淀んでる」
「やっぱり?この周辺全部浄化が必要?」
「間違いなく。用水路どころか、井戸も駄目だと思う」
そこまでか。
その言葉を聞いて、村の人たちは途方に暮れている。
水を使う時には、ルコ、グンミそして母さんとあたしの誰かに、出してもらったものを使う。ということに決まった。
おじさんたちは村周辺の見回りを担当し、アマンダはおかゆ作り、あたしと母さんは病人、けが人担当となった。
エディ?壁を直したら、あたしたちの寝る場所を作ってもらうことが決定している。
大役である。
それぞれに散った後、分担通り動き始める。
道中一緒だったおじさんたちがいるからまだマシだけど、あたしたちを見る目は余り好意的ではない。自分たちの村で好き勝手している隣村の奴ら、そんな感じがビシビシ伝わる。
きっと治った村の人も、歩けるようになったわけじゃない。だからこそ、病人追い出して何をしているのだと、目を三角にして睨んでいるのだろう。
このまま治して大丈夫かな?
変な薬飲ましたとか、言わないよね?
起き上がれない者だけ残しました。とカランキ村のおじさんに言われた。それではと入ろうとしたら、横から押された。
倒れる?!って母さんがキャッチ!
ナイス、母さん。
子供であるあたしに力の行使をしたもんだから、さあ大変!
母さんを筆頭に、グンミも怒気を放った。それにつられるようにシエロがやってきた。
みんなも落ち着いて。特にシエロはダメ!
あんたが神気放ったら、倒れるから!
―――遅かった。
シエロが放つ前に、母さんのオラオラモードで目を三角にしていた人たち、全員倒れちゃった。
でも、これで治療が捗る。
「おじさん、中に一緒に入って何をしているのか、見届けて。後で呪われただの、毒を盛られたとか言われても困るから」
「すまない。この者たちは村長の親族で、いちゃもんをつけるのが普通でして。放っておいて構わない」
「何かあればこちらで対処できるように、他の者も集めよう。手伝わせてほしい」
「頼みますわよ?マリーに何かあれば、あたしも、シエロも黙ってませんから」
「勿論です!絶対に何もないようにします!聖女様に手を上げるとか、天罰が下ってもしかたありません」
「そ、それならいいわ」
あたしって、怖いぐらい愛されてるよねー。
嬉しいけど、本当に制裁とかやめてよ?
特にシエロ、わかってるよね?ね?!
次回「治療」
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