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53.もふもふ成分が足りない・・・。

道中は色々と隣村の村長を出し抜く方法を考えていたからだろうか、思ったよりも早く荷馬車が停まった。

「マリー、お昼みたいよ」


そう言えば確かにお昼ご飯を食べてなかった。

色々と考えごとをしていたせいか、甘い物が食べたい。だけど流石にここでパンケーキを作るのはね。

道中食べる物として持ってきている日持ちのする固焼きパンを少しあぶって、ジャムをつける?

そんなことを考えていたが、残念ながらトイレ休憩込なので、すぐに食べられるものとなった。


もちろん精霊たちは荷馬車に呼んで、マンダリンを振舞った。

シエロは精霊達と同じように何も食べなくていいらしいが、マンダリンを美味しそうに食べているのをみて、同じように食べたいと言った。


皮を剥いで手に乗せて食べさせると、目が見開く。

初めて食べたらしく、ムシャムシャと口の周りを黄色にしながら何個も食べた。

もっと食べたいと言ったが、流石に病人に食べさせようと持ってきたものを、シエロに食べさせるわけにはいかない。

これで最後だと言い聞かせた。


が、足りなくなったら取りに帰ればいい、ということに気が付いてしまった。

「村には沢山あった!」


まあね。どこの世界にこんな便利な魔法があるだろうか。

そりゃー、足りなくなったら夜にこっそり帰って、野営で地べたに寝るのではなく、フカフカに改造したベッドがいいに決まっている。

だけど隣村の人たちにシエロが居なくなったらすぐにわかるからダメだと、自分に言い聞かせるようにシエロにも言った。

多分隣村の人たちがいなければ、実行していたと思う。


シエロは天馬と言っても子供らしく、素直に納得した。

捻くれた子じゃなくて良かったよ。


「帰ったら色んな美味しい果物や野菜を食べさせてあげるね」


その一言が嬉しかったのか、シエロはうっかり羽を広げそうになった。エディが素早くそれに気づき、背に乗って足で合図を送ったので事なきを得た。

危なかった・・・。


しょぼんとするシエロに、大丈夫だと綺麗な鬣を撫でて宥めた。

本当なら自由に空を飛んで羽ばたくことが出来るシエロに、こちらの事情に合わさせているのだ。普通の馬の振る舞いをさせてしまっていることに、今更罪悪感を感じる。


「ごめんね、シエロ。自由に飛びたいでしょ?」

「うん。色んな空を飛びたい。だけど、マリーと一緒に見る景色も面白いよ」


愛い奴め。

こんな可愛いことをいう子には、ブラッシングだね!

野宿する予定の場所へ出立までの間、せっせとエディと一緒にブラッシングした。

陽に透けると銀糸のような毛並みが艶々して、カッコいい。

その仕上がり具合に大満足だ。

エディと一緒に、サムズアップ!

決まった!


『マリー、僕凄くキラキラしてる』

荷車にあたしたちが乗り込んだ途端に、隣村の人たちを抜いてそのまま駆けだした。

隣村の場所がわかっていたなら、このまま突っ走ってしまいそうな勢いだ。

テンション高い!


「シエロ、行き過ぎ~」

慌てて手綱を引くと、すぐに我に返ったように停まった。

「ごめん。なんかね、ものすごくパワーが湧いてきてね、走り出したくなったんだ」


あれ、この感じ。感じたことあるよ。

果実水ポーション飲んだ時だ。

マンダリンを取り出して鑑定してみる。


マンダリン  森の精と水の精が丹精込めて作られた果物。

       1つ食べるだけで、その日の疲れは取れる。

       ※病人には半分が丁度良い。


1つでいいところに、3つも4つも食べた結果、今のシエロだということだ。

鑑定して見て良かったよ。

これを見ていなかったら、食欲が落ちている人にしっかり食べさせたと思う。

危ない危ない。

母さんにもこのことは後で、しっかりと伝えておかないと。


「マンダリンを食べたせいみたい。シエロが元気なのはわかったよ。だけどゆっくり行こうね」

「仕方ないなー、帰ったらたくさん食べるからね」

「ハイハイ」


それからは落ち着いたようにゆっくりと歩き始める。

隣村の村長たち一派が時々悪い顔をしているのをみるけれど、今のところは平和だ。

どうせシエロをどうやったら盗めるか、とかくだらないこと話してるんだよ。絶対。


あとは隣村の村長はともかく、街に住んでいる領主さんが馬鹿じゃないことを祈りたい。

「裁き」なんてスキル使われたら、完全に庇えないし、庇いたくもない。

村にとって悪となるなら、排除したいのが本音。


あ、でも。さらに親玉(国王)みたいなのが出てきたら面倒で嫌だな。正直戦っても負けないどころか、こちらの損傷なしの圧倒的な勝ちだと思う。だから力を示すのは簡単だけど、人間の感情何てコントロール出来るものじゃない。この世界を戦火で塗れさせたいわけでないのだから、穏便に進めたい。


――方法がないわけじゃないけど、これは本当に最終手段。

だから、シエロのスキル「裁き」なんて、触らぬ神に祟りなしで行くのだ!


考えすぎたら、もふもふ成分が足りない。

シャンスもリュビもソルも頑張ってるんだから、我慢だよね。

仕方ないからリュックをモフモフしておいた。

夜はシエロの鬣モフモフして寝よ。


無事野営ポイントに着くことが出来た。

乗っておくだけといっても、やっぱり疲れる。

下りて体をほぐすようにストレッチをしていると、母さんに呼ばれた。

「夕ご飯のスープ手伝ってちょうだい」

「はーい」


「エディ、お願いがあるの」

「うん?なんだ?」

「シエロに隣村の人が近づかないようにして欲しい」

「ああ、そうだな。悪い顔してるもんな、あの人ら」


グンミとエディの土の精ミミが深く頷いて、理由を話し始めた。


「濁ってるの」

「濁ってるって何が?」

「纏っている魔力が淀んで濁ってるから、近くに居たら気持ち悪い」

「そんなの見えるの?!」

「あれ?言ってなかった?精霊は見れるよ。だから悪い奴には姿を見せないし、近くにも寄らないんだ」


姿は見せないというのは、どこかで話した覚えがあったけど、魔力が見えるというのは初耳だ。

悪人探知機とか、凄いなぁ。


「だからね、エディと一緒に姿消したまま、見張っておくよ!」


頼もしい言葉を二人から聞いたので、任せた!とサムズアップしておいた。

ミミが器用に親指を立てているのを見た時には可愛すぎて、そのまま抱き着いてモフモフしながら転がりたい衝動にかられた。が、残念なことに母さんに荷物のように回収され、アマンダに笑われながら野菜を切ることになった。


もふもふ~。


次回「お風呂と寝る準備」


読んで頂き、ありがとうございました。


今月は仕事がハードなため、書き溜めていたものをアップ。

更新が止まった・・・。ということがないようにだけは、頑張ります。


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