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34.シリアスは何処イッタ。どうしてくれよう、この卵・・・。

「「テーレ?」」

父さんと母さんに説明を求めるように呼ばれたテーレは、やられたという顔をしたがすぐにすまし顔になり、いつも以上にキリッとした顔になった。

流石、テーレ。これぐらいじゃびくともしない。あたしなんて、びびっちゃうよ。


それに父さんも母さんも困惑しながら、答えを待つ。

気持ちわかるよ。出来れば聞きたくないと思うけど、今後のことも含めて知っておいて欲しいから、頑張って!


「洞窟にある種は世界にとって必要な物です」

それだけで父さんは予想が付いたのか、特大の溜息を吐き出した。


「なんとなく、そんな予想はしていたのだが、当たって欲しくなかったな」

流石父さん、まだ肝心の種の名前言っていないのに。

エディ一人がきょとんとしてるのを、ミミが寄り添う。

「ダンが唄い始めた時にまさかと思ったが、・・・マリーをどうしたいのだ」


まさかそんな質問が来ると思っていなかったのか、テーレはきょとんとした。

「別にどうもしませんよ。マリーに精霊と人間の懸け橋になって貰えたらとは思いますが」

「精霊的にはそれでいいかもしれんが、人間はそうはいかない。マリーが誘拐されたり危険な目に合わないと約束できるのか?」

テーレは痛いところを突かれたと、顔を顰めた。


「・・・それは」

「今はまだいい。これから先厄介ごとが降ってくるのは避けらないだろう。どう対処するつもりなのか、種を取りに行く前に聞かせてもらおう」


父さん・・・。

ありがとう。

今まで気持ち悪がられたらどうしようかと自分のことだけ考えて黙っていたけど、前世の記憶があることも話してちゃんと自分の気持ちやしようとしていること話さないと駄目だと思った。このまま黙ったままで父さんや母さん、エディに心配ばかりかけたくない。それに今言ってくれた父さんの気持ちを裏切りたくないから、ちゃんと話すよ。


「種が芽吹き、卵が孵れば深き森で育てるつもりです。ただ、3年ほどは村で育てさせて欲しいです」

「それは、マリーがいるからか?」

「そうです。マリーが育てることにより、以前よりも逞しい世界樹と巫女が誕生するでしょう」

「何故、マリーなのだ」

「それは大精霊となった私でも、ドライアド如きではわかりません。精霊王ならば、お答えできると思いますが」

「・・・そうか」


緊迫した空気が車の中を漂う。

種がある洞窟前に車が着いたが、誰も言葉を発さなかった。

そんな空気を破るように、父さんは膝を大きく叩いた。


「種を取りに行くだけなら、全く問題ないのだな?」

「ありません。絶対に守ると約束します」

「わかった。今日のところはそれでいい」

「ありがとうございます」


「最後に、・・・精霊王は白銀の毛を纏っている、と伝承にはあるがそれは間違いないか?」

「まちがいありません」

「わかった。今から種を取りに行こう。テーレがマリーを連れて行ってくれ」


父さんに見えていて、あたしに見えていないものがあるはわかった。それが何なのかわからないけれど、ちゃんと話をしたらわかるだろうか。母さんを見たら「大丈夫よ」そう言って、微笑まれた。

まさかあたしが異世界の記憶を持っているなんて思ってもいないだろうけれど、何かを隠しているのは知っているのだろう。それでも大事にしてくれる家族が嬉しい。

種を取りに行った後、話そう。そう決めた。



車から降りて洞窟の前まで行くと、シャンスがいうように入口が大きな岩で覆われて、すぐには入れそうになかった。

「俺たちの出番だな」

ミミとエディが一歩前に出て地面に手を着き、スキルを行使する。

「「破砕」」


洞窟の入口の大きな岩たちが次々に粉々になり、パラパラと土煙を上げながら消えていった。

「エディ、ミミ凄い!」


エディはいつの間にこんなにも、土魔法が上手くなっていたのだろうか。

ちょっと得意げに鼻を鳴らして、すぐに父さんの横に並んだ。

父さんによくやったと頭を撫でられていた。

ナデナデいいな。そういえばあたし、仕方ないなぁと頭をポンポンは多かったけれど、ナデナデが少ない。

地味にショック。

あたしのやらかしが原因なのはわかっているけれど、これから頑張らねば!

闘志を漲らせていると、仕方ない奴だとばかりに父さんには頭をポンポンされた。

いいだろう、とばかりにあたしをみるエディに見ておれ、とライバル心を燃やす。


土煙が収まるとすぐに、グンミが水をかけ洞窟内の空気を落ち着かせる。リュビが火を出し中を確認してから、頷くと全員で洞窟の中に入ることいなった。

シャンスが先頭で次に父さん、真ん中にあたしと手を繋ぎ卵を抱えたテーレが歩き、その後すぐ後ろにエディと母さん、殿はリュビを始めとする精霊たちだ。


中に入ると意外にもそんなに暗くないことに気が付いた。

洞窟の中に光っている石がところどころあり、まるで夜空を司る星のようだ。

「これは凄いわね」


これは特殊な石で光鉱石と呼ばれる貴重なもので、火を使えない森や洞窟、ダンジョンなどの光源として重宝され、魔道具としても加工されているのだとか。

「後は、不浄を払うための媒体としても知られているわね」

なるほど、魔道具の材料として優秀ということですね。これは後で幾つか持って帰りたいな。


「マリー、この光鉱石のことは後回しだ」

父さん、実はエスパー?!

父さんの言葉に一瞬動きを止めたのはあたしだけではなく、エディとミミも同じだった。

気になるよね、わかるよ、わかるよ二人とも。

だけど大人なあたしは、今は我慢するよ。どうしても欲しくなったら、あとでソルにお願いすれば大丈夫だからね。


洞窟の中は幾つか道が分かれていたが、何故かどの道を歩けばいいのかすぐにわかった。森の精が輪舞を踊っていた時と同じような澄んだ空気が流れてきて、こちらだと誘導してくれるのだ。

体感で10分ぐらいだろうか。行き止まりに着いた時、声が聞こえた。


「わたしはアリア、この世界の理に縛られない魂よ。あなたに種を託したい」

あたしの手にポトリと種が落ちてきた。


はあああああああぁぁぁぁっ!

え、何、種?世界樹の種?!

しかも巫女大精霊に、バラされた?!

あたしの一大決心はなんだっていうの?!


ここまで来るのにシリアス気味に緊張して臨んだのに、どこかに隠されて探すとか、試練があってそれをこなすとか、ないの?!

こんな簡単に種を渡されるとか、一体何なのよ!!


し・か・も・!!

言うだけ言ったら使命果たしたとばかりに、卵に吸い込まれるように入っていくとか、あり得ないでしょ!

ぐぬぬぬっ。

どうしてくれよ、この卵・・・。




次回「カミングアウト」


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