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33.種の正体と覚悟

まあ、種の正体は想像できていると思いますが、

さて、ここであれが出ますよ。

洞窟は意外と近いところにあった。だけど地殻変動があったのか洞窟は半分以上埋まっているようで、シャンスも入ろうと試みたが、頭しか入らなかったようだ。


「シャンス、頑張った!」

汚れた頭を浄化でキレイにしながら、褒めた。

「うん。僕頑張った。でも、中は真っ暗で何も見えなかった」

「変な感じはなかった?」

「あ、うんとね。泉の近くに感じが似ていたよ」


精霊の泉に似た清廉な空気を纏っているなら、間違いなくそこで当たりだね。しかも罠などの悪意も感じられないとなると、入ってみたいな。


父さんはわかっているとばかりに、あたしのほうを見て言った。

「仕方ない。ここまでやっておいて、そのまま帰るわけにもいかない。洞窟の近くまで行けるところまで車で行って、その先は父さんが確認する。それでいいな」


流石だね、父さん。放っておいて勝手をされるよりは目の届くところにってところかな。

「うん。洞窟の前まで行ったら、何かわかるかもしれないし」


ただ聞き分けよく答えてみたけれど、最終的にはあたしじゃないと種は手にできない気がする。

それは確信に近い。これはあの謎獣のスキルの恩恵なのか、大精霊の残滓に触れたからなのかわからないけれど。


そしてそんなことを思っていたら、何故かスキルを行使しないといけないという感じがしてきた。どういうこと?なんでこんなところでガチャ卵?

車での移動中こっそりとテーレに疑問に思ったことを聞く。


「ねえ、テーレ」

「ええ・・・と、お願いします」


え、マジで?!まだ何も言ってないよね!

以心伝心って、良いのか悪いのか時々困る。

まだ頭が混乱中で、もう何が何だかまったくわからないのだけど。

でも、テーレがそう答えたということは、やっぱりガチャ卵が必要ってことだよね。


「今がいいの?それとも種を取りに行った後がいいの?」

「多分、今がいいと思う。彼、彼女がいないとなんというか・・・」

「ああ、有名な話なんだ」

「精霊界で知らない人はいないくらいに」


あの映像をつなぎ合わせると、そういうことなんだろうなぁ。

世界樹を巡りあちこちで争いが起きていた。それは死んだ人間をも生き返らせるという伝説のためだ。実際は死んだ人間は生き返らない。それは彼女が映像で語ったことからも、間違いない。


ただ瀕死、もしくは仮死状態だった人間に、巫女大精霊が世界樹の葉を使って煎じた薬を飲ませれば、息を吹き返したり、意識が戻ったりする可能性は高い。が正解。


それでも、死んだと思っていた人間が息を吹き返して動けるようになれば、奇跡だと騒ぐだろうな。そして、誰しもその奇跡にあやかりたいと思うものが増えてくるのは、明らかだった。

だからこそ、起きた世界樹の消滅。


映像では世界樹の彼と世界樹の巫女大精霊の彼女に、何が起きたか記憶されていた。

始めは二人ともとても幸せそうだった。

助けたのは人間だけでなく、動物も木々も命あるものは平等に癒していた。

そこに信仰が生まれ、世界樹は天にまで届くほどの大きくなり、世界の不浄を浄化し続けてもなお幹を大きくしていった。

自然に精霊が生まれ始めると、人間に力を貸す者も現れ始める。

生きる力を得た人間たちは、さらに世界樹を讃え感謝し、恵みを捧げた。

世界樹が樹齢300年を過ぎるころ、徐々に均衡が崩れていく。


親、子、恋人を助けたいとただ願う者。

何かあった時の為に、自分で持っておきたい者。

巨額のお金を手に入れるために、手に入れたい者。

雇われて依頼として、やってきた者。


感謝の気持ちを持つものもいたが、それが当たり前に感じている者も増えてくる。

それでも彼女は助けを求める人々に代償など求めず、ただ懸命に求めに応えた。

求めに応じることが出来ていたのは、それぐらいまで・・・。欲はどこまでも深くなる。


これがあれば、どんなに酷いけがをしても生き返れる。

―――国々はこう考えた。これがあれば、戦争で勝てる。そのために、世界樹を巫女大精霊を手に入れるのだ。


独り占めしたいと思う欲深い者たちが争いをはじめ、世界樹を中心に戦争が巻き起こった。

そのことに彼女は酷く心を痛め、闇を深めていった。彼(世界樹)は彼女を抱きしめ癒し続けるが、彼女の心と体は限界に来ていた。


そんな彼女のことなど思いやることなく、薬を要求し続ける人間に彼は嫌気がさし、自ら世界樹を枯らすことを決めた。

枯れていく世界樹に、ただそこに在るだけの巫女大精霊。世界樹が枯れれば当然巫女も一緒に消滅する。共に滅びることを選んだ世界樹は、消える寸前に彼女の名を呼んだ。

「アリア」

一瞬意識が戻ったアリアは消えていく彼を目にし、自分の心の弱さを責め、名を呼びながら持てる力をつぎ込んだ。

「マグナ、いつかまた会いましょう」

最後の力を振り絞り、消滅させるのだけは避けようと種にした。



それから、200年経ってあたしがやってきたということだね。

この歴史って、絶対にどこかのお偉いさんが見るべきものだと思う。

ほんと、勘弁して。

神様なんだか精霊王なんだかわからないけれど、あたしを都合のいい駒にしないでよね。権力争いなぞに巻き込まれ、家族や村の人に災いなど持ち込んで放置なんかしたら、呪ってやるんだから。


「じゃあ、種と卵一緒にテーレがメインで見てもらってもいい?正直荷が重いよ」

「マリーが察しが良くて、助かります。何重にも結界張ってガードしておくから、その代わり一日一回は魔力お願いします」


テーレが丁寧語になってるし、厄介ごとばかり引き受けてるよ。

あたし、絶対にいい人だよね。

前世それでいらない苦労しょったというのに、なんでこの世界でもしょっているかな。

というか、規模がでかくなってるじゃない!

やっぱりチートは要らぬものまで引き寄せる、物語の中だけじゃないのね。

―――なんてこった。

それでも仕方ないと思うあたしが一番、仕方ない奴。


こうなったら世界樹も巫女大精霊も、さっさと精霊王も見つけて巻き込まれてもらおう。

あたしの今日の名言『すべてgive&takeで』


ただでやってもらえるなんて、誰も思ってないよね?ね?

テーレが目線を逸らしたが、あたしはにっこりと笑っておいた。

この年で黄昏るのが似合うってなんだろうね。

7歳のあたしに覚悟を決めさせるのが悪いのだ。

うん。


ねえ、あたしにこのスキルを与えた人よ。もはやスキル名を改名したほうがいいのではない?

謎獣もいるけど、中身がわかっている卵をガチャとはいわないよね?

「スキル ガチャ卵」


スキル名を告げたあたしに、何で今?!という唖然とした顔の母さんに、

ホントに、何でいまなんだろうね。という意味を込めて、首を傾げテーレを指さし、てへって笑っておいた。

次回「34.シリアスは何処イッタ。どうしてくれよう、この卵・・・。」


読んで頂き、ありがとうございました。

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