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28.早々に降参しました。

「マリー?」

「なあに?母さん」

「この旅、賛成してあげるから隠している物全て出しましょうね」

その言葉に反応した、母さんと契約している水の精のルコが、ペコペコしている。

ああ、そういうこと。


精霊は聞かれたことに関して嘘が吐けなく、否定も肯定もしないぐらいしか対抗手段を持たない。ましてや契約精霊ともなれば、感情はお互い駄々洩れだ。お酒が関わらなければ純粋無垢という言葉がピッタリな水の精に、あたし達のヒエラルキーのトップに君臨する母さんに、聞かれて黙っておくなんて出来ないよね。

―――初めから交渉にすらならなかったが、・・・結果OKになる確信があるからいいか。


「母さんには、これを」

渡したものは前回渡した、守りのネックレスをより強力にするものだ。水属性が強い母さんの守りを補うために、リュビに火耐性と火魔法を付与してもらった。

「これは、火?」

「うん。弓に埋め込んでもいいし、ミサンガに組み込んでもいいって」

「それだけ?」

「父さんとエディにもちゃんとあるよ」


母さんの表情を見ているとちょっと期待外れの顔をしている。

7歳の娘にどこまで期待してるの、母さん。普通はここまでやらないから。

「まあ、いいわ」


これ以上の追及をされなかったことに、心底ホッとしている。精霊たちに森の奥へ行くメリットと、これからの村のことを相談した時に異世界に来た―――――ぁ!と叫びたくなるものがあった。けれどそれを口にしていいのかわからない。正直この世界の水準が魔改造したこの村なので、加減が分からなくなっているのだ。

まあ半分以上は、あたしの欲望とそれを叶えられるスペックを持った精霊達のせいだけどね。

そんなあたしでも言うのを憚れる次元のモノ。


霊薬ともエリクサー、賢者の石ともいわれていた物が、空の精が縄張りとしている森深くに封印されているらしい。以前は空の精とドライアドたちで守っていたが、森が焼かれドライアドが居なくなると精霊王不在では守り切るのが難しくなり、それらを転移させながら守っているという。


それを何に使うのだと言われたら、今すぐ使い道何てあるわけがないけれど、いざというときに持っておきたい。だけど人間を憎んでいる空の精からすると、身分不相応だと言われそう。それだけでなく欲しいと言っただけで、略奪者だと罵られそうだ。


とりあえずは鎖国状態の村が他の村や町と取引するようになるまで、もう少し時間がかかると思うから大丈夫かな?


「あ、言い忘れてた。その森に生えている花が、肌に張りを与えてくれる成分になるみたいだよ」

「それを先に言いなさい。行くわよ!」


お風呂で肌も髪も艶やかになって母さんも、村の人も男女問わず若返ったと思うけれど、やっぱり美容っていつの時代でも求めるものに限界はないのね。今のままでも十分だと思ってしまうあたしが、残念なのかもしれないけど。以前のあたしより気を付けてる母さんを尊敬するよ。


そう今回の旅で空の精と一回で仲良くなれるとは思っていないから、次の目的を珍しい物の採取とした。

何故魔改造して植物を生み出せるのに、わざわざ採取なのかって?

これからの先の村のことを考えたら、元々この世界に根付いているもので商品を作りたいと思っている。この村もずっとこのままでいいわけがない。それは大人たちが集まって話し合いがされているけれど、いつからという結論が出ていないだけで決定事項のようなものだ。


サクレのおかげで浄化された場所が増え、魔獣が出なくなっているので移動が安全になっているし、食べるものにも困ることがない。それどころか明らかにパワーアップした村の人たちは、日々で大変だった暮らしでなく少しずつ暇を持て余せてる。

お酒だけでは娯楽が足りていないのだ。だから外に目を向け始めた若い者が増えてきているのは、当然の流れといえる。


だって、他を知りたくなるのは仕方ないと思う。まったりとスローライフを目指しているあたしでさえも、しらない世界を他を見てみたくなっているのだから。

まあ難しいことは大人に任せて、まずは初冒険となる森の奥へ行ってみよう!


行くメンバーは家族4名とフェンリルのシャンス・火の精リュビ・水の精グンミ・ドライアドのテーレだ。居残り組は地の精ソルとよく寝る謎獣の黒助。ソルは行く気満々だったけれど最近ソルばかり構っているという皆からの申告があったため、誰がお留守番を・・・と言えば、すぐに口々に皆ソルの名を上げたため、決定した。

まあ、確かに錬金ばかりしてたからソルと一番いたかも。車も二人で魔改造してたのは事実だし、異議はなかった。

特に大きくなったシャンスとは一緒にベッドに寝れてないし、収納以外に呼んでいなかったと反省をして、夜はお風呂に一緒に入って洗ってあげることになった。

「シャンス、気持ちいい?」

「マリーと一緒が嬉しい」

そんな可愛いことを言うシャンスには、こうだ!

シャンスの上に登って首周りを洗ったり、腹ばいになりさらけ出したお腹をもふりながら全身泡だらけできゃっきゃと笑う。最後はシャンスの上から滑り台のように滑って遊んだ。

大人がやったら痛い子だけど、子供だと楽しそうって見守ってもらえるだけなのがいいよね。

今度滑り台とかブランコとか作って、童心に返ってみんなと遊んでみるものいいな。


そんなことを考えながら、今日は洗ってさらにふわふわになったシャンスを枕に眠る。

やっぱりもふもふは正義だ!心地よい肌さわりと温かさで、幸せな気持ちでゆっくりと眠りついた。


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