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アラフォー女転生 卵ガチャで目指せスローライフ! 【完結】  作者: 桜田 律 
第一章 5歳 スキル『ガチャ卵』の真相
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5.サクレ覚醒とテーレの眷属森の精

父ホセ、母リセともにフリーズしている間、兄のエディと一緒に森へ行くための装備を集める。

エディは何度も森で薪拾いや薬草取りをしているので、小さなナイフと丈夫そうな木の棒を腰に装備。そして薪を入れるための籠を背負う。

あたしはナイフを持っていないので、肩から斜めがけ出来る小さなポシェットに、非常食ビスケットもどき。手袋やスコップなんてないから、近くの石で薬草を掘る予定。

以上だ。

「今からでも行ける!」

エディは行く気満々だが、まだ父母ともにフリーズ中だ。きっと通常運転をしても今日は疲れてそうである。


あたしからすれば、スキルはすべて凄い!だから、何がどれだけ凄いのかと語られても、多分便利に使えるものは、使えばいいだぐらいの認識でしかない。

スローライフする為に必要な物、特に食料を揃えるのが、大変なのだから。

甘い物、美味しい物、綺麗は正義である!


この世界って歪に感じるのは、違う世界を知っているからだろうな・・・。この世界の基準はわからないけれど、村人たちはスキルで出来ることが多いと思う。

草刈は風魔法で草刈り機のように切るし、土を掘り起こし耕すのも土魔法でやる。水撒きだって水魔法で簡単だ。あたしには何一つできないというのに。

だから便利な道具を作ることや工夫をしなければ、目指すスローライフには程遠いのだ。


だが、あたしには『育成』という強い味方がある。ドライアドのテーレもいることだし、山にある薬草や果物を庭裏に植えて育てるのだ。魔法の言葉『髪つやつや』で母の承認はすぐにとれるしね。


母覚醒。

なんであたしをみるの!

心の声が聞こえるスキルを、実は持っているとかいうのだかろうか。

こあい、言えてない。怖いよ。


孔雀の青い羽の色のような冴えた青色で綺麗な髪だし、20代後半とは思えないほど肌綺麗だし美人だし。何が気に入らないのだろう。


あの、ふふーんというどや顔。

・・・絶対に聞こえている。

この世界であたしのスローライフを盤石なものにする為に、マリー自重せず頑張ります!


テーレ。唯一のあたしの癒し。

頑張ろうね。

「がんばるの!」

そう言ったテーレ?サクレ?から、テレパシーみたいなものが脳裏に流れてくる。

これは森の地図?


「サクレがここまでなら、だいじょうぶって」

流石森の調停者。魔物たちを浄化、動物に戻し危険を排除したらしい。

魔物って浄化したら動物に戻るんだ…。これって凄いことだよね?とーさんに教えてあげなきゃ。


ん?

これは行かねばならぬ。今すぐにでも!

何故なら脳内地図に書き込まれるのだ。果物情報が、砂糖の元になる草の情報が!

「かーさん、パン持っていこ」

「そうだよ。早く行こうよ!」


父覚醒。

「森を一度見てから、明日にでも」


「サクレがじょうかした。だからまもの、いないって」

「浄化したら、魔物が居なくなる?!」

「それよりも、はやく!おいしいもの、たくさんある!」

「果物がある場所がわかるのか!」

「そうだよ、エディ。サクレがおしえてくれた」


非常に疲れた様子の父だったが、意見を譲る様子のない三人に諦めたように準備を始めた。

森に狩りに行く時のように斧を担ぎ、短剣を腰に差し、腕宛をつける。そして最後にバッグを肩にかけた。


外に出ると昨日あたしと同じ身長100センチぐらいだったのが、父でも見上げる程伸び、一気に3メートルを超えていた。

スキルってすごーい。と単純に思っていたあたしだが、あんぐりと口が開いている父や頬が引きつっている母を見ると、普通ではないみたい。

エディは実がならない木には興味がないらしく、早く行こうと急かせる。


「サクレ、ありがとう。いってくるね」

いってらっしゃいと言うように、木の枝が揺れた。

揺れた葉から、薄紅・桜色・シクラメン・ローズといったピンク系の綿毛が、風に乗って飛んでいく。

ああ、形は違うけどそのふわふわ、ひらりひらりと飛んでいく姿は、前世でいう散るという別れを告げるようで寂しい。

その気持ちが伝わったのか、慰めるように一つ綿毛が手のひらに落ちてきた。

ほのかに、温かい。

心にぽわんと優しい気持ちが湧いてくる。

手のひらで二度ほど跳ねた後、またね。って森へと飛んで行った。

うん。またね。きっといつか森で会えそうな気がする。


「森の精が、生まれた。これで確かめるまでもなく、この村の森は安全なものになったのが証明されたな」

「どうして?」

あたしが疑問に思ったことは、同じようにエディも思ったようだ。


「はるか昔、魔物が居なかった時代の森は、先ほどのような様々な精霊で溢れ、人間と仲良く暮らしていた。精霊は山を育み、その恩恵を人間に与える代わりに、お酒を所望したという。だがいつの日か人間が増え続けると感謝を忘れ、森を切り開き精霊たちの居場所を奪っていった。それからしばらくは問題が起きなかったが、森が半分になったころ、魔物というものが現れ始めた。罰が当たったのだと森を保護する国もあれば、森からの攻撃だとさらに森を切り崩していった国もある。森を切り崩していった国は魔物によって滅び、砂漠化した。保護した国は少しずつ森が増え、動物が増えていると言われている」



「きこりの中の言い伝えで、『聖なる木サクレが森を浄化し、ドライアドの眷属たる森の精が生まれ出る時、魔物は消滅し森は復活する』そう言われてきた。その証拠に、森からの気配はとても穏やかだ」


「マリー、どれだけ凄いことかわかったか?」

言葉にならず、頷いた。

両親が呆けていた意味がよく分かった。

「誇れ。凄いことをしたんだ。森を確認したら、村のみんなに伝えよう」

「うん!」



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