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31.閑話 俺の妹マリー ーエディ視点ー

俺の妹マリーは少々変わっている。いや、少々ではない、だいぶ変わっている。その変さが際立ってきたのは川に落ちて溺れかけた5歳になったころだ。

皆がいる時に落ちたのですぐに助けられて何の問題もなかったはずなのに、起き上がった瞬間よくわからない言葉を発した。みんなで川に落ちた時に頭を打ったのではないかと心配されたほどだ。

『髪の毛が黒じゃない』

『なんで、子供』

『ここ、どこ』


濡れたままだと風邪を引くと心配した大人が熱風で服を乾かせた時には、大袈裟に騒いだし。

『おおおおおお、転生、魔女っ娘になれる?』

『魔法だよ、魔法、ファンタジー!』

何語かもわからない言葉で騒ぐマリーは、どうしたというのか。何かが乗り移ったのか?大丈夫なのだろうか。


その後もちょっとした変な行動は続く。

突然川の近くに落ちていた実を石でガシガシと叩いたと思ったら、川の水を頭からかぶりその砕いたよくわからない実を頭に乗せて洗い出すし。

突然部屋の掃除をしだして、疲れて寝込む。泥だらけで汚いと言って俺に水を掛けるなど、本当にどうしたのだと肩をゆすって聞きたかった。

だけどその変な行動がすべて神のお導きなのだと、家にやってきた神父がいった。


「神のお導き、ですか?」

父さんも母さんも困った顔をして神父さんに聞き直すが、神父さんもよくわからないのだという。

「温かく村全体で見守って下さい」


それだけ言うと、神父さんは帰っていった。

そのことがよくわかったのが、マリーがスキル授与後の変な卵を生みだしてからだ。

その卵が孵ってからというもの、この村は一気に変化した。


果物なんて秋の実りの一番の贅沢だったのに、それがいつでも食べられるようになったし、それ以上に甘い物が毎日食べられるようになった。

ご飯も量を気にせず食べられるし、味も美味しい。

毎日が楽しくて仕方なかった。今日は何をしでかしてくれるのかと、わくわくしたぐらいだ。


村の人も突然やってきた精霊たちに戸惑いながらも、村が変化していく様子に笑顔になっていく。

「精霊様は、突飛なことをなさるなぁ」

「酒が毎日飲めるようになるとはなぁ」

「飯も旨いし、たらふく食べられるようになるとは、ありがたいことじゃ」

「今日は誰が狩りにくのじゃ」


一年に一度しかない宴会も、もう何度も開いてみんなで肉を食べ、果物を食べ、野菜を食べる。

貧弱だった体つきもよくなって、大きくなった気がする。

「神父様が言っていた、神のお導きとはこういうことじゃったか」

誰かが言った一言で、みんなが納得した。


きっと川に落ちて溺れかけた時に精霊の祝福を受け、精霊と対話していたのではないかと今は言われている。だからこその謎スキル「ガチャ卵」なるものだろうと。

ガチャと言う言葉をマリーが知っていたのは、そう言うことだったのかと納得した。


それからも毎日、少しずつ変化していった。

変化して村がよくなっているのは分かるし、毎日楽しいのは嬉しい。だけど、その分マリーが気を失う。

身体が小さいために魔力を受け止める器も小さいので、気を失うことで体を護っているのだと父さんは言う。

マリー本人は気を失ったことに対して、やっちゃった?ぐらいいしか思っていないみたいだけど、冷たくなる小さな体を見ているだけしか出来ないのは、兄として悔しかった。

だから精霊たちにお願いするしかなかった。


「どうやったらマリーが倒れない?」

倒れないようにしてくれよ、という要求に、精霊達はちょっと申し訳なさそうにしながら答えた。

「エディは土と相性がいいみたいだね。気に入った子がいれば仲良くなって、契約すればいいよ」

「えっ。俺でも契約できるの?」

「真摯に望めば、誰でも出来るよ。この村はサクレの聖の気に満ち溢れているから」

テーレの慈愛に満ちた笑顔にちょっと赤くなりながらも、その言葉にこぶしを握った。

マリーだけに負担を掛けない。


テーレの言葉を父さんと母さんに伝えると、すぐに実行しようと三人で頷いた。

それからすぐに遠巻きに見ていた精霊たちに話しかけるようにした。言葉は通じなかったけれど、近寄って来て頭に乗ったり、足にすり寄ってきたりする姿はとても可愛かった。

なるほど、これがマリーの言う萌えか。


小さいながらももふもふとした毛並みと温かさは、あんな凄いことをやってのける精霊には見えない。

ただ、可愛い。

凄い力を持った精霊たちに構えていたのは自分たちで、こんなにも寄り添おうとしていたくれていたことが嬉しかった。

「ねえ、俺と契約してくれる?マリーの手伝いがしたいんだ」

少し首を傾げてきゅっと鳴いた後、すぐに頷いてくれた。

それが凄く嬉しくて土の精を掌に乗せて目線を合わせるとすぐに「ミミ」と名付けた。


後で話せるようになったミミからいろんな話を聞いた。

精霊と人間の関係や、何故ここに精霊たちが集まるのかとか、空の精が人間と敵対していて大変だとか。

特に空の精を納得させなければ、精霊王が復活することはないらしく、どう説得するのか難航しているらしい。

難しい言葉も沢山あって全部を理解できていないけれど、わかっているのは兄としてマリーを守るということと、一緒に空の精を探すことだ。

ミミもそれでいいというし、まずは強くならないとな。


そんな決意をしたにもかかわらず、またマリーが気を失なった。テーレは大丈夫だと言うけれど、こんな場所で何があるというのか。

メッセージを受けたのはマリーなので、テーレではよくわからないということだったので、一先ずマリーが目を覚ましてから、これからどうするのかを決めようということになった。

マリー、俺も頑張るからな。早く目を覚ませよ。


次回 32.大精霊の願い 「種を探して・・・それから」


読んでいただきありがとうございました。

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