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35.カミングアウト

割ってもいいかな?いいよね?

テーレ、それをよこしなさい。成敗してやる。

きっと美味しい卵料理になるとおもうの。


「マリー、マリー、この度は同族がご迷惑をおかけいたしました。しっかりと教育(調教)しますので、ここは怒りを収めてください」


テーレだけでなくシャンスやリュビ、ミミ・ダンまでもが慰めるように集まってふわふわの毛が肌にあたって、気持ちがいい。グンミとルコは怒りを浄化するように頭の上を飛んでいた。


仕方ない。このもふもふに免じて許してあげる。

「ただし!空気が読めないだけじゃなくて、昔と同じように振舞って災いを呼ぶようなら、魔物の巣窟に捨てて。そこならどんなに癒しを行っても、魔物も浄化されて動物に戻れるし、森も正しく機能する。それなら誰も困らない。テーレ、それでいい?」

「なるほど。それならば世界に正しい秩序が生まれますね。教育(調教)に失敗した時には、その様にさせていただきます」

「父さん、母さん、それでいい?」


「あ、ああ。そんなことが許される、のか?」

「マリー、・・・大丈夫なの?」

「大丈夫!テーレがいいって言った」

今日一番の笑顔でサムズアップしておいた。

決まった!


「とりあえずここを出ましょう。色々と話さなければならないことがあるの」

もう子供を装うのもやめた。

たまに地で子供に戻るのは、大人になってからの反動ってことで。自分を押さえつけるものがないって、解放感あるね。


「あ、母さん、光鉱石って不浄を払うための媒体になるって言ってたよね?」

「そうよ。これを魔道具にすることが出来る職人が少ないから、高価な物になるわ」

「じゃあ、少し持って帰ろう。多分ソルなら作れると思うから、あたしもエディも習えばいいし、結界と不浄を払える魔道具作って種と卵の傍に置くことも大事だと思うから」

「魔道具俺も作れるのか?」

「多分、ミミと一緒なら作れると思うよ。魔道具はイメージが出来るかどうかだと思うから、ソルを通してミミに伝えることが出来るじゃないかな?」


俺も魔道具が作れる!とはしゃぐエディには、ミミと一緒に光鉱石を削ってもらわないと。

「ミミ!奥は崩れると怖いから、まずは入り口近くのをお願い」

「はーい」

走って入り口に向かうエディにミミだけでなく、シャンスに付き添ってもらい、あたしは父さんと母さんの手を取って繋いだ。


「マリー」

「あのね、二人に聞いて欲しいの、あたしのことを」

「もちろん、聞くさ。マリーが精霊だっていっても、驚かない」

「そうよ。あなたは私たちの子、私がお腹を痛めて産んだの」

「ん、ありがとう。精霊とかそんな話じゃないよ。ちゃんとこの世界の人間。だけどアリアが言う世界の理に縛られないというのは、よくわからない」

「そうか」


「うん。ただわかっているのは、この世界ではない異世界とでもいうのかな?その時の大人だった前世の記憶があって、ちょっと変わった子になったということだけ」


「異世界って・・・」

「精霊もいないし、魔法もなかったよ。ただ文化がとても発達してて、スイッチを押せば夜でも昼間と同じように明るくできたし、お風呂の水をためていつでも入れたし、トイレはいつも臭わない」

「マリーはその知識があったから、村を変えたの?」

「だって、綺麗で便利なほうがいいでしょ?」

「そうね。始めは何を言い出すのかといつもハラハラしてたけど、最近は何をしてくれるのかとちょっと楽しみだったわね。肌も髪も綺麗に出来るし、食べ物が豊富でみんなが笑顔なのはいいことよ」

「それには賛同するが、始めに何をするのか言って欲しい。危なくないのか心配で、正直胃がもたない」

「それは、ごめんなさい。どこまで自分のこと言っても大丈夫なのかわからなくて、怖がられたら嫌、だな・・・て」


「・・・言っておけば良かったな。マリーのことは神のお導きだって神父様が言っておられた。神のお告げのようなことがあったなんて知ったら、マリーは怖がるかと思ってな。黙ってた」

「え、神父様そんなこと言ってたの?確かにスキル授与の時、目が見開いていたからなんだろうとは思っていたけど、スキルのガチャ卵で浮かれててすぐに忘れてた」

「だから、みんな温かく見守ってくれてるんだよ」


「―――そっか、精霊って凄いよね~って一生懸命言い訳のように言ってたの、あまり意味なかったんだ。逆に生ぬるい視線の意味が解って良かったかも」

「村の人たちも、マリーには感謝している。ただ流れが早すぎて、ついていけてない者がいることも確かだ。これからのことは、一緒に考えて行こう」

「・・・はぁい」


そうだよね。あたしだって若い子たちに頭が固いとか言われて、時代の流れについて行くのが大変だった。


「泣くな。危ない事をして欲しくはないが、どうしてもの場合は一緒に考える。それでいいな?」

「そうよ。黙ってたけど母さんだって元Aランク冒険者で、色々できるんだから」

「・・・知ってる。最近母さんに似てきたって、みんなから言われるから」

「ちょっと、何で知っているの?!」


ウリウリと母さんに抱きしめられながら、あたしは本当にこの両親でよかったと思った。異世界なんて想像もつかないこと言って、本当に信じてもらえるとは思わなかった。もしかしたら、まだ半信半疑なのかもしれないけれど、それでも否定しないでくれるだけでもうれしい。


それにこの世界の理に縛られないで自由に出来るというのなら、それはきっと必要なことに違いない。もう少し大きくなったら街に行ってこの世界のこと知るために、図書館に行ってみるのもいいかもしれない。


「あー、マリー。頼むからあまり無茶はしないでくれ」

「ちゃんと、何をするのか言ってからにしてね」

「はーい」

「本当にわかってるか?」

「前世の記憶があったとしても、今は7歳の体でしかないのだから」

「「ちょっとは、自重しろ(てね)」」


自重、自重・・・どこかに逃げ出したのだけど、戻ってくるかな?

二人の手をぶんぶんと振り回しながら洞窟を出て行った。


本当に、本当に父さん、母さん、ありがとう。

明日空の精に会えたらいいな。




次回「予告?」


ブックマーク&評価ありがとうございます。


ちょっとずつとはいえ、増えると嬉しいです。

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