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45.疑惑と絆

タイトルがちょっと物騒ですが、大したことありません。


夢を見て起きたせいですっかり目が覚めてしまったが、まだ夜明けを迎えていないようで部屋の中は薄暗い。

もう一度寝ようにも、あれを見てしまっては寝れそうにない。

それならばと起き上がり、ベッドの上で胡坐をかく。


「マリー、起きたのか」

今日の抱き枕のリュビが一緒に起き上がる。


「うん。夢を見たの」

「夢・・・?」

「うん。火の精を助けに行こうと思う」

「それは、空が関わっているか?」

「ううん。それは多分関係ないと思う。なんでそう思ったの?」

「・・・なんでも、ない」


時折考え込んでいるリュビが心配だけど、今は夢のことを優先させないと。

ない頭ひねって考えることにした。


まずあそこにあった物を考えると、元盗賊団のねぐらだった可能性がある。だからこの辺りで名を馳せた盗賊がいたかを調べるとわかると思う。だがそれでは、聞き取りに時間がかかりすぎる。


となると、答えは一つしか浮かばない。フェンリルや精霊たちの人海戦術。これの方が何かあった時にも対処出来やすいし、間違いなく早いと思う。


そして場所が分かったら、すぐにでもそこに向かって火の精の魂を救うために行くのだ。

でなければ、森の奥の異変がさらに酷いことになってしまうのは、間違いない。

出来ればフェンリルの長にも話を聞いてもらって、話をまとめたい。


あれ?そういえば、長はどこにいるのだろう。森へ戻ったのかな?

シャンスはいつものように、ベッドの下で気持ちよさそうに寝転がっている。

これでは状況がわからない。

自分一人で出来ることなど限られている。焦っても仕方ない。


テーレ特製のサクヤの枝で作られた籠に鎮座する、種と卵に少し魔力を渡して村の大きなお風呂に入ることにする。

禊じゃないけれど、頭をスッキリさせるには体も綺麗にするのだ。


「リュビも一緒にお風呂入る?気分がスッキリするよ」

「俺はいい」

「リュビ、一人で悩まないで。みんなが付いている。フェンリルの長だって手伝ってくれるのだから、出来ることからしよう?」


「・・・マリー・・・なんでもない」


何かを言いかけたリュビはそのまま口を紡ぐみ、どこかへ行ってしまった。

よくわからない違和感を感じながらも、そのままお風呂に入った。


頭と体をしっかり洗い、たっぷりとお湯が入ったお風呂に入る。

魔道具のお陰でいつでもお風呂が入られるのは、本当にうれしい。


のぼせないように下半身だけ浸かり、先ほどの違和感について考えた。

なんだろう。何かスッキリしない。

・・・・・・・。

うん―――――ん・・・。

わかんない。


空を見上げる。星がまだ夜を主張しており、最後の輝きを見せている。

暫くするとすぐに星が薄くなり、太陽の光が星を制していく。瞬く間に空を制した太陽は夜明けを告げ、今日の営みが始まる。


今日一日頑張ろうって、この明るい光を見ていると思えるから太陽ってすごいね。

そういえば、太陽の光があまり届かない冬は鬱になりやすいから、晴れた日はテーブルを外に出して光を浴びながら食事すると北の方の国の人が言っていた。


光を沢山浴びているあたしは、健康優良児!

果実水ポーションを一気に飲んで、やる気を漲らせた。


あれ?

あたし、何でこんなに悠長なことしてるのだろう。

この世界に溶け込み始めて、段々と薄くなってきているアラフォーの記憶。それは、いい。

大人になるにつれ、合理的かつ冷静に判断することを求めらえていた、社畜時代のあたし。その時の精神性に戻っていない?


なんですぐにリュビに夢の内容を話して、すぐにでも助けに行こうと言わなかった?

何故、悠長にお風呂に入って、フェンリルの長を探していない?

今までのあたしなら、突進して怒られるのが通常だよね?

これを精神力が上がったとは、絶対にいわない。

おかしい。

何かがおかしい。


一度おかしいと思い始めると、伺う余地もなく精神誘導されたとしか言いようがない。そしてそれが出来るのは・・・。

後で絞めてやる!!

首を洗って待ってなさい!


さて、心も体もリフレッシュ!

やるわよ!


『シャンス!長はどこ?話したいことがあるの』

『マリー?長は森の見回りに行ったみたい。だけどすぐに戻ってくるよ』

『わかった。すぐに家に戻るね』


『リュビ、どこにいる?』

『・・・マリー』

『ちゃんと話そう。長も来てもらうようにしたから、家に戻っておいてね』

『ああ』


最後の短い言葉は、心底ホッとした時の声。やっぱりおかしいと感じてたんだ。言ってくれればいいのに。

それともフェンリルのように、あの謎獣黒助の方が格が上なのかな。精霊たちが逆らえないというのはこれから困る。黒助には契約者としてガッツリと説教をしてあげないとね。


服を着てすぐに家に戻る。

家の前にはもうフェンリルの長とリュビがいた。

二人が揃っているなら話は早い。

「話を聞いてくれる?中に入って」


意気揚々と家の中に入ると、頭が壁にぶつかった。

「イタッ」

こんなところに壁なんて・・・。

母さんの仁王立ちが待っていた。

「マリー?」


そういえばそっと抜け出してお風呂に行ったんだっけ。

なんでここだけ、いつも通り?

理不尽すぎる。


「人の話は聞きなさい!」

ごもっともです。

「ごめんなさい」


家の中に入ると、黒助が屋根からロープで吊るされていた。

お?

「テーレから聞いたわ。黒助に悪戯されていたようだと。もう大丈夫?」

「母さん。心配かけてごめんなさい。大丈夫だよ。それにしてもテーレ、凄い。そんなこともわかるんだ」

「もちろんです。私はマリーの守護者ですから。この悪い子はちょっと懲らしめておきました」


そう言われてみれば、そうだよね。

繋がっているはずの黒助のことがわからないのが、おかしいのか。


「テーレ、バツとして黒助今日一日このまま吊り下げておいて」

「シャンス、黒助で遊んでいいからね」

シャンスが楽しそうにタシタシと黒助を叩くのを見ていると、ちょっとスッキリ。


「お、オイ」

「こんな時だけ声を出すとか、ムッツリ黒助なんて、遊ばれちゃえ」


「話は長くなるのでしょ?先にご飯食べましょう」

「「はーい」」


何故か長までが可愛く返事をして、テーブルの下でスタンバっておる。

ご飯、気に入ってもらえて何よりです。

朝からみんなで(黒助除く)、モリモリと美味しいご飯を食べた。


天井から視線を感じたが、無視をする。

あんたは罰でご飯抜き。



読んで頂き、ありがとうございました。

出張から戻ってきた!

ストレスって凄いよね~。...( = =) トオイメ目


次回 スキル「ガチャ 卵」炸裂

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